第14話 オレの夏
この物語は、足立未来高等学校に通う、栗原、五反野、牛田、垳、関屋の五人が繰り広げる、ほのぼの日常系・学園モノ小説である。(栗原シホ)
この学校に入って初めての夏服だ。
オレは真新しい夏服を着て登校した。今月から夏服で統一されるため、夏服を着てきた。(先月は任意で夏か冬服だった)
オレは早速教室へ入るなり、栗原たちのほうへよっていった。
「おはよう栗原たち」
「あっ、おはよう五反野さん」
4人とも夏服だった。(まぁ当然だが)
「いやぁ、夏服も良いなぁ」
どこかで聞き覚えのある声がした。
「これはこれはいつも仲良しの五人組じゃないの」
「またちょっかい出しにきたのか、谷中」
「とんだ誤解はやめてくれよ、五反野さん。…夏服だとやっぱり関屋さんは胸が強調されるねぇ。五反野さんは夏服でもやっぱり貧乳…」
「またそのネタか!やめろって!」
オレはもうキレだした。
谷中は慌てたようすで話し出した。
「落ち着け、餅つけ!とにかくボクも案外君たちと気が合うと思うから仲間に入れてよ」
「やだ。なぜ女子の中に男子が割り込む?」
オレが反対した。
「そうだそうだ」
他の4人も同意した。すると谷中は…
「へぇ、もしかして君たち5人は友達同士じゃなくて…イケナイ恋人同士だったりして」
「何言ってんのバカ!」
―ベシ!―
オレは思いっきりビンタを谷中にくらわした。
「いって~~。ビンタすることじゃあないだろう?」
谷中が言うが…
「ウチらはレズの集団じゃありません」
と垳が言った。
でも約一名(牛田)は該当するけどね。
「うらやましい、君たちは仲が良すぎるように見えるから、余計なイマジネーションしちゃうんだ」
と谷中が言うと、関屋が…
「アンタのはイマジネーションじゃなくて妄想よ!」
と返した。
「栗原さん、こういう時に頼りになるのは君しかいないんだよ。何とか言ってくれ!」
と谷中がお願いするが…
「ダメ」
の一言で片づけた栗原。
「そんなぁ、あんまりだ!」
と谷中はオレらから離れていった。
「しかし夏に入ったなぁ」
オレがつぶやくと、関屋もこうつぶやいた。
「だんだんと暑くなるねぇ」
「一番嫌いな季節だ」
と栗原もつぶやいた。
まぁオレはある程度まで大丈夫なんだが、やっぱりこの時期はなるべく涼みたい。
そろそろ8時40分だからオレたちは元の席に戻る。
少ししてから佐野先生が入ってきた。
「おはよう!」
昼休み、お昼を済ませたオレたちは早速窓の外を見た。
「梅雨の雨や風にも負けず、生き生きとしているね。あの木」
栗原が言った。
「高校のシンボルですからね」
と垳。
「ねえねえ、こういう動画見つけたんだけど見る?」
と関屋さん。
「やっぱり君たちは携帯依存症かね?さっきから携帯ばかり見てる」
と後ろから谷中が声をかけた。
「うぉ!ビックリしたわ!」
オレが怒鳴る。
「しょうこりもなくまた来たんですか?」
牛田が言うと、谷中がこう言った。
「ボクは携帯じゃなくてスマホだから…」
「ああそう、オレたちが使っているのは時代遅れですか」
オレはマジギレした。
「いやぁ、携帯も便利だけど今の時代はスマートフォンでしょ?」
谷中が言い逃れをしようとするが、オレは言った。
「いつかお前の持っているスマホよりも、高機能なスマホを買うよ。買われたら上を買う、倍返しだ!」
「じぇじぇじぇ!」
関屋がそれに合わせて驚いた。
「いつここを去るか?今でしょ!」
垳がさらに詰め寄り…
「オ・ヒ・キ・ト・リ」
と栗原がまがまがしい笑顔で言った。
恐れたのか、谷中はすぐにその場を去った。
谷中が去った後、牛田がこう言った。
「あたいったら最強ね」
「いやいや、牛田は何もしてないから」
とオレが言った。
「オ・モ・テ・ナ・シ。オモテナシ」
栗原が突然言った。
「どうした栗原?」
オレが聞くと栗原は答えた。
「言ってみたかっただけ」
帰りのホームルームも終わり、オレたちは帰る準備をしていたが…
「よう、五人とも」
ズボンのすそをヒザぐらいまで上げた谷中が立っていた。
「ボクはこんなカッコウで校内を歩くぜ?…ワイルドだろぉ」
オレたちは完全スルーして教室を後にした。
「このネタ、2年も前のネタです…ざんねーん!ジャガジャン♪」
谷中がこの独り言を言っているのを、オレたちはしっかり聞いていた。
「アホらしい」
とオレがつぶやいた。
オレの家は東武伊勢崎線(まぁ今は『東武スカイツリーライン』という愛称がついているが)五反野駅から出てすぐのところにある。
各駅停車しか止まらないがオレは気にしてない。
なぜなら最寄り駅の五反野駅と学校の最寄り駅の北千住駅の間は小菅駅しか無いから。
オレは早速今日授業でやった内容の復習をした。
オレこう見えて五人の中で一番成績悪いから。だから人一倍この分野で頑張らなきゃと思っているんだ。
そんで分からない問題は五人の中で一番成績優秀な垳に頼るんだ。
「もしもし垳。『国語テキスト』の漢字3の〇5の7番の漢字のヒントもらえるかな?」
「えーと…青森県が生産量日本一の果物だよ」
「もしかしてリンゴか?」
「当たり。林檎はリンゴと読みます」
「ありがとう垳」
テキストの後ろに答えが載っているけれど、こうしたほうが覚えやすいかなと思う。
オレはこうやって垳に色々頼ってきた。
…今も昔も…
夜、湯船に浸かっていてふと思ったことがあった。
オレは5人の中でも行動力があるほうだし、しっかりしているつもりだ。
なのにオレよりもドジで失敗の多い栗原は垳と同じくらい成績が良い。昔から栗原は何故かオレよりも成績が良かった。
授業はオレのほうが真面目に聞いているのに…
…頭が良い垳。
…レズだけど友達思いの牛田。
…大柄だけどキレのある腰ふりダンスをする関屋。
…ドジだけど成績が良い栗原。
…オレは運動が出来るだけ。
…もしかしてオレって5人の中で一番ダメなのか?
翌日…北千住駅で偶然栗原と一緒になった。
「おはよう五反野さん」
「おはよう」
オレは早速栗原に質問した。
「栗原、オレのことどう思っている?」
「リーダーっぽくって、頼りになる…かな?」
「本当か?栗原」
「私は少なくとも、五反野さんを頼りにしているよ。私がどこかみんなで遊びに行くとか言い出した時はいつも五反野さんの表情を確認しているもん」
「オレが基準なのか?」
「大切な友達だもん」
「ありがとう栗原」
オレは思わず栗原の手と自分の手をつないだ。
「わぁ、恥ずかしいよ」
栗原がそう言った。オレはあることに気付く。
「オイオイ、歯に海苔が付いているぞ」
「え?あぁ朝ごはんのりたまだったからね。私ってホントドジ」
「いやいやそんなことないって」
気付けばいつの間にか学校の目の前まで来ていた。また今日もオレの学校生活が始まるのであった。