第13話 足立クリーンマンとアタシ
この物語は、足立未来高等学校に通う、栗原、五反野、牛田、垳、関屋の五人が繰り広げる、ほのぼの日常系・学園モノ小説である。(栗原シホ)
土曜の朝、アタシは家を出た。
なぜかといえば、話は先月までさかのぼる。
(栗原さん目線で)先月の回想。〈第8話〉
(パート1)
急行で西新井から北千住まで行って、中央改札を出たところに牛田さんが待っていた。
「どうしたの牛田さん?」
と私が聞くと、牛田さんはこう答えた。
「ヒーローに会ったのよ」
続けて牛田さんはこう言った。
「実は先月の第四土曜日に偶然、千住の街中でヒーローに会ったのよ。毎月第四土曜日に活動するということを先月本人が言っていたから…」
「だから今日なのか」
と私。
「そう、あれから1ヶ月。栗原さんにもぜひ会って欲しいから呼んだの」
牛田さんはそう言って、早速駅を出た。
(パート2)
「おぼえていますか?アタイ、1ヶ月前にあなたに一度会ったことがあるんですが…」
するとヒーローはこう言った。
「おぼえているぜ、あとキミにまだオレの名前を名乗っていなかったな」
私も牛田さんに追いついた。
「オレは足立区の美化と環境を守るため、はるばるやって来た愛の戦士。『足立クリーンマン』!」
「おぉ!ご当地ヒーローね」
私が言うと足立クリーンマンはこう言った。
「オレは郷土心が強いんだ。だからオレは足立区の美化に貢献しているんだ」
(パート3)
私は早速五反野さんと垳さんと関屋さんに電話した。
五反野さんと垳さんは「興味ない」と言っていた。
関屋さんは「どうして誘わなかったの?」と意外な返事が返ってきた。
というわけで先月、栗原さんと牛田さんが足立クリーンマンに会っているので今回はアタシもまぜて三人で会いに行くんだ。
北千住駅で二人と合流した。
「関屋さん、こっちこっち!」
と栗原さんと牛田さんが呼んでいた。
「やっと足立クリーンマンに会えるんだね」
アタシが言うと、牛田さんが言った。
「足立クリーンマンがアタイのケータイに電話してどこに行けば良いか伝えてくれるんだよ」
「それは凄い」
とアタシ。
「足立区の美化に貢献しているとか言っていたよ」
と栗原さん。
「だからクリーンマンなのか」
とアタシ。
ピルルル…
牛田さんのケータイが鳴った。
「あ、たぶんクリーンマンからだ。…もしもし」
「もしもし、牛田さん。オレはこれから牛田駅に向かうけれど、行けそうか?」
「行けるよ」
「じゃあ3人とも駅前のマクドナルドに来てくれ」
「はい」
電話が切れた。
というわけで、アタシたちは牛田駅まで行くことになった。
電車の中で…
「さっきの声はカッコ良さそうな男の声だね」
とアタシ。
「イケボっていうんだよ」
と牛田さん。
「もう着くよ」
と栗原さん。
駅を出てすぐそこのマクドナルドへ向かうと、そこに足立クリーンマンがいた。
「おお来たか」
アタシは早速自己紹介した。
「はじめまして、関屋です」
すると足立クリーンマンは言った。
「オレは足立クリーンマン。キミはオレのファン3号だな」
突然そう言われたのでアタシは驚いた。
「おっと、説明していなかったな。牛田さんが1号、栗原さんが2号なんだ」
足立クリーンマンが言った。
「なるほど、じゃあアタシは3号だね」
とアタシは納得した。
「そういえばキミたちにはまだオレの活動の詳細を言っていなかったな」
と足立クリーンマン。
「そう言えば」
と栗原さんと牛田さん。
「オレは基本的にゴミ拾いが主な活動なんだ。リュックには換えのゴミ袋が入っている。いわゆるボランティアだな」
と足立クリーンマン。
「すごーい!」
とアタシ。
「今日はオレの仕事を見てもらうぜ」
と足立クリーンマン。
空き缶や紙くずなどを次々とトングみたいな物で拾い、ビニール袋に入れていく。
以外にも仕事は速いものだ。とアタシは思った。
30分で北千住駅付近まで来た。
「キミたちもよく着いてきたな。じゃあ休憩にするか」
というわけで路地裏にあった公園のベンチに座った。
「いやぁ、やっぱ良いですな。ボランティア」
とアタシ。
「こういう人はけっこう良いねえ」
と牛田さん。
「スキになりそう」
と栗原さん。
「支持してくれる人が増えていくだけでオレは幸せだよ」
と足立クリーンマン。
そのあとは荒川河川敷までゴミ拾いをして行った。
「そろそろオレは行かなきゃいけないからココでお別れな」
と足立クリーンマン。
「もうお別れなの」
とアタシが言うと。
「オレにもいろいろあるんだよ。じゃあまた来月な!」
と足立クリーンマンはゴミ袋をひとつにまとめて縛って、去って行った。
「やっぱ、カッコイイよね!」
と栗原さんと牛田さんが言っていた。
北千住駅に戻ったアタシたちはまず栗原さんと別れて、次に牛田駅で牛田さんと別れた。
その日の夜。アタシは風呂の中で考え事をしていた。
なんか足立クリーンマンって、アタシたちに近いような…
ふと気づくといつの間にか肩まで浸かっていた。
「あは、ちょっと深く考えすぎじゃないかな」
自分に言い聞かせながら風呂を出た。
突然ケータイが鳴った。牛田さんからだった。
「もしもし」
「もしもし関屋さん、今何していた?」
「風呂から上がったとこ」
「へー、着替えた?」
「まだすっぽんぽん」
「へー」
「何か用事?」
「あぁ。関屋さんは今日のこと、来てない二人に話す?」
「うん」
「そうか、じゃあおやすみ」
「おやすみ」
と電話を切った。
「ハクション!」
やだ…体冷えてきちゃった。
翌々日の月曜日。
「垳さん、足立クリーンマンは良い人よ。ぜひ来月一緒に行こうよ」
とアタシ。
「いやいや、興味ないから」
と垳さん。
一方…
「毎月第四土曜日に現れるから、ぜひ来月一緒に行こうよ」
と牛田さん。
「来月の第四土曜なら家の事情で忙しいんだ」
と五反野さん。
「ダメか…」
と栗原さん。
「これ以上ファンは増えないのか」
と牛田さんは残念そうに言った。
「まぁまぁ、そのうち二人にも良さがわかるよ」
とアタシ。
「そうだね、五反野さんと垳さんだもんね」
と栗原さんは納得した。
「それに明日から7月だ」
とアタシ。
「本当だ!」
と牛田さんがカレンダーを確認した。
まぁ、あっという間に6月も終わるのであった。