ご都合主義☆万歳
布団をめくった先にいたのは、イケメンもイケメン。
イケメンの中のイケメンって感じの男だった。
男の俺から見ても、「うっほ、かっけー!」と思ってしまうくらいに整っている顔立ちの青年だ。
あまりにも整いすぎてて、羨む気持ちも嫉妬も生まれなかった。うん、かっけーな。程度で終わり
王子様系の甘い顔を持つイケメンは、布団から顔を出した俺を見るとふんわりと笑った。
おおぅ。イケメンよ、フェロモンは女の子にだけ撒いてくれたまえー
ちょっとドキッとしてしまったじゃないか、いっ・・・いや、これは断じて違うんだ!!
硬直する俺に青年は「おはよう、ルナちゃん」とイケメンボイスで囁くと王子様スマイルを披露して、「朝だから、起きて来てね??」と言って部屋から出て行った。
数分、存分に硬直した俺は
こんの、ご都合主義め!!!
と絶叫した。
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数回の深呼吸を繰り返した俺は、鏡の前に立った。
現実を把握しようと、大混乱をきたす頭を理性で押さえこめたられた結果出来た所業だ。
姿見の前に立った俺は、俯けていた顔を恐る恐る上げて鏡に映り込んだ姿に「やっぱりか!」と額に手を当てる。
予想通りというか、なんというか。。
姿見に映り込んでいたのは、小柄な少女だった。
黒髪ロング以下略の美少女。もろタイプ・・・・じゃなくて。
その姿は俺が設定したゲームの主人公そのものだったのだ。
透き通るような白い肌にとぅるんとぅるんの艶やかな髪。
くらっ・・・と意識が一瞬遠のきかけたが、気絶はすまい!と唇を噛む。根性のなせる技だ。
ピリッとした痛みと口内に広がる鉄の味。夢オチ・・・・の可能性を期待したかったんだがなぁ・・・と途方に暮れる。
ピンク色のパジャマを着た可愛らしい少女が泣きそうな表情を浮かべているのを鏡越しに見ながら、俺は深く深ぁ~~~~~~く溜息をつく。
もし目の前にこんな顔をしたモロタイプの女の子がいたら俺は喜々として慰めるんだが、対象の中身が自分では気落ちするだけだ。見た目はタイプでも中身が自分とか、最悪じゃないか。
・・・・しょげてても何も解決しない。頑張れ、俺。
折れそうになる心を叱咤して、俺はクローゼットを開けた。
現状を把握するためには、この部屋にいるだけでは何も分からないままだ。着替えて、情報を集めなければ。。。
理路整然と仕舞われた服達を眺める。
ワンピース・・・・は却下。スカートもムリ。ということで、無難にジーパンを選出。
着替える際に身体を極力見ない様に努力して、手早く着替え恐る恐る部屋のドアを開ける。
扉の先は長い廊下が横に伸びていて、俺のドアの両側には一つずつドアがある。
ドアにはプレートが掛けられていて、右のドアのプレートには「MIZUKI」、左ドアのプレートには「HARUTO」と書かれている。
うーん・・・・。何か激しく嫌な予感がするんだがなぁ・・・・。
とりあえず、ドアをスルーして俺は廊下の先にある階段をトントンと下りることにした。
少女の設定が、そのままなら身長は155センチしかないことになる。俺が設定した事なので諦めもつく・・・が、違和感が半端ない。
ちっちぇーなぁ、155センチってのは。
階段を下りていくと、ドアが目の前に現れた。すりガラスのはめ込まれたお洒落なドアだ。
そんなお洒落ドアから入ってこいプレッシャーがひしひしと伝わってくる。うーん、限りなく遠慮したいんだが。。。。
諦観の極みに入りかけていた俺は、溜息をついて無敵の呪文「どうにでもな~れ」を心の中で唱えることにした。頑張れ、俺。負けるな、俺。
乾いた唇を舐めて、ドアノブを握って心を決めて決死の思いで俺はドアを開ける。
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中はお洒落リビングって感じだ。ソファーにテレビ。ダイニングキッチンも見えている。
かなりお洒落な部屋って雰囲気・・・・なんだが、俺の目は部屋の様子なんぞ全くもって受け付けていなかった。
部屋の中に居た人間に視線が釘づけになっていたからだ。
さっき部屋に入ってきて俺から「夢オチ」という希望を奪い去ったキッカケを生んだ王子様系イケメン+イケメン×3が部屋にいたんだ。
世界中を巡っても、こんなイケメン(しかも複数)普通は見つからねーよ!!
心の叫びだ。勿論、顔には微笑みを浮かべたままで。俺って器用ww
あまりのイケメン具合に違う意味で眩暈がする。ご都合主義、乾杯
王子様系イケメンは俺が部屋に入ってくるのを見ると「おはよう、ルナ!」と声をかけてくる。
キランキランな金髪に蒼目。王道中の王道って感じだ。コイツのあだ名は王子だ。決定
「朝は起こしにいっちゃってごめんね??でも、約一名ばかり用事があって出かけなきゃいけないヤツが居てね。全員同時に自己紹介をしたかったからつい」
イケメンボイス(略してI.K.V)で弁解する王子の苦笑する顔に毒気を抜かれて、俺は「いえ」と微笑んだ。
本心としては
おぉぉい!!「つい」で女の子の部屋に入ってきてんじゃねーよ!!中身は男だけどな!!
と叫びたい気分だったが。そんなことはおくびにも出さない。
微笑むとかいうあまりにも自分の行動がキモ過ぎて肌がチキンになっているが、それも気にしない。
「さて、自己紹介といこうか。僕は海夏 ハルト。親の伝手でこの流星ハウスの管理人をやらせてもらってる。部屋はルナの右隣。よろしくね?」
王子、名前がハルト・・・って事はハーフ??王道っすね~
妙なとこで感心する俺。
「俺は、枝垂 水樹。お前の左隣の部屋だ」
よろしく。と手を出してくるのは、これまたイケメン。
黒髪黒目の日本人・・・だけど顔立ちは日本離れしてる。こんな日本人、俺は見た事が無いね。
イメージ的にはお兄ちゃん系って感じ。妹のおかげで妙に詳しい自分に脱帽だ。
「はいはいっ、次は俺ね~。俺は仙道 剣。ルナちゃん、よろしく~」
赤茶に染色された少し長めの髪が似合ってる耳にピアスしまくってるイケメンがソファーに座ったまま身を乗り出すようにして自己紹介してきた。
コイツは尻軽。問答無用であだ名は尻軽決定!!
青年に俺も「よろしくお願いします」と会釈を返すが内心ではあだ名を早速決めていた。
絶対女とっかえひっかえしてるタイプだ。
勿論、嫌いなタイプ。モテる男はこの世から滅べばいい!!!
「皆月 祐介!よろしく!!」
これは弟系。ちんまいし。
身長は俺より少し高めなくらいしかなくて、クリクリの目が印象的だ。
昔飼っていたチワワに似通っている部分があって俺は、ほんわりと胸の中が暖かくなった。
庇護欲を掻きたてる容姿の少年(青年???)のあだ名をチワワに決定し、俺も自己紹介をするべく
「流星 ルナです。よろしくお願いします」
とペコリと頭を下げた。
した方がいいかなーという俺の配慮だ。勿論女の子っぽく、手は前の方で重ねてある。
きしょい!!とか思ったら負けなので、もう開き直る事にした。
サラリと落ちる長い髪を耳にかけて、顔を上げ王子、お兄ちゃん、尻軽、チワワを順に見て心の中で小さく溜息をつく。
ゲームのパッケージと同じ顔達だ。もうね、分かっちゃったよ、オレ
あれだよね??小説とかにあるようなトリップだよね??
異世界でも過去でも未来でもなく、俺の場合は乙女ゲームにトリップしちゃったんだよね??
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・ガッデム!!!!!