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竜堂奈々~退魔幽遠記~  作者: 黒企画
第一章 退魔の少女
6/6

05 初めての喫茶店と携帯

本作品はフィクションです。

登場する人物・団体・国家・企業・名称・宗教などは全て架空の設定であり、現実との関係はございません。



 「見てまわる、って言ったけど奈々は何かこれだけは今日見ておきたい、知っておきたいってモノやところはないの?」


 町へ向かうバスの中でセフィは思いついたように質問した。

 その質問を受けて奈々はしばらく考え込んでいたが、

 「私、携帯が欲しい」

 と簡潔、真剣に答える。

 奈々の真剣な答えを聞いて、「今時、携帯も持っていないのか」と、セフィとサンディは笑いあった。


 携帯と一言でいっても旧時代の電話機能を中心とした携帯端末ではなく、現在は持ち運べるパソコンといえるものであった。むしろ電話機能はおまけであると言えるほどコミュニケーションツールが発達し、最新最高のものともなれば思考するだけでメール文章を作ったり、ネットから必要な情報を取得してくる、地図をナビゲーションしてくれるなどの便利機能が満載している。加えて、世界ではもうこれを持つ事が常識化していることもあって、身分証明書に利用できたり、選挙や役所関連の申請なども行えるようになっており、基本的に小学部を終えた人間は誰でも持っているのが当たり前という認識とされている。無論、奈々のような例外や、スラム街の住人などは持っていないということもあるのだが。


 奈々が携帯が欲しいという理由については、家にそういったネットを利用するものが全くない、ということもある。正確には存在はするのだが、奈々が利用できる範疇にはないのである。

 竜堂家には一台だけ、当主専用の端末というものが存在する。その端末に連動する専用携帯も存在する。それらは退魔以外にも竜堂組に関連する情報や、財界や政界との連絡や報告、現在当主である翼の個人的交友による連絡や雑談内容なども含まれており、退魔だけの情報は奈々が共有する権利を得たが、かといって当主としての権限は譲渡されていないため、結局は家で情報端末を使えないことになる。


 特に退魔に関して、最近は大きな仕事や難易度が高い仕事がないということから、事前情報だけで事が足りてはいるが、場合によっては随時情報が更新されるケースや、要人に憑依された場合の関係部署との連絡などを考えると、現地でやりとりが出来る携帯端末を持つことは必須条件ともいえる。


 これだけでも携帯を持たなければならない理由としては充分ではあるのだが、それに加えて奈々が個人的に「今時の女子高生たるもの、携帯を使いこなしてこそ真の女子高生と言えるのでは?」と考えていることもある。また、他人の携帯についているストラップなどを見て、なんとなくいいな、と感じてしまっていることもある。


 要するに奈々は、とりあえず周りのふつーの女の子と形だけでも同じ格好をしてみたいのである。


 

 「携帯といってもどんなのを買いますか?開発している会社もいくつかあって、機種や機能が様々ありますよ?」

 奈々が携帯を初めて買うということから、恐らくはそういった知識もないのだろう、と踏んだサンディは基本的なことを質問する。

 「そうだね、私は使い道で決めるのが一番だとは思うけれど、デザインとかも色々あるからね~。」

 サンディの質問に付け加える形でセフィが後に続く。


 「そうなのね…。う~ん…とりあえず丈夫なものであればいいといえばいいんだけども…」

 奈々の要求は「退魔に耐えうる強度」ではあるが、多少ぶつける、多少落とす程度のことでは済まない話を想定しての強度であるため、一般品では対応不可能である。その為、一般品の中でも強度が高い、とされるものでまずは様子をみたいと考えていた。

 もし、それでも簡単に壊れてしまうようであれば、父の伝手を使わざるを得ない。そしてその場合、デザインなどはとても無骨なものとなり、とても女子高生が持つものとしては相応しくない携帯となることはわかりきっていた。


 「じゃ、まずはカタログを奈々に見せつつ、簡単に説明する必要があるねぇ。」

 「それなら、『アクティオ』でお茶や軽食を取りながらでいかがでしょうか?」

 「おっ、結構通なお店を知ってるね、じゃそれでいこうか」


 セフィとサンディがこの後の段取りをサクサクと決めていく。

 奈々は全く会話についていけていないが、どうあっても初めてのことで事前に知識を集めていても経験の前では対応出来ないことは良く判っていたので、むしろこの二人が自分のために最良の予定を考えてくれることに感謝した。



 ほどなくしてバスは、フランベルジュ特区の東側にあるセレーネと呼ばれる町についた。

 セレーネはフランベルジュ特区の中では最大のショッピング街となっている。特区内では珍しく、高級品だけではなく、一般品も取り扱う店が多く、ピンからキリまでなんでも買える街といっても過言ではない。

 そうした理由からか、老若男女、富豪一般問わず多くの人が訪れるこのセレーネではあるが、若者のファッションや情報の流行の最先端を行く街でもあり、10代から20代までの若者は挙ってここに遊びに来る。

 そんな若者に混じって、奈々たちもセレーネに到着したのである。



 「さて、まずは『アクティオ』に向かいますかね」

 「奈々さん、わからないことがあったらいつでも聞いてくださいね」

 「えぇ、ありがとうサンディさん」


 サンディは簡単にセフィから奈々の特殊な家庭事情を聞いていた。無論、奈々には許可を取り、退魔の部分などは隠してのことであるが。

 要するに大事に育てられつつも、組という特殊な事情や、古い名家であることもあって厳格なしきたりなどがあり、今の今まで自由に遊ぶことが出来なかった、という簡単な説明である。

 それを聞いたサンディは首を傾げていたが、ある程度自分の中で納得がいったのかしばらくすると笑顔でその旨を了承したのである。恐らくそれでもサンディの中では細々とした疑問や質問はあるのだろうが、この場はとりあえず抑えて以後の関係を向上させていくことで聞けるなら聞いていこうという姿勢をとっていた。

 その姿勢をセフィは好意的に受け止め、放課後から移動までの30分程度の時間でかなり態度を緩和させた。といっても元より傍から見れば警戒してるそぶりは見せなかったが、それでも言葉を選んでいるような場面は奈々からは良く見て取れていたのである。現在は、最低限言ってはいけないことだけを警戒している状況で、サンディを含めた三人の交友関係は当面の間、かなり友好的に進むとみて間違いなかった。


 しばらく他愛もない話をしながら町を進む。

 途中あれこれと奈々が「あれは何?」 「この店は何を売ってるの?」と質問していく。

 この町に来なくても、いや何処にでも存在する店であっても知らない奈々に対してサンディはかなり驚きをみせたが、今まで学校と家の往復くらいしか見てきた世界がないことを聞いて納得した。


 「私にはわからないですけど…ずっと辛くなかったんですか?」

 サンディは思い切って奈々にそう切り出した。

 聞く分では大事にされてきた箱入り娘とはいっても、玩具や何かを買い与えられるでもなく、舞踊や護身用の体術、礼儀や作法の習得などだけをずっとやらされてきた(サンディはそう聞いているため)というのは非常に窮屈でつまらない毎日ではなかったのか?とサンディは考えていた。


 「そうね…学校に行っていた以上、他の子の話を聞くにつれて、私がいかに異常な生活をしているか、というのは判ったけれども、かといって私はそれに反発しても他に道がありませんでしたし…。辛いと思った時期もありましたけど、今はこうして立派に育ててもらいましたし、遅くはありますけど父にもようやく認められて自由も貰えましたから…。そう悪いことでもありませんよ」

 時折、過去の辛いと思った時期を思い出すかのように、顔を空に向けながら奈々は答えた。


 「奈々さんって…凄い聖人君主みたいですね」


 サンディの思いがけない返答にセフィが思わず吹き出す。


 「ぶっ、奈々が聖人君主とか…あははははは」

 「ちょ、ちょっとセフィ!聖人君主は確かに私もちょっとそう思われるのはどうかと思うけど…。そんなに笑うこともないじゃないの!」

 「いや~だってねぇ…」


 「あ、あの、奈々さんごめんなさい」

 セフィに馬鹿にされている要因になった発言に謝るサンディ。


 「いえ、その…。謝る必要はないんだけどね」

 「そうだよ、サンディさん。こんなに面白い例えをしたのに謝る必要はない!」


 セフィがビシっと指をサンディに向けながらきっぱりと言い放つ。

 何のポーズなのかはさっぱりわからないが、とにかく凄い自信をもって言い切ったことはわかった。

 その直後、拳を振り上げて怒る奈々から逃げるように走り出すセフィ。


 「ちょっとセフィ!こら、待ちなさい!」


 「っと、馬鹿やってる間についたよ、ここだ」


 急に立ち止まって振り向いたセフィにぶつかりそうになりながらも、なんとか急ブレーキをかけて立ち止まった奈々。

 サンディもやや小走りでそれに追いつく。

 

 喫茶店「アクティオ」。

 知る人ぞ知る名店、とまではいかないが、店内も清潔でお洒落な雰囲気は若い女性に人気があった。

 メニューも豊富でコーヒーや紅茶は数多くの種類があり、それに合わせた軽食やデザートも合わせて用意されている。それに加えて四季ごとに限定メニューや常連だけが知る隠しメニューがあるなど、ついつい足を運んで常連になろうとしてしまう誘惑要素も数多い。

 これだけの店舗であれば巷で人気爆発、となってもいいものなのだが、値段が高いというデメリットがある。

 

 一般的な喫茶店に比べて値段が3倍~4倍にはなるのである。お茶を一杯に軽食とデザートまでつけると、一般庶民の成人が一日に使う食費分程度を軽く超える。その分、質はかなり良いし、量もまずまずといったところではあるが、一般家庭では月に一度の贅沢にしないと、懐が火を吹くことになることは明らかであった。 


 サンディやセフィがここを利用するのは、単に彼女らの過程が裕福であったからでこそである。彼女たちの懐事情を考えれば毎日までは無理でも一週間のうち3~4日はきてもなんら問題は無かった。

 ある意味、既に一般人とは金銭感覚の基準が違うという点では充分に彼女達も「お嬢様」であることの証明ではあったが…。


 セフィは店選びに関して奈々の財政も考慮にすべきではあったが、本日の所持金を考えれば多少高い店でも全く問題は無く、また今までの小遣い全ては大事にとっておいてある、と奈々から聞いていたし、今後の小遣いは退魔の報酬の5%が支払われるということを事前に奈々から聞いていた。

 退魔のペースは大体今だと月に1~2回程度。1回の報酬を考えると、奈々個人にサラリーマンの月収半年分くらいのお金が毎月入ることになる。あくまで平均額ではあるが、場合によっては国や研究機関からなどで収入が大きい場合もあることを考えると、年間で見た場合、いくら富豪であってもただの女子高生が自由に使える金額としては破格の金額を得ることになるのである。

 ましてや奈々は贅沢をするということをしない。遊ぶことを覚えたとしても大々的にお金をパーッと使うということはしないだろう、というのはセフィには容易に想像することが出来た。セフィ自身も派手に遊ぶのは苦手だし、無駄にお金を使うことには遠慮したいタイプである。サンディはどうだかはわからなかったが、無駄にお金を使うことを良しとするタイプではないことは雰囲気や服装で判断できたし、事前に得ている情報からもその判断を裏付けるだけの根拠は得ていた。

 アクティオの出費は決して小さいと思える額ではないが、質を考えれば相応のものであるし、恐らくこの面子では遊びまわるよりお茶のみで落ち着くことが多くなることが予想されることから、この店の雰囲気や女性客が多く過ごしやすいということを加味して考えると、以後もこの店を拠点にするような感じで動いていくのが良いとセフィは考えていた。



 「さて…喫茶店がなんなのかは…さすがにわかるよね?」

 「もぉ…さすがにそれくらいはわかるわよ」


 店内に入って席に座ってからセフィはからかうように切り出したが、さすがに喫茶店がどういう店か程度の知識は持っていたらしい。


 「今日のオススメはマロンケーキですね。ケーキだから紅茶系が合うのかな?わからなければ店員さんにお任せして飲み物を選んでもらっても大丈夫ですよ。少なくとも合わないものは選びませんし。あ、勿論、飲み物だけでも大丈夫ですけれど?」


 メニューを確認するなり、サンディが奈々にオススメを紹介する。

 奈々はしばらく悩んだものの、とりあえずそのオススメのケーキと店員にお任せで紅茶を頼むことに決めた。

 セフィはチョコレート系のケーキとコーヒーを。サンディはイチゴのタルトと紅茶をお任せで頼んだ。


 頼んだメニューがくるまでにセフィの携帯を使って、携帯種類や簡単な機種ごとの特徴について話をする。

 最初は熱心に聞いていた奈々だったが、どうしても聞きなれない専門用語(といっても、一般的には通用する程度の用語ではあったのだが)が判らず、教える方も難航していた。


 「いや~すっかり失念してたよ。そもそも携帯に関する基礎知識がなかったんだ」

 「なんとなく概念的に理解しているけれども、実際に詳しく説明、といわれると説明しづらいものがありますね」

 

 セフィとサンディはどうしたものか、と顔を見合わせる。

 当の奈々は奈々で、性格上、わからない部分があるまま「そういうものです」で済ませるのは我慢ならない部分があるため、どうしても根掘り葉掘り聞いてしまう。サンディはそこまで深く知識がないことから答えられないし、セフィはかなり細かい部分まで答えられるが、それこそ本気で専門用語のオンパレードにしなくては説明できない部分まで入ってしまう。


 そうこうしているうちにケーキと紅茶が届いたので、一旦そちらを優先することにした。


 「わあっ!これ美味しい!!」

 奈々がケーキを味わいながら感嘆の声をあげる。

 ケーキがどんなものかは知っていたが、食べたことは殆どない。和風を貫く家系と父の趣味もあって洋風の菓子は基本的に家で食べることはない。奈々のおやつは大体煎餅であったし。


 「いやぁ、こうも喜んでもらえると連れてきた甲斐もあるってもんだねぇ」

 「奈々さん、子供みたいに目が輝いてますね」


 奈々の食べる様子や反応が面白くてじーっとみつめていたセフィとサンディがそういうと、改めて自分の状況を認識した奈々は顔を赤らめた。


 「だって…ほんとに美味しいんですもん」


 フォークの端を口に咥えながら上目遣いでモジモジと話す奈々。


 「あんた…それ男の前で狙ってやったらモテモテだよ」

 「女性から見ても充分可愛いですよ」 



 そんな二人の台詞に余計に顔を真っ赤にしつつも、ケーキを食べる手は止まらない奈々であった。

 その様子を微笑ましく眺めながら、セフィとサンディも本格的に自分のケーキへと意識を向ける。


 二人がケーキを制覇する前にあっさりとケーキを食べ終わった奈々であったが、あまりの美味しさに次のケーキをどうしようか悩んでいた。そしてその悩みは親友にあっさりと看破されてしまう。


 「奈々、ケーキもう一個ほしいの?」

 「えっ、それは…その…」


 恥ずかしそうにもじもじする奈々。

 その様子をみたセフィは意地悪そうに言葉を続ける。


 「別に時間もあるし、もう一個食べてもいいよ?食べた分は自分で払うんだしそこは自由だよ。」

 「そう…だよね…?別に間食することにも制限ないし…」

 

 「でも太るけどね!」

 「!?」


 セフィの台詞で後押しされたと思って決心を固めようとした瞬間、続くセフィの言葉で我に返る奈々。

 いくら世間事情に疎い、ケーキが美味しいとはいっても乙女の宿敵「体重」とは誰しも共通であるのである。


 毎日の修行は欠かせない奈々にとって、多少の栄養摂取はなんら問題とすることではなかった。しかし、自由時間が出来たことによって、どうしても修行する絶対的な時間は減ってしまう。当然、その分身体を動かしたりする時間が減っているのだから、普段の食生活に予定外の栄養が入ってくれば、その分は余ることになる。余った栄養分は当然…。


 「またの機会の楽しみにしておくわ」

 「それが懸命ですね」


 苦渋の選択を下した奈々にサンディが苦笑しながら合わせる。

 奈々は意地の悪い親友に軽く睨むような視線を向けたが、当の親友はあさっての方向を向いて口笛を吹くという白々しいとぼけ方を披露していた。

 

 そんな仲の良いセフィと奈々をサンディは楽しそうに、そして羨ましそうに眺めていたのだった。



 「さて、そろそろ本題に入ろうか?」


 ケーキも紅茶も堪能して悪ふざけも区切りがついたところでセフィが仕切り直しとばかりに言った。

 そもそもここには携帯の話を奈々にするために来た、というのが当初の大目標である。


 「もう細かい説明はいいわ。後々で調べることにするわね。丈夫そうな機種やシリーズってないのかしら?」


 奈々が細かい説明を妥協すると発言したことで、セフィとサンディはほっと胸を撫で下ろす。


 「とりあえず、このシリーズは毎回丈夫さとか頑丈っていうのを謳ってるね。実際、強度としては他社製品よりは高いと私も思うよ。まぁそれでも所詮は携帯って感じだけどね。」

 「そうですね、デザインに拘らなくて新商品が出るたびに買い換える、っていうことをしないのならここが一番奈々さんの要望には沿うでしょうね」


 セフィとサンディはそれぞれにJJ-W0100シリーズと表示されたものを指し示す。


 「ふ~ん…元々建設現場や工事現場労働者向けとして出されたものなのね…」


 奈々が説明を読んで納得する。

 確かにそういうことであれば通常よりは荒い扱いをしても壊れにくいように設定していることは理解できる。

 だが…


 「でも…デザインが男性向けすぎるのよね…」


 これを男性向け、と表現するかどうかは議論の分かれるところだが、少なくとも女性向けか?と問われれば否と即断できるデザインだ。機能さえあれば形は二の次というようなただの長方形のデザインや、やたらごつごつした岩のようなデザインのものなど、一応デザインの種類としてはそれなりの数が用意されてはいるが、そのどれもが若い女性の心をくすぐるようなものは存在していない。


 「まぁ機能性重視ですしね」

 サンディが奈々の意見をフォローする。


 「所詮、携帯の強度なんてオーダーメイドしない限りタカが知れてるわよ。デザインが諦めきれないなら普通の商品で様子をみるのがいいかもね。どうしても、っていうなら考えが無いわけでもないけど…」

 「あら、セフィ。何か他に当てがあるの?」

 「そりゃうちは総合商社よ?携帯も扱ってるもの」

 「あぁセフィのお父様に期待するってことね?」


 セフィの実家は大手の総合商社である。携帯も取り扱っていて、最近の激化する安値競争において陣頭に立って最安値を更新し続ける企業である。

 無論、安さを追求する造りとは別に高機能・高品質を追求する部門もある。


 「研究部門は結構忙しいけど、規格外の商品作るの好きだからねぇ。頑丈かつ、それなりのデザインのものと機能を盛り込むって話はそんなに手間が掛かるものじゃないし、意外と早く出来るんじゃない?」


 まるっきり人事のようにいうセフィ。

 サンディはそれを聞いて苦笑していたが、実はその研究部門にセフィが一枚噛んでいる部分があることを知っている奈々はその発言が信用できるものであることはわかった。


 「はぁ…そういうことなら最初からそうしておけば良かったかしらね…」

 奈々がため息をつきながら言う。


 「でも、それだったら奈々さんがどういうデザインが良いとか、使い勝手とかの実演と実際の使い方とかを考えて参考にしてもらうために店頭にいって商品を見たほうがいいのかな?」

 「そうだね、どちらにしても奈々がどんなのが好みか知りたいし。もしかしたら現行品で実際にみたら気に入るものもあるかもしれないし、一先ずいってみようか」

 「そうね、その方がいいかもしれないわね」


 奈々はセフィとサンディの意見に同意して店を出る準備をする。

 それを見たセフィとサンディもそれに続く。




 …結局、店で奈々が気に入るものはなく、要所要所でこれがいい、といった奈々の発言からセフィが推測して機能やデザインを盛り込むしかなかった。



誤字・脱字等ありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

またお時間やお手間などがございましたら、ご感想や評価などをいただけば、今後の参考にして改善していきたいと思います。



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