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[第二章 崩壊、開始] episode.9 崩壊、開始(1) 


場所は変わって学校長室。

中では椅子に腰掛けている白葉と立ったままの八藤がいた。


「えーと、八藤?」


そのまま数十分は過ぎていたらしく、白葉が痺れを切らしたように声をかけた。


「なんですか?」


八藤は無表情に即答する。


そんな彼女にあはーと白葉は苦笑いをすると、肩をすくめた。


「もう第二校舎の視察が終わったんだ?」


「はい、一応見てまわりました。不審物はありません。しかし他の生徒達にはまだ伏せている件なので、使用している教室までは詳しく出来ませんでしたが…」


「ううん、いいよ。もし不審物があったら生徒が気付くだろうしぃ。大丈夫大丈夫♪」


白葉はそう言うとにっこり笑った。


「基本的に第二校舎は特別教室しかないからね。使わない時は人気はないし、爆発物しかけるならちょっと確立高いと思ってたんだけど」


「──だから私に任せた、と?」


「うん、まぁそういうことだね。城下は他にすることあるし、アリスちゃんは論外。代安は今日来たばっかで、学校内のことはよく知らない」


白葉は軽くそう答えて、


「で、こんな話をしに来たわけ??」


と話を切り替えた。


「いえ、違います。少し、お聞きしたいことが」


「ふーん、何かな?」


表情を全く変えないハ籐にかまわず、笑顔で聞き返す白葉。


「…ここの教員達は、どこへ行ったのですか?」


「……」


一瞬だけ沈黙する白葉、しかしすぐに口を開いた。



「…よく気づいたね」


「朝のHR、どのクラスもばらばらな時間で終わった。…あなたが、全クラスに渡って教師の振りをしていたからではないのですか?」


「………」


「あなたは何を、隠しているのですか」


「それは――――」




白葉が口を開く。


───その時、





ドォォオン!!






「「…っ!?」」


2人は顔を見合わせ、すぐさま窓へと駆け寄った。



八藤は窓を開けて身を乗り出す。


「八藤、見える?」


八藤よりも背の低い白葉が隣で聞いた。



「はい、大体は」


学校長室があるここは第二校舎で、平行に並ぶ第一校舎とは合い向かいの位置にある。


だが、第一校舎からは煙や外傷は見当たらない。

つまり可能性としては第三校舎なのだ。


第三校舎は第一、第二校舎に垂直に並んでいるためここからではよく確認出来ないが黒い煙が微かに見えている。


「第三校舎…?」


八藤が呆然と呟いた。


それからすぐ我に返り、


「学校長っ、第三校舎にはアリスちゃんと代安が!」


白葉に振り返って八藤は言う。


「そうだね、でもまた爆発するかもしれないよ?近づかない方がいい」


「ですが…っ!」


「助けたい気持ちはわかるけど、あたしも馬鹿じゃないから。死にに行かせるわけにはいなかいよ」


あえて冷淡に白葉は言い、窓からから離れると椅子に戻った。


「ではどうするのですか!こうしている間にも、第三校舎は崩壊が始まって中の生徒達が危険な状態になっているのに!」


八藤は堪えきれない様子でそんな白葉に怒鳴りつける。


「あと一分」


「……え?」


「あと一分待って爆発が起きなかったら、いいよ。第三校舎に行くなりなんなり好きにすればいい」


白葉はそう言い放つと椅子を回転させ、デスクへと向かった。





既に起動していたパソコンには、いつの間にかメールの受信が表示されていた―――…。






* * * * *






──どうすればいいのか、わからない。




亜莉朱は煙が舞い、硝子が飛び散った廊下に座り込んでいた。

そう。学校案内もスムーズに進み、最後の教室へ移動しようとした時だった。

危ないからと亜莉朱より少し先に向かっていた代安が、教室から飛び出してきたのだ。


『<Alice>っ!』


血相を変え、代安が走る。

それと同時に代安の背後の教室から爆発音が鳴り響き、炎と共に煙が巻き起こった。


『え…っ』


呆然と立ち尽くす亜莉朱。


『逃げろ!早く!!』


代安は自分の背後に迫る炎をかわしがら走りつつ、亜莉朱に叫ぶ。

最初は炎こそ、彼女の居場所まで届いていなかったものの、次々と爆発が起こったため徐々に規模が広がっていた。


二人の距離が近づくと同時に炎は亜莉朱に迫る。


『逃げろ!──<Alice>!』


とうとう亜莉朱がその場から動けないまま代安と、炎に飲み込まれる。

硝子の激しく割れる音が響く。


しかし間一髪で代安は亜莉朱を抱え、その場に倒れ込んだ。


『ぐ…っ』


代安が低い声を上げる。


爆風ともに炎は2人の上を通り過ぎたが、亜莉朱を庇った代安の背中全体に強烈な熱と激痛が走ったのだ。


『<dia>!?』


亜莉朱はそう言って慌てて起き上がろうとするが、代安は動かず返事がない。


『<dia>…!<diamond>ッ!?』


抱えられた状態なので、顔が見えない。


『やだ…っ、返事してっ!』


しかし代安からの返事はない。ぐったりと体重を亜莉朱へ預けたまま、彼は動かない。




『そんな・・・っ嫌ァ───ッ!』




* * * * *



爆発の直後にて。


薄暗い教室の窓側に、誰かが立っている。


炎が吹き出て煙の上がる第三校舎を眺め、その人物は怪しく笑った。




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