episode.4 女王伝説
「うん、マジでひっさしぶりーっ☆ 元気してたかぁーいっ?城下っ!!」
室内に入るなり高いテンションで二人を招き入れたのは、このT―MSの学校長こと支配者。
高級そうな椅子に腰掛け、機嫌よく笑う。
───西本白葉。
その名は今目の前にいる人物の名であり、前学校長を暗殺し、この学校をのっとったと悪名高き人物の名なのだが――……。
「いやー、正直来てくれるとは思わなかったよ~。学校に城下全然来ないしぃ~」
そういって語り始める<支配者>は…
金色の髪をツインテールにしていて、黒のセーラーと言う先代の制服を着ていた。
外見年齢は十代後半の容姿をしている。
足をぶらぶらと揺らしている仕草は年下にも見えよう。
「てわけでーっ!八藤もまだ来ないけどーっ早速本題に入るよーっ☆」
「普通は入らないよね、アリス」
「う、うん」
「ちなみに代安くんもまだ来てないーっ☆」
「てゆーか代安ってよく知らない人なんだけど…」
「うん、私も」
「スケさんとカクさんもいないーっ☆」
「もう帰って良い?」
「多分駄目だと思う…」
「すみません学校長、遅くなりました」
そういって室内へ入ってきたのは八藤。
「ううん、大丈夫~」
そういってひらひらと手を振る白葉。
「まだ代安も来てないんだよぅ!八藤なんか聞いてない??」
「いや、私は特になにも…。それに代安とは今回が初対面です」
当たり前だ。今まで代安という人物は海外にいたのだから。
「マジで代安来ないし…あとで資料制作して渡しとくか~。めんどーっ!」
「あのー、白葉さん」
城下の隣でずっと黙っていた亜莉朱が遠慮がちに手を挙げた。
「はぁーいっ!?何かなアリスちゃーんっ、うふっ」
テンションの高い、白葉はイスごと振り返った。
「え…っと、その代安ルキトくんってどういう人なんですか?全然知らない人と、いきなりチーム組んで活動とかちょっと不安っていうか…」
「うーん?実は代安は私もよく知らないんだ。でも私の旧知の人が推薦…っていうか、海外研修のメンバーにいれたからまぁ心配ないかなって」
「旧知の人?この“学校”の卒業生ですか?」
「うん、いいとこついてるね八藤。その通り~私の同級生だよ」
何が楽しいのか白葉はうふふ、と意味深げに笑った。
「みんなにもいつか紹介するよ。まぁ、その話は置いといて…代安はメールで伝えたと思うけど実力者なんだよね。しかも海外で研修してたからいざって時の経験も多く積んでいると思う」
だからまぁ、と白葉は続ける。
「もしヤバそうな人だったらアリスちゃんが確かめればいいっしょ? ね、アリスちゃん」
「へ? あ、はい。そうですね」
いきなり話を振られたが亜莉朱はなんとか答えた。
「じゃあ、本題に入ろっか。メールで知ってるだろうけど再確認」
白葉は深く椅子に座り直すと、肘おきに寄りかかり頬杖をついた。
そしてパソコンのデータを見ながら長々と語り出す。
「えー、おととい零時にT-MS本部を狙ったテロ予告。
犯人は不明、予告方法はT-MSの事務室にあるコンピューターへ、だね。基本的に“学校”のコンピューターの内容やアドレスは外に漏れることはないと思うんだ。よっぽどの技術がないとロックの解除は不可能。
だから―――…
部外者の可能性は、薄い」
ごくり、と誰もが息を呑んだ。
時が止まったような気さえした。
「でもその推理を成り立たせて…つまりフェイクをして部外者だったっていう可能性もあるはあるんだけどね。とりあえず、部外者の可能性は薄い」
「…学校長、ひとつ聞いてもよろしいですか?」
「ん、八藤。なにかな?」
「その予告には、何が書かれていたのですか?」
「あぁ、予告文章に不自然は無かったかってこと?いたって普通の文章だったよ。暗号とかは考えにくい」
怪盗の予告状じゃないんだからね、と白葉は肩をすくめて
「予告にはこう書いてあったよ。
『本日零時、T-MS本部に爆発物を設置。
脅えるがいい、おまえ達の命は今我の手の中にある。
これは──── 復讐だ』」




