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[第一章 愛、故に死] episode.1 愛、故に死

「そろそろだね…」


とある町外れの豪邸。

その中の一室で、キングサイズのベッドに腰かけ、時計を見て嬉しそうに笑う少年がいる。

短く切りそろえられた白い髪に、一房黒い髪が混じり、小柄で手足がしなやかに細い少年だ。


そんな彼がいる部屋へ、段々と近づいてくる足音が。


その音を聞くと少年はベッドの下へと手を入れ、何かを取り出すと部屋のドアに向け、構えた。





「ジョーカーくん!」


ドアが開き、一人の少女が顔を出した。



その瞬間、    発砲。



「きゃああっ!?」


ナイスタイミングでそれをかわす少女。

弾丸は少女のすぐ横をかすめ、開け放したままのドアから廊下の壁へと当たり、床へ落ちた。


「ちぇ…っ」

先程ジョーカーと呼ばれた少年は、つまらなそうに唇を尖らせる。


「もうっ!ジョーカーくんっ、何で毎回毎回こんな事するのっ」


赤い縁の眼鏡に黒髪のおさげ、白のラインが入った黒のセーラーカラーとスカートに薄い灰色のサマーセーターにといった格好をしている少女。


そんな彼女は涙目でジョーカー、本名城下乃愛(しろしたのあ)に訴えた。


城下はそれを聞くと、不適に微笑して答える。


「殺したいほど愛してるから(笑)」


「笑いはいらないでしょーっ」


そう言って少女は長々と抗議を述べるが、


「ねぇ、アリス?」


ふとその言葉を遮り、城下が少女亜莉朱(ありす)の名を呼ぶ。


「せっかく来たんだから、近くにいてよ?ね、」


甘えるような声を出し、両手を差し出す城下。


「……、うん」

亜莉朱はドアから離れ、城下へと近づいた。

城下は座ったまま、自分より少し背の高い彼女へと腕を回し抱きしめる。


「…ねぇ、ジョーカーくん」

城下に身を預け、心なしか顔の赤い亜莉朱は誤魔化すように彼を呼ぶ。


「何?アリス」


「“学校”…そろそろ行かないと。ジョーカーくん卒業できなくなっちゃうよ?」


「この間の定期テストは行ったよ。結果は一位」


そう言って心配する亜莉朱に城下はけろりと答える。


「もう…、そうじゃなくて…っ?」


すると城下は亜莉朱から手を離し、立ちあがった。


「ジョーカーくん?」


「僕、明日は学校に行くよ」


「え、本当!?」


亜莉朱が嬉しそうに笑う。だが、


「でも…どうして急に?何かあったの?」


すると城下はベッドの向かいの位置にあるコンピューターデスクへと向かった。

それを少し操作し、彼はある画面を表示する。


「これだよ」


城下が振り返り、亜莉朱を呼ぶ。


「これは…“学校”からのメール?」


亜莉朱は城下の横から画面を覗き込み、送信先を見る。


「うん、T‐M.S(trance・mission・school)からのお呼び出しだよ。本当は無視したいところだけどね」


そう言って軽く肩をすくめる城下。


「夕方来た、T‐M.Sからの緊急指令。『本日の0:00にてT‐M.S本部を狙ったテロ予告。

これにより以下のMSメンバーは明朝、必ず登校のこと。


<策略者>joker 城下       <技術者>diamond 代安

<能力者>Alice 亜莉朱      <技術者>heart 八藤

 

以上4名』」


そして淡々とメールを読み上げる。 


「えぇっ!?また私メンバーに入ってるの?」

                

「そうだね。アリスはM.S無二の超能力者だから、仕方ないよ。それに毎回って言ったら僕も同じだよ?本部では唯一の策略者だしね」


そういうと城下は亜莉朱へ顔を向けた。


「…ねぇ、アリス」


「うん?」


首をかしげる亜莉朱。


「眼鏡、外して?」


城下はにこっと笑う。


「…ん、」


城下に言われた通り、亜莉朱は小さく頷くと眼鏡を外した。

眼鏡を外すと亜莉朱の目は黒から深い青へと色を変える。

これが亜莉朱の能力、“真実の瞳”。

嘘をついた人間にだけ黒い靄がかかったように見えるのだ。

つまり視線を向けた相手の言葉が真実かどうかを見極めることができる。


常に眼鏡をかけることで人の嘘を見極めないようにしている亜莉朱は、必要以外眼鏡を外すことをためらう。

裏切られるのを知ってしまうのは怖いから。


「そう、いい子…」


城下が微笑み、亜莉朱を抱きしめる。


でも、そんな亜莉朱も城下の前ではあっさりと眼鏡を外す。

城下本人曰く“邪魔だから”と、亜莉朱曰く“城下は自分を裏切らない”から。


「ジョーカーくん…」

亜莉朱も抱きしめ返す。


「乃愛って呼んでよ、アリス」


城下が亜莉朱の耳元で囁く。


「ノアくん…?」


「違うよ、“ノア”。くんはいらない」


「…ノア」


亜莉朱が恥ずかしそうに言った。


「ん、上出来」


城下はそんな彼女の頭を優しくなでる。



「…アリス、僕のこと好き?」


「うん、好き。大好き」

城下の胸に顔を埋め、幸せそうに笑う亜莉朱。




「僕もアリスが大好きだよ。愛してる、殺したいくらいに…」




城下乃愛、別名 策略者<joker>。


彼の物語は今、始まったばかり―――…。





















2年前から、ずっと書きためていた小説です。

どうぞ最後までお付き合いください。

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