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沈黙のういザード  作者: サファイロス
3章 狂奏のハザード

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第30話 文化祭がくれたもの

 朝の教室。

 ざわざわとした声が飛び交い、

 窓から差し込む光が、少し冷たい秋の色をしていた。


「おっはよ〜……ふわぁぁ……」


 憂は机に鞄をどさっと置き、

 欠伸を隠す暇もなく椅子に沈む。


「……眠そうですわね、憂さん」


「だって昨日さぁ……

 なんか胸がキュンってして寝れなくて〜……

 なんでだろ〜?」


 千秋は思わず視線を逸らす。


「……お姉様」


「え?」


「…………はっ」


 言ってしまった瞬間、

 千秋の顔がカァァッと一瞬で真っ赤になる。


「え、今……なんて言ったの?」

 憂はニヤニヤと顔を近づける。


「い、いえ!何も申し上げておりませんわっ!」


「ふ〜ん?

 千秋てば、誰かと間違えてない?」


「ぐっ……」


 千秋は机に頬を伏せたくなる。

 でも憂は、その全部に気づいている。


 なんだか少し──

 大人っぽい目で。


「文化祭さ〜、楽しかったよね!」

 

 憂がぱっと話題を明るく変える。


「はい、とても。

 ……雪乃さんの、おかげでもありますわ」


 その呼び方に、憂はちょっとだけ寂しそうに笑う。


「うん。雪姉、すごく楽しんでたみたいだし!

 わたしも楽しかった〜っ!」


「ええ。すべてが……宝物のような時間でしたわ」


 しみじみ言う千秋を、

 憂はからかうようにくすっと笑う。


「千秋、思い出し泣きしないようにね?

 お嬢さまって泣き虫だし〜」


「なっ……!泣いてませんわっ!」


「昨日泣いてたじゃん〜♪」


「だ、だまらっしゃい!!」


 二人のやりとりに、

 周りの友達がクスクス笑い始める。


「あ、そうでしたわ!」


 千秋は突然スマホを取り出した。


「憂さん。あなたが着ていたメイド服の……この写真」


 画面には、

 ばっちりポーズを決めたメイド憂が。


「わーっ!?

 ちょ、それどこからっ!?」


「もちろん。

 わたくしが撮ったのですわ」


「い、やぁぁあ!!

 恥ずかしいってば!!」


「ふふっ。とても可愛らしかったですわよ?

 お姉様も──きっと誇らしい気持ちでしょうね」


 そう言われると、

 憂は少しだけ、胸がじんとした。


「……えへへ。

 そっかぁ……♪」


 ところが──


「憂ー!これ見てー!」


 別のクラスメイトが駆け寄ってくる。


「なに?」


「昨日のやつ!

 憂のパンツ見えそう瞬間ショット!!」


「ちょっっ!!??」


 スマホの画面には──

 階段でこけかけた憂が

 お皿を抱えながらバランス崩す瞬間の写真。


 ぜったい見えそう。

 あと少しでアウト。


「ちょぉぉおお!!消してぇぇえ!!?」


「あ〜これ永久保存かなぁ〜?」


「やだぁぁぁぁ!!!」


 憂が涙目で追いかける。

 千秋はその後ろ姿を見守りながら、

 そっと微笑んだ。



 そして、憂は振り返って

 最高の笑顔で宣言する。


「文化祭、超たのしかったーーーっ!!!」


──多分これが、青春という味。

 終わりじゃない。

 ここからまた続いていく。

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