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沈黙のういザード  作者: サファイロス


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第9話 湯けむりフルコース

鏡張りの脱衣所に、煌びやかなドレスが静かに解かれていく。


最初に立ち上がったのは憂だった。

胸元のリボンをそっとほどき、肩からドレスを滑らせる。


黄緑色の下着がちらりと見え、瑞々しい若葉のような初々しさを漂わせる。

憂は両腕で胸元を覆い、視線をそっと泳がせながらドレスを畳む。

その仕草は自然で、どこまでも慎ましかった。


続いて千秋。

ファスナーを下ろすと、青色のランジェリーが現れ、白い肌と曲線を上品に縁取る。

胸元のレースが呼吸に合わせて軽く揺れるたび、上品で静謐な気品が漂った。


最後に葉月は肩を軽くすくめ、ドレスを脱ぐ。

明るい茶髪が背へと流れ、黒のランジェリーが優雅な曲線を強調する。

自信に満ちた微笑みを浮かべ、二人を見やる。


三人が下着姿で並ぶと、脱衣所は静かに熱を帯びた。


――そして、舞台は浴場へ。


大理石の床に白い湯気が立ちのぼる広々とした浴場。

憂と千秋は洗い場に腰を下ろし、互いの背を丁寧に洗い合う。


「憂さんの手つき、頼もしいですわ」

「別に普通だよ。千秋は肌がきれいだから洗いやすいんだよ」


泡が滑らかに流れ、白い肌をつややかに浮かび上がらせる。

憂はちらりと視線を向け、胸元に目をやって慌てる。


葉月はタオルを手に一歩前に出る。

「次は私も二人に洗ってもらおうかな」

「もちろん。お手伝いさせていただきますわ」千秋が静かに頷く。


憂は赤面しながら視線を逸らす。

「……変なことしないって約束なら、いいけど」

「ええ、もちろん」葉月は柔らかく微笑む。


白い泡が肌を覆い、香りが湯気の中に溶ける。

腰や背中を洗い合う動作の間に、三人の間には穏やかな笑いが生まれる。


湯船に移ると、千秋は静かに身を沈め、黒髪と白い肌が湯面に映える。

葉月は腕を広げてのびをし、肩まで湯に沈み込む。


「やっぱり広いお風呂は気持ちいいね」

「祖母の代からの浴場ですから、ゆっくり寛いでくださいませ」

千秋は柔らかに返す。


二人の会話が湯気に溶ける中、憂はひとりサウナ室へ。

木のベンチに腰掛け、汗を拭いながら熱気に体を預ける。


「……はぁ、暑いけど気持ちいい」


限界を感じて立ち上がると、水風呂へ向かう。

ざぶん――全身を冷水が包み、頭まで浸かる。


「っ……生き返る……!」


皮膚が引き締まり、感覚がシャープに戻る心地よさに、憂は自然と笑みを浮かべた。

湯上がりの籐椅子に腰を落とし、静かな風が頬を撫でる。


「……これが“ととのう”ってやつか」


全身の力が抜け、心も体もゆっくりとほどけていく。

憂の口元には、満ち足りた微笑が浮かんでいた。


――――――――――


湯気の余韻が頬に残る中、三人は並んで腰を下ろした。


目の前には、冷蔵ケースにずらりと並ぶ瓶牛乳――

白い牛乳、ほんのり黄色のフルーツ牛乳、深いブラウンのコーヒー牛乳。


「あたしはもちろん……これ!」

葉月は迷わずフルーツ牛乳を手に取り、蓋をパキッと割ると、ゆっくりと口に運ぶ。


「ぷはっ! やっぱりフルーツ牛乳だね。湯上がりにぴったり」


穏やかな笑みを浮かべ、満足そうに一口飲む葉月に、千秋は小さくため息をついた。


「葉月さん……本能的ですこと」


千秋も手にしたコーヒー牛乳をゆっくり傾ける。

唇の動きに合わせて、微かに目元が柔らぐ。

「……ほろ苦さと甘さの調和、悪くありませんわ。すっきりとします」


「千秋ちゃんは上品でずるいなぁ」

葉月は軽く笑い、千秋はかすかに目を伏せて微笑む。


一方、憂は冷蔵ケースからオーソドックスな白い牛乳を取り、口元にあててごくり。

冷たい牛乳が火照った体に染みわたり、目を細める。

「……ふぅ、落ち着く」


葉月がにやりと笑う。

「こうして三人並んで飲むと、なんか“牛乳三姉妹”みたいだね」


「……例えが雑ですわ」千秋が肩をすくめる。

「じゃあ、“牛乳御三家”は?」

「戦国武将みたいで強そう……」憂が控えめにツッコミを入れる。


「じゃあ、乾杯しよっか!」葉月がフルーツ牛乳を掲げる。

「フルーツ牛乳に!」

「コーヒー牛乳に!」

「牛乳に……」


三本の瓶が軽やかにカチンと触れ合い、湯上がりのひとときに小さな音を添えた。

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