表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沈黙のういザード  作者: サファイロス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/88

16話 白凰の制服と、繋いだ指先

「ごきげんよう。

 そちらのお二人……白凰の制服、着てみませんこと?」


文化祭の特設ブースから、上品な声が響く。

白凰の先輩たちが、優雅な微笑みを浮かべながら私たちに声を掛けてきた。


「本日限定で、着用体験をご用意しておりますの。

 よろしければ、ぜひどうぞ」


千秋がちらりと私を見る。私は少し照れたように微笑み――


「……千秋。せっかくだし、着てみましょうか?」


「……は、はいっ……!」


更衣室を出た二人は――まるで社交界にデビューする若き令嬢のようだった。

私の制服のリボンが風に揺れ、千秋は銀細工のボタンにそっと指を添える。

上質な生地が光をまとい、立ち姿だけで“育ち”がわかるほどの気品を醸していた。


「雪乃さん……似合いすぎですわ……」


「千秋も綺麗。……本物のお嬢様みたい」


「本物ですわよ?」


千秋は冗談めかしつつ、そっと私の肩に触れた。


先輩たちは手を叩き、嬉しそうに去っていく。


「じゃあ、行きましょ。文化祭デートに」


「で、デ、デデ……デート……ですわね……!?」

千秋は一人で爆発していた。


――そしてダーツ。


「憂さん、お上手……っ」


私がダーツを放つと、見事にブルに命中した。


「千秋もできるわよ?」


「む、無理無理ですわ――きゃっ」


私が背後から千秋の腕を包み込む。手元に体温が伝わり、自然に力が抜ける。


「力抜いて。手首だけ……そう」


「~~~~っ!!!」


千秋の投げたダーツも、ぎりぎりだが的の真ん中に刺さる。


「ほら、できた」


「でっ…でも今のは…雪乃さんが誘導して…」


振り返ると、二人の顔がほんの数センチしか離れていない。

息が混じる距離だが、自然に少し距離を取ることで、心は確かに繋がっていた。

私はそっと千秋の袖を握る。


「落ち着かない?」


「……こんな迫力、初めてだから」


千秋は手を握り返す。掴むのではなく――繋ぐように。


「わたくしがいますわ」


「……ありがとう」


離れたくないという気持ちが、二人の間に静かに流れた。


――そして、デス・ドーム。


会場の歓声が耳を震わせ、赤い照明が円形の舞台を照らす。

巨大な金属の円球――“デス・ドーム”の中、ライダーたちが疾走していた。


私は千秋の袖をそっと握る。外の爆音が二人を包み込み、心臓の鼓動まで聞こえるようだ。


「落ち着かない?」


「……こんな迫力、初めてだから」


千秋は手を握り返す。掴むのではなく――繋ぐ。


三台のバイクが猛スピードで交錯し、壁面に沿って駆け抜けるたび、砂埃が舞い、光が反射して眩しい。

私は千秋の手をそっと引き、距離を保ちながらその迫力を見守る。


「ひゃっ……!」


バイクが壁を蹴るようにして宙を駆け抜け、火花が飛ぶ。

千秋の息が止まる。だが私の手が温かく手首を包み、安心感が全身に広がる。


「ねぇ……千秋、怖くない?」


「う、うん……雪乃さんが……いるから」


三人目のライダーが頂点を駆け抜け、火花が夜空のように散る。

歓声が揺れる中、二人は息を合わせて手を繋ぎ、立ち続ける。


轟音、金属の擦れる音、風の巻き起こす音――すべてが二人を包み込み、離れたくない気持ちだけが確かに残った。


私は千秋の肩に寄り、顔を近づける。

手のひらに伝わる温もりと鼓動が、円球の中でさらに強く感じられた。


「離れないで……」


「うん、離れない……」


轟音が鳴り止まない中でも、二人だけの世界がそこにある。

バイクが一周するたび火花が舞い散り、手と手の繋がりが確かめられる――

円球のサーカスの中心で、雪乃と千秋の距離は甘く、しかし確実に縮まっ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ