第2話 チャイムのあとで
チャイムが鳴ると教室は静まり返った。
御陵 憂は机に肘をつき、余裕の笑みを浮かべる。
前の席には六地蔵 千秋が座っている。黒色の髪は肩に流れ、制服のスカーフはきちんと整えられていた。
清楚で上品、まるで令嬢そのものの佇まいに、周囲の生徒たちは思わず視線を向ける。
だが千秋は控えめに微笑み、落ち着いた声で教室に溶け込んでいた。
「……退屈。早く私の番にならないかな」
前の席の千秋が、上品な笑みを浮かべて横目で彼女を見やる。
「ほんとうに……憂さんは余裕綽々でいらっしゃいますのね。わたくしなど、先ほどの受け答えで少し緊張してしまいましたのに」
「千秋は落ち着いてたじゃん。普通にすごかったよ。でも――わたしの方が、ちょっとだけ派手にやるつもり」
憂の瞳がきらりと光る。
その瞬間、胸の奥が少しわくわくするのを感じた――
クラスの注目を少しだけかき回してみよう、という遊び心だ。
「次、御陵さん」
憂は立ち上がる。
椅子から離れる足取りは、舞台に上がる役者のように軽やかだった。
「Good morning, sir. How are you today?」
(おはようございます、先生。ご機嫌いかがですか?)
柔らかく澄んだ声に、クラス全体がざわつく。
先生は少し目を丸くして答えた。
「I’m fine, thank you. And you?」
(元気ですよ、ありがとう。君はどうかな?)
憂はにっこり笑う。
「I’m excellent, thank you. I woke up early this morning and took a cold bath. It made me feel refreshed and ready for anything!」
(とても元気です。今朝早く起きて冷たいお風呂に入ったんです。すっきりして、何でもできそうな気分です!)
――まさかの応用表現に、先生は思わず聞き返す。
「Oh, really? A cold bath in the morning?」
(本当に? 朝に冷たいお風呂だって?)
「Yes! It’s my routine. It makes me strong in both body and mind. That’s why I enjoy studying, sports, and even this English test.」
(はい! それがわたしの日課なんです。体も心も強くしてくれるので、勉強も運動も、そしてこの英語のテストさえ楽しめるんです。)
教室の空気がざわめきに変わる。
憂は心の中で、クラスのみんなの驚く顔を想像してにやりと笑った。
先生は思わず感嘆の笑みを浮かべる。
「素晴らしいですよ、御陵さん。発音も表現も自然です。」
クラスのあちこちでささやき声が漏れる。
「え、めっちゃ流暢……」
「先生、本気で驚いてたよね」
「帰国子女レベル…いや、それ以上かも」
憂は軽く頭を下げ、くるりと踵を返して席へ。
腰を下ろすと同時に、クラスメイトたちはまだざわめきを抑えきれず、驚きと憧れの入り混じった視線を注いでいた。
隣の千秋が、ほほえみを含んだ声で囁く。
「……さすが、憂さん。先生まで驚いていらっしゃいましたわ」
「えへへ、ちょっと遊んだだけだよ」
憂は小さく舌を出し、机に突っ伏すようにして笑った。




