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沈黙のういザード  作者: サファイロス
4章 昇華のブリザード

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第9話 プレゼント探し①

大きな商業施設のガラスに、

 雲の切れ間から差した光が反射していた。


 憂はダウンコートの袖をぎゅっと握りしめ、

 足を止めたまま視線を落とす。


「……葉月姉。

 どれを見ても、千秋に似合う気がしないよ……」


「はいはい~。焦っちゃいけませんぞ~」


 葉月はわざとらしく腕を組み、にっこり笑う。


「大切なひとへのプレゼントはね、

 迷って当然! むしろ迷わないなんて愛が薄い証拠ですっ」


「愛って言わないで!? 恥ずかしい……!」


「恥ずかしがるってことは~? え?」


「お姉ちゃんストップ!」


 やいのやいのと軽口を交わしながら、

 二人はエスカレーターを上がる。


 アクセサリー、服飾、雑貨……

 光の粒がきらきら視界に踊った。


「でもさ……千秋って全部似合っちゃうじゃん。

 逆に“特別”が分かんなくて」


「ふっふっふ。そこなのよ、妹よ」


 葉月は顎に指を当て、キラーンとウインクする。


「“似合うもの”じゃなくて、

 “憂ちゃんがあげたいもの”を選びなさいな」


「……わたしが、あげたいもの……」


「そう、プレゼントってね、

 贈るひとの気持ちがそのまんま形になるの」


 憂は胸元のネックレスを握りしめる。

 視線はガラスケースの中へ。



 アクセサリーショップ。

 ショーケースで揺れる小さな宝石たち。


 雑貨店。

 柔らかな手触りの冬小物。


 香水店。

 甘い香りの波。


 けれど憂は——

 何を手にしても、すぐに戻す。


「……違う……

 これじゃない……」


「うんうん。

 一つ一つに千秋ちゃんを重ねてるんでしょ~?」


「……喜んでほしいし……

 驚いてほしいし……

 ちゃんと“伝わる”やつがいいの……」


 言い終えた瞬間、

 頬がぽっと赤く染まった。


 葉月はすかさず腕を組み、ドヤァ!


「ほ~ら~! 愛じゃ~ん♪」


「今その単語ほんとやめて!!」


「むふふ♪」



「はぁぁぁぁぁぁぁ……」


「はい、ため息11回!

 あと39回で今日のノルマ達成~」


「ノルマなんてないから!!」


 ショッピングモールの冬物コーナー。

 店内の明るいBGMとは裏腹に、憂は曇天。


「ねぇ葉月姉……

 千秋って、どういうの好きだと思う……?」


「それはもう、

 上質で、高級感あって、センス抜群で、

 ロマンをちょびっと隠し持つツンデレお嬢様デザイン!」


「条件てんこ盛りすぎぃ!」


「つまりだね、

 “気持ちがちゃんとこもってるもの”ってことよ」


 葉月がふっと声を落とす。


「想像してみ? 憂ちゃん」


「え……?」


「千秋ちゃんが、それを身につけたときの顔」


 息が、止まる。


 脳裏に浮かぶ——

 涼やかで誇らしい横顔。

 それを照らす、真っ直ぐな瞳。


 その瞬間——


 憂の視線が、ケースの一つに

 ぴたり、と吸い寄せられた。


(これだ……)


 光が、未来を示すみたいに

 ただそこで静かに輝いていた。

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