第9話 プレゼント探し①
大きな商業施設のガラスに、
雲の切れ間から差した光が反射していた。
憂はダウンコートの袖をぎゅっと握りしめ、
足を止めたまま視線を落とす。
「……葉月姉。
どれを見ても、千秋に似合う気がしないよ……」
「はいはい~。焦っちゃいけませんぞ~」
葉月はわざとらしく腕を組み、にっこり笑う。
「大切なひとへのプレゼントはね、
迷って当然! むしろ迷わないなんて愛が薄い証拠ですっ」
「愛って言わないで!? 恥ずかしい……!」
「恥ずかしがるってことは~? え?」
「お姉ちゃんストップ!」
やいのやいのと軽口を交わしながら、
二人はエスカレーターを上がる。
アクセサリー、服飾、雑貨……
光の粒がきらきら視界に踊った。
「でもさ……千秋って全部似合っちゃうじゃん。
逆に“特別”が分かんなくて」
「ふっふっふ。そこなのよ、妹よ」
葉月は顎に指を当て、キラーンとウインクする。
「“似合うもの”じゃなくて、
“憂ちゃんがあげたいもの”を選びなさいな」
「……わたしが、あげたいもの……」
「そう、プレゼントってね、
贈るひとの気持ちがそのまんま形になるの」
憂は胸元のネックレスを握りしめる。
視線はガラスケースの中へ。
◇
アクセサリーショップ。
ショーケースで揺れる小さな宝石たち。
雑貨店。
柔らかな手触りの冬小物。
香水店。
甘い香りの波。
けれど憂は——
何を手にしても、すぐに戻す。
「……違う……
これじゃない……」
「うんうん。
一つ一つに千秋ちゃんを重ねてるんでしょ~?」
「……喜んでほしいし……
驚いてほしいし……
ちゃんと“伝わる”やつがいいの……」
言い終えた瞬間、
頬がぽっと赤く染まった。
葉月はすかさず腕を組み、ドヤァ!
「ほ~ら~! 愛じゃ~ん♪」
「今その単語ほんとやめて!!」
「むふふ♪」
◇
「はぁぁぁぁぁぁぁ……」
「はい、ため息11回!
あと39回で今日のノルマ達成~」
「ノルマなんてないから!!」
ショッピングモールの冬物コーナー。
店内の明るいBGMとは裏腹に、憂は曇天。
「ねぇ葉月姉……
千秋って、どういうの好きだと思う……?」
「それはもう、
上質で、高級感あって、センス抜群で、
ロマンをちょびっと隠し持つツンデレお嬢様デザイン!」
「条件てんこ盛りすぎぃ!」
「つまりだね、
“気持ちがちゃんとこもってるもの”ってことよ」
葉月がふっと声を落とす。
「想像してみ? 憂ちゃん」
「え……?」
「千秋ちゃんが、それを身につけたときの顔」
息が、止まる。
脳裏に浮かぶ——
涼やかで誇らしい横顔。
それを照らす、真っ直ぐな瞳。
その瞬間——
憂の視線が、ケースの一つに
ぴたり、と吸い寄せられた。
(これだ……)
光が、未来を示すみたいに
ただそこで静かに輝いていた。




