7話 御陵家の掟・第四条 『憂の“好き”は全力で支援・称賛すること』
湯気と湯の温かさが消えきらないまま、
テーブルの上にはほかほかのお鍋。
「はいっ!憂ちゃんの好きな具材、ぜんぶ投入~!」
「ほんと全部だ……ありがとう、葉月姉」
嬉しそうに器を差し出す姉。
その笑顔に憂の心も和らぐ。
箸を動かしながら、憂はぽつりとこぼした。
「……受験、もうすぐなんだよね」
「うん」
「高校、どうしようかなって。葉月姉と同じ白鳳も魅力的だし、
関西の進学校にも興味あって……どっちに行くべきか迷ってて」
その言葉には、真剣な迷いとまだ見ぬ未来への期待が混ざっていた。
葉月は少し驚いてから、ふわっと笑う。
「悩むってことはね、ちゃんと自分の未来を考えてるってことだよ」
「……そうなのかな」
「そうだよ!」
葉月は胸を張り、いつものどや顔で宣言する。
「御陵家の掟・第四条!!
『憂の“好き”は全力で支援・称賛すること』!!」
「掟、ほんとに増やしていくんだね……」
「もちろん! 憂ちゃんが進みたい道なら、お姉ちゃんも全力で応援する!」
少し間を置いたあと、
葉月はゆっくり息を吸って言った。
「……一緒の高校に通えたら……すっごく嬉しいよ?」
その声音はいつもの賑やかさより少しだけ弱かった。
「でもね、もし憂ちゃんの夢が別の場所へ向かってるなら」
葉月は優しく笑った。
憂が不安にならないように――
むしろ背中を押せるように。
「お姉ちゃんは嬉しい悔し泣きしながら、全力で応援するって決めてるから」
「……葉月姉」
「あたしわね、憂ちゃんがどんな未来を選んでも――
絶対に隣にいるよ。
だから好きに選んでいいの」
その言葉に、憂の胸がぎゅっと締めつけられる。
「……ありがとう。そう言ってもらえると、すごく安心した」
葉月は急に明るくなって、
「じゃあまずはお鍋でもりもり栄養補給! 勉強はそのあとで!!」
「任せて!勉強も鍋も頑張る!」
「鍋の努力値はカンストさせるよ!!!」
「そんな数値ない!!」
二人の笑い声と湯気が弾けて、冬の夜を温かく満たしていった。




