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華出井 葵(12)と願いの井戸 21

 観客席をベッドからソファに移し、会議は再開される。

「じゃあ、ジャマをしたおっさんの話に戻すよ」

「お願いします」

 甚八が疲れた顔で促し、京護が親より保護者の顔をして頷いた。

 京護の足元で崩れたスライム状態の影は、それなりに今の姿を気にいっていた。

 そんな二人と影の前で、1人だけ立った葵が立体パズルを持っていない方の指を、まずは1本、ひと指し指を立てる。

 リアクションまで仕切り直す葵は、影の性質を語っていく。

「したいようにする困ったおっさんでも、万能じゃない。動ける範囲に制限はあるし、攻撃できる相手にも条件がある」

 甚八はなるほど、と頷いた。

 京護は、条件という言葉に反応した。その条件があるから、あの惨事が生まれた。

 影の攻撃とはすなわち、人を殺したという事だ。

 だのに説明をしている葵は、気にしている様子はない。

 一番被害を被ったであろう本家の子供なのにと、戸惑う京護をよそに、葵は影にも気さくに声をかける。

「縛りゲーみたいな事なってんの面白いね、おっさん」

 それで良いのかと、甚八まで困惑する。

「そんな単純な話ではないのに、葵様が言うと軽く聞こえますね」

「おっさんの事だもん。それに、今日の会議はコレとソレの関係でしょ。テーマはズレちゃだめ」

 葵が右手で持った立体パズルは、相変わらず内側から淡くランプのように光っていた。 

 子供が持てるサイズと重さの、パズルめいた物一つで、影が抑え込めている。

 葵は、本家に居た人のほとんどを殺した影から、京護を引きはがしている。

 どちらも方法は分かっていない。

 片方は今、教えてくれると言う葵が、話を続けた。

「で、この縛りゲー状態でも、おっさんの方がアドバンテージ持ってるのが今回のポイント」

 葵は真ん中の指を立てて、指を二本に増やす。

「直接攻撃は出来ない代わりに、混乱や毒系の精神攻撃っぽいのホント面倒くさい。

 ぼくには全方位で効かないけどねっ」

 葵は最後に、腰に手を当てて胸を張る。

 捲し立てていた説明こそ、甚八に起きた事だ。 

 思わず、首に手を当てたくなる。寸で隣に京護がいるのを思い出し、堪えた。

 あれは、二度と味わいたくないほどの恐怖と、嫌悪感。身の内を余さず暴かれ、自分が持つ善性をひっくり返された気分だった。

 なにより、喉を刺されて死んでいない事に、脳が追い付かずパニックになった。

「…………葵君、本当に大丈夫だったの?」

 再び起きた吐き気が治まったのは、京護の震える声が聞こえたからだ。

 視線を右に向けると、葵に駆け寄りたいのを堪えているのが伝わった。

「おれがあの時した事、知ってておれをお父さんから引きはがしてくれたの?」

 京護の足元にいるスライム状の影に、動きはない。

「なんで…………どうやって?」

 葵は腰に当てた手を緩めて、京護に近づく。

 そしてパズルを持っていない方の指を2本立てる。会議のポイントではない、ピースサインだ。

「友達だからだよ」

 そして、ニカリと歯を見せて笑った。

「でも、どうやったかはまだナイショ。

 ぼくは天才だから、おっさん相手でも油断しないからね」

 眼前に広がる葵の屈託のない言動に、京護は何も言えなくなる。

 感極まって唇を震わせ、続けて聞きたかった言葉の全てを飲み込む。

 今は、この許容に救われたかった。

 一方で、京護の足元でスライム上だった影は、その液体一杯に口角を浮かばせた。

 まるで葵に習うように、口を開けて笑う。


【つづき ハナセ がき ハナセ それを】


 心なしか病院より無邪気に見えて、甚八だけが、そら恐ろしさを感じていた。

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