表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/25

第9話「ぶっきらぼうな新入り、現る」

朝のコンビニ。

要は品出しを終え、レジカウンターに置いたパンの数を確認していた。


 


「スティックパンと、カレーパン……あと、どんぐりクッキーも在庫増えてるな」


 


コンビニが“レベルアップ”するたびに、商品がちょっとずつ増えていく。

最近では「ピナおすすめ」と書かれたどんぐりコーナーも客に人気だった。


 


そこへ。


 


「てんちょー! 新しい人材、連れてきましたっ!!」


 


元気な声とともに、ドアがウィーンと開く。


 


「……あん? ここか?」


 


入ってきたのは、赤い目をした褐色肌の少年。

白髪のショートヘアに黒いローブをまとい、鋭い目つきで店内を見回している。


 


「ちょ、リュカ! 入るなら靴拭いてって言ったでしょ!? 床がピカピカなのにぃ〜!」


 


「うっせぇよ馬鹿ピナ。お前が呼んだんだろ」


 


「あぅ……」


 


ピナがしょんぼりした瞬間、リュカは要に向き直り、ぺこりと頭を下げた。


 


「リュカ。森の北に住んでる。ピナの頼みで来た。……ここ、働ける場所か?」


 


「あ、あぁ。俺がこのコンビニの……まぁ店長みたいなもんだ。要っていいます」


 


「じゃあ、店長。とりあえず一日、試してみる」


 


それだけ言うと、リュカはカウンターの裏にスッと移動し、何の説明もなく商品整理を始めた。


 


「ちょ、ちょっと! 勝手に触らないで! そこはピナの――」


 


「お前が触ると転ぶだろ。さっきも角で棚にぶつけてたし」


 


「うぅ……覚えてたの……」


 


リュカは手際よく棚を整えながら、魔力感知の目で商品を確認する。


 


「ここの商品、全部“外界の魔力”まとってる。普通のやつには扱えねぇな」


 


「……外界の?」


 


要が尋ねると、リュカはぼそっと返した。


 


「この世界のじゃねぇって意味。たぶん、あんたの世界のもんだろ、店長」


 


要は、思わず棚のどんぐりクッキーを見つめた。


「……そんなの、食べ物にも分かるのか」


 


「魔力に敏感な目をしてるだけ。俺の目には“色”が見える」


 


ぶっきらぼうで無表情。

でも、動きには無駄がなく、言葉も鋭い。


 


そんなリュカを横で見ていたピナは、むぅ〜っと口を尖らせる。


 


「リュカはこうやって、すぐピナを子ども扱いするのですっ……」


 


「事実だろ。あとカゴ、逆さまに積むなって言っただろ、馬鹿ピナ」


 


「うぅ……副店長なのにぃ……」


 


「それも意味わかんねぇ称号だな」


 


そんな二人のやりとりに、要はクスッと笑った。


 


(なんだかんだ言いながら、仲は良さそうだな)


 


──こうして、異世界コンビニに新しいスタッフ・リュカが加わった。

無愛想だけど、頼りになる戦力。


 


その日から、コンビニはちょっとだけ“硬派”になった気がした。


 


(つづく)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ