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第七話

 僕たちは急いで外に出て会場を目指す。

 会場は校舎の最も遠い場所に位置しており行くのに時間が掛かってしまう。


 会場に到着するまでに何人もの護衛の兵士らしき人に会い「君たちは誰だい?」「ボルベルク家とスタローン家の!」「どうぞお通りください。」のループを行い、到着するのにとても時間が掛かってしまった。


 僕たちからするととても面倒な人たちだったが会場にいる王様の権力を感じてしまう。


 しばらくすると会場となっている豪華なパーティー会場が見えてくる。


 会場の前にもまだ護衛の人たちがおりまた同じような受け答えをして中に入っていく。

 僕とミライムさんは大きな扉の前でたたずんでいた。


「どうやって中に入ります?さすがにこれだけ遅れて堂々と扉から入るのは気が引けるのですが。」


「確かにそうですね、今のどのような状況なのかを知りたいですね………」


 この奥にたくさんの人がいるのだろうたくさんの人が会話している音が正面の扉から聞こえる。

 今どのようなことが行われているのか気になった僕たちはアイコンタクトをし、壁に耳を着けて何が話されているのか耳を澄ませてみる。


「これからも怪我などに気を付けて5年間の時を共に学ぶ仲間たちを大切にするように。…乾杯!」


 どうやらすでに入学式は終了し、これから立食式の宴会があるようだ。


「これからどうしますかミライムさん?僕としては廊下を回り込んで非常口から入室していきたいと考えているのですが。」


 これからの方針を話し合うためミライムさんに話を向ける。


 ミライムさんは少しの間考えこんだ後で口を開く。


「そうですね。私としてはお花摘みにいった後の帰りといった雰囲気で堂々と入りたいと考えているのですが。どうでしょうか?」


 ミライムさんは堂々としていたいらしい。


 確かにその方が後で言い訳をしやすいが、もし注目を集めてしまうと、とてもめんどくさいことになってしまう。


 だがミライムさんの意見ならば全てが世界の理なのである。


 ミライムさんの意見が素晴らしい、そのことについて力説しようとすると、誰かがこちらに向かって僕が入ろうとしていた裏口からトントンと足音を鳴らせて歩いてきた。


「どうしたんだい君たち早く会場に入らないのかい?ここまで気配を駄々漏らしにしていて、何かの罠かと思えば君たちだったのかい。」


「リークさん!」


 リークは数年前までボルベルク家で訓練をしており、時々僕のお世話をしてくれていたのだが、今では皇帝の近衛騎士にまで出世しておりどのように接すればよいのか分かりづらい人である。


「これは失礼だったね。フリード様、ミライム様もし入場しづらいようでしたら、こちらにどうぞいきますよ。」


 僕は再会を喜んで名前を呼んだのだが、どうやらリークは僕の性格を知っているから注意したように感じたのだろう。


 どうやら状況を察して会場に入るのに協力してくれるようだ。


「さあさあミライム様、こちらへ。フリード様も行きますよ。」


「は、はい分かりました。」


 リークもミライムさんと同じ考えなのか、堂々と入ろうとしているようだ。


 リークはなかなかいい男なのでミライムと一緒にいさせたくないのだが、今は目をつぶっておこう。


 ……………少しでも触れたら殺すけど。


 しかしミライムさんと同じ意見であって、僕は違う意見だったことは気に食わない。


「はぁ~……やっぱり堂々と行くのですね。」


「どうしたのですかフリード様。人生、隠れながら生きてあなたは楽しいと感じるのですか?あと今、めんどくさそうな顔をしてらっしゃいますが、あなたの目にとんでもない殺意が宿っていますよ。気づいていますか?」


 僕がいまだに行くのを渋っていると…


「フリード様、もうこれまでに時間をかけ過ぎてしまっていたのですから、これ以上入りづらくなる前に行きますよ。」


 ミライムさんが僕を優しく窘める。


 そんなミライムさんに僕は……


「はい!分かりましたミライム様。それでは不肖ながら僕がエスコートいたします。」


 僕の意見はこんなにも一貫性のないのかと自分でも驚愕したのち、ミライムさんの隣に立ち腕を組むように誘導する。


 ドキドキ!


 あまりの緊張でおそらく間抜けな顔をしていることだろう。


「なぜ変な顔をしているのですかフリード様?もう、早く行きますよ…えい!」


 素で返された!


 ミライムさんは会場のドアをゆっくりと開け、こっそりと入っていった。


「あ、ミライムさん待ってください。分かりました、行きますよ。」


 僕もミライムさんを追い入っていく。





「いやー、ミライム様本当に助かりました。本当にありがとうございました。」


 パーティーが終わった後僕とミライムさん気まずい雰囲気に耐えられずそそくさと会場を出て、近くのベンチに腰掛けた。


 僕たち二人が会場に入っていくと会場は大いに荒れた。


 僕たちを中心として荒れて行った会場はたくさんの方々の目に留まり、果てには皇帝にまでやってくるなどのとんでもない騒ぎにまで発展し、あまり気を失った経緯について理解をしていない僕の代わりにミライムさんがここまで遅れた訳について僕とミライムさんの不利益にならないような言葉を選びながら説明してくれたのだ。


「いえいえこちらこそ私の両親が失礼しました。」


「あれは僕のせいで起こったものですので気にしないでください。」


 ミライムさんが遅れた経緯について説明し終わった後に、僕はミライムさんのご両親がやってきて、何度も謝り倒したりなどパーティーどころではなくなってしまった。


 その後空気を悪くするだけ悪くしてしまった僕たちは学園関係者による“どうするんだ?この空気”といった幻聴を聞き、そそくさと逃げ帰ってきたのだ。


「今日のところは本当にありがとうございました。正直明日から学園に行くのがとても怖いのですがまた明日からもよろしくお願いします。」


 その言葉を最後に僕たちは寮に帰り明日の支度をしたのであった。




「フリード!今日、いったい何があったの私がどれだけ心配したのかわかっているの?」


 その日の夜母上に大目玉を食らったのはお愛嬌である。






「ふわわぁぁぁああああ」


 次の日の朝、大きなあくびをして朝早くに起床した、目を開けた瞬間に飛び込んでくる大量の情報量に頭を押さえる。


 昨日の反省を生かし、今日はトレーニングの時間を少し早め、昨日味わった入室した後に集まる視線を避けるために僕は一番に教室に行こうと試みた。


 時間のかかる外でのトレーニングではなく、今日は室内で筋トレをし、シャワーを浴び、制服に着替えて集合時間とあらかじめ教えられていた2時間前に部屋を出る。


「うーん。早く出過ぎてしまったかもしれないな。まだ少し暗いくらいだし、何か教室に時間の潰せるものがあったらいいけど。」


 寮を出て、一年間過ごす予定の教室を目指し整備されている寮から校舎までの道を行く。


「ん?」


 僕は歩いていく道の先の庭園に隠れている誰かの陰を見つけた。


「おかしいな。僕より早く寮を出た人がいたとしても変ではないけど、なんでロープと麻袋を持ってかくれているんだ?」


 小さな声でつぶやく。


 おそらくは新入生をを驚かして緊張をほどこうとしている先輩の粋な心遣いだなととらえた僕は驚かしに来たところを逆に驚かしてやろうと画策する。


 何も気づいてないふりをしてテクテク歩き道を通り過ぎたころ、隠れていたであろう人が飛び出してきた。


 その身のこなしは決して先輩からの悪戯とは言えない鋭いもので、まるでこれまで僕を襲ってきた暗殺者に似ていた。


 先輩だと思い、あらかじめ警戒していた僕は伸ばしてきた手を躱し、距離をとる。


「おい!貴様、一体何のつもりだ」


 僕に襲い掛かって来たのは男で学園の制服を着ておらず、目立たない地味な服を着ており所々に武器を隠しているようだ。


 男は避けられたことに驚愕を隠せないようで、狼狽えている。


「「き、貴様は!」」


 僕を襲ってきたのは町でお菓子屋さんの場所を聞いた20歳くらいの男だった。


「貴様この学園の関係者では無いはずだどうしてここにいる?」


 相手より早く動揺が解けた僕は強い口調で問いただす。


「チッ!」


 相手は僕に顔を見られたと知るや否や急いでそこから逃げ出した。


 帝都へ戻ろうとしているのだろう、学園都市の中央、噴水の場所へ向かって走っていく。


「おい、待て!」


 相手は身軽な外見の通り素早い動きで噴水のほうへ向かっていくものの、小さい時からビカリアさんを筆頭とした世話好きな人たちに鍛えられた僕に敵うはずもなく噴水の20メートル先で相手の前に躍り出る。


「クソ!気配は完璧に消せていたはずだぞ。1度だけでなく2度までもどうして俺を見つけることができるのだ」


「何を言っているのかは分らんが、姿を隠しきれてないにもかかわらずどうして見つからないと思った?」


「ほんの一瞬どんな奴がやって来たのか確認するために見ただけだ。一体どんなエルメだ!」


 その言葉を皮切りに男が襲い掛かってくる。


「風の刃!」


 相手の声と同時に刃を形作った風が僕に襲い掛かる。


「おっと」


 単調な攻撃が僕に当たるはずもなく少し避けると後ろでボガァァンと整備された石の砕ける音が静かな朝に響き渡る。


「死ねコラ」


 僕が避けると信じていたのだろう、避けた方向へ相手はナイフを持って襲い掛かってくる。


「嘘!」


 学園内で武器の携帯は認められているものの今日は特に必要なものはないと説明を受けていた僕は学園の警備力を信じて丸腰で来ていたのが災いして攻撃に打って出ることが出来ず防戦一方になってしまう。


 身軽な動きで僕を翻弄してくる相手の連撃に思わずうめき声が出てしまう。


 さらに時々魔法を放ってくるためひと時も油断することが出来ない。


「嘘だろ。思ってたよりもすごく強いんですけど」


 今のところは僕の目のおかげで相手の攻撃を完璧に見切っているが、ナイフだけではなく足を使った攻撃もしてくるため所々食らってしまい、その攻撃を受けた腕などがジンジンする。


 それでも僕を生け捕りにしようとしているのだろう致命傷になるそうな怪我をさせないようにしているように見える。


「おい、思ってたよりお前動けるようだな。お前貴族なんだろ。どこの出だ?その年でここまで動けるとしたら相当の名門なんだろ」


 相手は蹴った感触から僕が丸腰であることに気付いているのだろう。


 余裕な表情で話しかけてくる。


「初めて会ったときは、護衛がいると思ったが今のところいないとみるにさてはだれも引き連れていないな。」


 相手は冷静だ。


 ビカリアさんは嫌な予感がするが用事があるとか何とかで残りの人たちも母上についていって不思議なことに僕の周りには現在護衛がいない。


「グッ!」


 相手の蹴りを腹にくらい唾液を吐きながら吹っ飛んでいく。


「チッ!あまり眼鏡をはずしたくないのに」


 自分にだけ聞こえる声で呟き、攻撃の合間にそっと眼鏡を外す。


 僕が眼鏡を外したことを疑問に思ったのか相手はいったん距離をとる。


「おいおい俺が必死になって攻撃してるというのに大事そうにつけていた眼鏡を外すとは余裕じゃねぇか。そんなに俺は弱いか?」


「……」


 相手の言葉に耳を貸さず、相手の動作一つ一つを集中して観察する。


「もういいや……死ねよ」


 どういうことだ?


 何故急に怒ったのかは分からないが、相手は油断なく僕の首など急所を遠慮なくねらってきて殺す気満々のようだ。


 しかしながら眼鏡を外した僕には死角はない。


 相手のフェイントなどをすべて見切り、一撃で相手の首に本気のパンチを直撃させる。


 ――――――グギィ


 自分の拳に確かな手応えを感じた僕は急いで眼鏡を再び付け直し、他に仲間がいたりするのか辺りをキョロキョロ見渡す。


 グシャ!


 地面をける音を聞き反射的に首を向けると首を押さえた相手が噴水のほうへ駆けていくのが見えた。

「ざまぁねぇ、詰めが甘いんだよ!冥土の土産に教えといてやる。俺はある人さらいの組織で幹部をしてグビャァ…」


 あまりに突然なことであまり理解できてないが、男の体が何者かによって一瞬のうちに肉片と変えられた。


「すみませんフリード様。思ってたより手続きが長引いてしまい遅くなってしまいました」


 人さらいの組織で幹部をしているといった男の頭を一瞬で潰して現れたのはビカリアさんだった。


 ビカリアさんは目にもとまらぬ速さでやってきたと思えば片手で相手の頭の上から地面まで一気に押さえつけ瞬きしている間に肉片の塊にしてしまった。


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