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第六話 ベッドイン

「…そうなのよ、フリードったらそんなこともあってね」


「本当ですか、フフッおかしな方なのですね」


 そんな言葉を聞きながら視界のまぶしさに顔をしかめてしまう。


「あら、フリード起きたのね。あなたの買ったお菓子おいしいわよ。ほら早くこっちに来て一緒に食べましょう」


 何故だろう僕は今誰のかもわからないベッドに寝ている。

 スンスン

 そうか僕は今天国にいるのだ。

 と錯覚するほど甘くいい香りのする枕である。


「フフッ、おはようございます。フリード様何度か会ったことがあると存じますが、ミライム・スタローンです。今後とも長いお付き合いになると思いますが宜しくお願い致します」


 ミライムさんがスカートをつまみながら美しくお辞儀した。

 私服なのかラフな格好をしているミライムさんのあまりの美しさに僕の思考回路は完全にショートして固まってしまった。


 ……………バチンッ


 頭に強い衝撃が走る。

 母上が何かものを僕の頭に投げつけたようだ。

 母上の配慮に感謝しながら僕も立ち上がって挨拶を返す。


「……これはミライム様のあまりの美しさに固まってしまいました。フリード・ボルベルクです。僕のほうこそ今後とも仲良くしていただけると、これ以上の幸せはございません」


 僕は急いでベッドから降りて、膝を折り、騎士のような挨拶をした。

 事前に考えていた挨拶を使えなかったのは悔しいが、ミライムさんを見ているとそんな気持ちもなくなってくる。


 パンパン


 僕とミライムさんは体をビクッとさせて音のなった方向を見る。


「まずフリードはミライムちゃんにお礼を言いなさいよ。あなたが間違えて部屋の中に入ったにも関わらず急に失神したあなたの看病までしてくれたのよ」


 僕はどうやら毒見をしようと部屋に戻ろうとしたところあろうことかさっきまで緊張して入れなかったミライムさんの部屋にノックもせずに入ってしまったようである。

 そしてミライムさんを見た瞬間倒れたようである。

 どんなバカげた話だと思ったが、どうやら本当のことらしい。


「ほ、本当ですか!本当にすみませんでした。勝手に入ってきたうえに、図々しくも居座ってしまって」


 僕は膝を折っていた状態から土下座に姿勢を移し替えた。


「い、いいですよ。こんなことぐらい、大したことではありませんから気にしないでください」


『『なんていい子なのだろう』』


 僕と母上の考えは一致した。

 そして僕はこの子のためであるのであればたとえ命でも張って見せよう。

 普段では貴族としての自覚が強く、国のため領地のため不利になるようなことは考えず、考えはいけないと思っている僕でさえミライムさんの純白の精神には、気持ちが緩んでしまっているようだ。

 このままでは僕の世代でボルベルク家をスタローン家に従属させてしまいそうになってしまう。


「本当にありがとうございました。このお返しは後日必ず致しますので」


「え、そんないいですよ。私はいつかこの恩を返してもらって将来に還元するためにやってるだけなんでそのお礼は将来に回してください。それにさっき倒れてしまったばかりなのでもっと安静にしておいてください」


 ミライムさんが僕を静止させようとするが、甘えてしまえばどこまでも甘えてしまいダメな男になってしまうので、心を鬼にして扉から出て隣の僕の部屋に戻る。


「うわわわぁぁぁあああ!」


 僕はあまりの羞恥に布団の中に入って見悶えた。

 ミライムさんの性格を知っている僕には本気で言っているのではなく、僕に罪悪感を持たせないために行っていることが分かる。

 ホントはもっと優しい言葉をかけてくれようとしたのだろうけど、母上の手前やりにくかったのだろう。


 ボルベルク家次期領主として、甘えてばかりはいられえないので明日も早いことだし、まだ7時過ぎであるのに思い切って寝ることにする。

 一方隣の部屋では。

 出て行ったフリードを呆然と見ていたアリストと寂しそうに見ていたミライムが取り残されたのだった。


「ごめんなさいね、ミライムちゃん。フリードも嫌だから逃げ帰ったのではないのよ。あの様子から言うと、ボルベルク家の次期領主としてこれ以上甘えることはできないとでも感じたのだと思うのよ」


「そうだったのですか!私はてっきり勝手に運んで私のベッドに寝かしたことについて怒ったのだと思いました」


 ミライムが少し安心したかのように言う。


「大丈夫よ。フリードを育てたのは私、もしそんなことについて怒ったのだったら再教育が必要になりますからね」


 アリストがからうように言う。




 次の日僕は朝の4時に起きた。

 前の日にいつもよりも早く寝ていたため起きるのは早いが、ぐっすり眠ることが出来たためいつもに比べて寝起きがいい。

 朝早くに起きた僕は顔を洗いさっと自分で朝ご飯を作り、身だしなみを整えて日課のトレーニングに出る。

 今日は帝国学園初級の入学式があるため7時には校舎に母上と一緒に集合してあいさつ回り、9時になると入学式が始まるため、いつものようにがっつりとトレーニングが出来ないので早めに進めなければならない。


「そういえば僕がいなくなった後母上とミライムさんは一体どうしたんだろう」


 今更になってお世話になったにもかかわらず逃げてしまったという罪悪感に押しつぶされてしまいそうだ。

 そんなことを思いながら部屋を出て外へ出る。

 今日はビカリアさんたちがいないため、普段とは違うもののあらかじめ渡されていた重りを手足と頭の上につける。

 手足につけるのも動きづらくてしんどいが走っていくにつれて頭の重りが首に負荷をかけてしまうのだ。


 全力ダッシュを百メートル十本とオーソドックスなトレーニングを終え、シャワーを浴び終えたのはもうすでに7時半を回っており急いで身支度をして入学式に向かって準備を整える。

 入学式はパーティーのようなもので一着一着にとんでもない金額が掛かったであろうタキシードを身にまとう。

 僕の準備が終えたのは、それから30分経った頃だった。


 母上は時間に関して徹底するように教わっているので約束の時間に遅れるようなことがあってしまうと、普段からまじめで誠実な僕を本気で心配して過去に大変なことになったことがあったのだ。


「やばいよやばい!遅れてしまう。」


 そんなことを呟きながら走って部屋を飛び出していく。

 そして部屋を出た際に飛び込んできた陰にギョッとする。


「……これはフリード様おはようございます。あの後からお体は大丈夫でしたでしょうか?」


 そんなことを考えていると、突然ミライム様が部屋から出てきて動揺しながらも挨拶をいてくれた。

 ミライムさんもとんでもないほどの金額でできたであろうドレスを身にまとっているようだ。

 美しい!これ以上に美しいものはあるのだろうか?

 そんなことを最後に考えた後再び気絶したのであった。

 いったいどれほど時間がたったであろうか、僕が再び目を開けたのはミライムさんの部屋のベッドだった。




「……ん?このベッド見覚えがあるぞ。」


 クンクンと枕の匂いを嗅ぐ。


「この天国にいると錯覚させる匂いはまさか……」


「……あ、あの……フリード様……いくら私が自分のベッドに寝かせたとは言っても、さすがに匂いを嗅がれると恥ずかしいといいますか……決して嫌というわけではないのですが――」


 ミライムさんだ。

 顔を真っ赤に染めて恥ずかしがっている様子のミライムさんがいた。

 このベッドで失禁したら自害するな、たぶん。


「このベッドで失禁したら自害するな、たぶん」


「――ヘッ?…」


「もしかして声に出ていました?それは本当にお恥ずかしい限りです。勘違いしてほしくないだけなのですが、僕はこの6年間おねしょしたことのないので心配なさらないでください。」


 やっべーさっきちょっとちびりそうになっちゃった。


「僕入学式に行こうとしていたはずなのですが、今何時なのかおしえていただけますか?」


「今はもう9時過ぎでもうすでに式は始まっている最中ですね。」


「…えっ?もう始まってる?」


 ミライムさんは何でもないかのようにやるべきことをしなかったと言う。


「さすがに嘘でしょ。だって、だって……」


「本当です。」


 ミライムさんははっきりという。


 貴族であるものとしての役割を果たしてないと言う。

 そんなミライムさんに対して恩があるにも関わらず、冷静になれなくなるほどの焦りと怒りが沸々と湧いてくる。


「なんでミライム様は式に出てないのですか!あなたのご両親や国王様までこの式に来るというのに。公爵家なのですよ!あなたの行動1つ1つが注目されているのですよ。あなたは貴族の代表とも言っていい存在であるのに、どうして入学式に行かないという行動ができるのですか!」


 ミライムさんは頷きながら優しい笑みを浮かべて僕の話を聞いていた。

 そう言い切った後僕の頭はだんだんと冷静さを取り戻していく。

 冷静を取り戻した僕は言ってしまったことに対して後悔する。

 土下座して謝るそのことしか僕にはできないと考え、実行する。


「す、すみませんでした。」


 数秒後にミライムさんは口を開く。


「私が今やりたいと思っていることと、私が今やるべきことを天秤に計って、私はフリード様の看病をすることが、最も良いことだと思っただけです」


 ミライムさんは意識しているのだろう、努めて優しく僕に優しくささやいてくれた。


「本当にすみませんでした。」


 もう一度謝る。


「もういいですから顔を上げてください。」


 またもや優しくささやいてくれる。

 その様子は間違えを悔やんでいる罪人に罪を償うべく話しかける聖女のようだ。

 その後しばらく謝り倒しミライムさんが「もうやめてください。」といった頃に僕は謝ることを止めた。


「それでこれからどうしますか?一応心配してきてくれた私の両親やフリード様のお母様には私はフリード様の看病をしておくと伝えておいたのですが。」


「そうですね………僕のせいでもう今頃には国王様の挨拶や在校生の挨拶は終了している頃でしょうし。新入生の挨拶をする予定の僕とミライムさんがいないのなら今更行っても迷惑になるだけでしょうし………………………さぼりますか!!」


 さわやかな笑顔で提案する。


「一体何を言っているのですか、今からでも会場に行きますよ。」


 そしてバッサリと破棄された。


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