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第三話 移動中

 1時間程すると早すぎる休憩に入り何故か僕たちの乗っている馬車だけの馬がビカリアさんの判断で外されて行ってしまった。


「あの…」


「どうした?」


「ビカリアさんどうしてこの馬車の馬を外しているのですか?」


 ビカリアさんは困ったかのように「うーん」とうなってしまった。


「確かに馬がいなくなってしまったな~。(棒読み)よしフリード様が運んでしまえば、訓練にもなって丁度いいですね。さあ運んでください」


「さすがビカリアね、確かに馬車を運ぶことはいい訓練になるわ、さあ運びなさい!」


「ちょっと待って、それはさすがに飛びすぎでしょう。あと母上も‟さすがビカリアね“じゃ

ないでしょう、どうして止めていただけないのですか?」


 僕は必死に抵抗した。この世の理不尽に抗うため、そして自分の権利を守るため僕は自規模ルベルク家の当主になるであろうとする者の権利のすべてを使い抵抗した。


 そしてその抵抗は五秒も待たずに鎮圧された。


 現公爵婦人に成人もしていない僕が権力においてかなうはずもなく、そこで感情的になって暴れても、ビカリアさんの手によって1秒もかからずに無力化されたのであった。

 豪華な馬車優しく外に引きずり出され、馬車に腹回りを縛られて運ばされることとなった。

 引いてみて馬は歩いているだけなのにどうして休憩が必要なのだと思っていたが、うん休まないと体が死ぬ。

 確かに息は上がらない。だけど死ぬ。

 休憩ごとに母上に回復魔法をかけてもらっているが精神的にはとても疲れており今すぐにもこんな馬車ぶち壊して馬にまたがりながら帝都ダマスクスへ向かいたい。

 こんな未来の公爵家の人間にあってはならないことをしたのであったが、5日ぐらいするとさすがに精神的に無理が来て”お仕置き?“は終了した。


 今回はたまたま商人などに会うことはなかったのだが、もしあっていたら周りの馬車は馬が引いているにもかかわらず一番豪華な馬車のみが人が引いているのでボルベルク家が変態貴族認定されていただろう。

 そこからは今まで運んでいた馬車の中で優雅な時を過ごしてきた。


「ビカリアさんよく考えてみれば1度も魔物や盗賊と接触してませんよね?」


「まあそうですね」


「‟まあそうですね“じゃないでしょう。いくら何も出てこないといってもさっきから何回馬車から出ていってるんですか?」


 今まで気にしていたなぜビカリアさんが一定時間すると走って出て行っているのか問いただすと。


「あら、フリード知らなかったの?さっきからビカリアは馬車の進行方向にいる魔物や盗賊たちを排除しているのよ」


「え、嘘。いやいや、さすがのビカリアさんといってもこんな数分で遠くまで行きかえりするだけならともかく魔物などを倒すことは、無理があるでしょう」


 ‟信じられないなあ~“‟嘘ついてんじゃねえよ”といった顔をしていると…


「フリード様、貴方はまだまだ基礎訓練の段階ですので、まだまだですが、あと5年も私の訓練に耐えきることが出来たのなら、必ず出来るようになるとお約束できますし、これからの帝国学園の環境次第ではもう少し早く出来るようになると思いますよ」


 ビカリアさんが何でもないかのように恐ろしいことを言う。


「え、あのビカリアさんのトレーニングで8年もかかるのですか?」


「あら、フリードさっきの話でもう出来ることを認めたの?」


「それとこれとでは別の話ですよ。あのビカリアさんの訓練ですよ!出来るにしてもあの訓練をしないとできないのならば、いったい何人の人が出来るようになるのですか?」


 母上が揚げ足を掬うようなことを言うので、うっかり大声を出してしまった。


「私の知っている範囲では結構の数がいますね。しかしそのほとんどが私と同じ軍部の幹部ですから。しかしテンザン様もこの程度のことは、朝飯前のはずですよ」


 さっとビカリアさんがびっくりすることを言う。


「父上ですら出来るのですか!ということは本当に相当の数の人が僕の想像を超えるほど強いのですね」


「フリード!‟父上ですら“とは、何ですか。フリードは知らないかもしれないけど、テンザンは今までとんでもないくらいの努力をしているのよ。なんでテンザンに対する評価が低いのかは、分からないけど今の言葉はあの人の妻として聞き捨てならないわ、訂正しなさい」


 さっきまでおしとやかだった母上が“有無”を問わない勢いで突然怒ってきた。


この間本気で怒られたことに比べると全くとっていいほど迫力がないので本気ではないことは分かっているのだが、話しているとき所々見える悲しげな顔から推測するに僕が父上を軽く見ていることに対して悲しく思っているのだろう。


このような母上の表情を見ているととても申し訳なく感じてしまう。


「す、すみませんでした母上。あまり訓練をしているイメージがなかったので。今聞くことべきでないことであることは承知なのですが父上が必死に努力しているとは、本当のことなのですか?今まで稽古は何度もつけていただいたことがあるのですが、修行しているところは見たことがないため、気になったのですよ」


 僕がさっき気になったことを質問する。

 父上は基本的に屋敷の書庫で仕事をするか、ほかの貴族に招待されたパーティーに出席するか、城に参上するかであまりというか全く訓練などをしているところを見たことがないのだ。


「テンザンはね、大抵朝子供たちよりも早くに起きてからするのと、兵士たちがさぼってないかどうかの視察のときにしっかり汗を流しているわ」


 このような会話をしながらを僕たちを乗せた馬車は帝都ダマスクスへと向かっていったのっであった。




 2日後


「やっと着きましたね。母上、ビカリアさん!」


 興奮を隠せない顔で同じ馬車に乗っている2人に呼びかける。


 今回が初めての訪問というわけではなかったが、これから通う学園というキーワードが僕を8日間の疲れを吹き飛ばす。


 この8日間は、とてつもなくしんどく何度も逃げ出したいと思ったほどだ。


 まさか最後の2日間でいきなり凄腕の暗殺者に襲われ、返り討ちにしたもののビカリアさんが軽くない負傷をし、そこからは僕が襲ってきた魔獣と戦うことになり、最後の日何故かドラゴンが、襲い掛かってきてとうとう僕のエルメが、覚醒して退治したのであった。


 そんな夢を見たとビカリアさんにだけコッソリ教えると、「たとえ私がけがしたとしても、他の馬車にきちんと戦力があるので、決して戦ってはいけませんよ」と過保護気味な反応をされてしまって、反応に困ってしまった。


 それはともかく、僕たちは9日かけて帝都ダマスクスへ着いたのであった。

 魔法がなくては絶対に作ることのできないであろう高さ20メートル幅2メートルの壁が永遠と続いており、世界一の大国という名に恥じない立派さだ。


「フリード様まだ門に到着するまで20キロほどありますよ。私はさっき走って確かめに行きましたが、アリスト様はわけのわからない顔をしておられます。新鮮味が薄れるのでもう少し近づいてから言ってくださいよ」


 ビカリアさんがこれから起こることを想像し、心を躍らしている僕に水を差す。


「フリードは、これから5年間、上級にも通う予定だから8年間ここで生活することになるのよ。たとえさみしくなっても勝手に帰ってきちゃだめよ」


 母上が急に身に覚えのないことを言い出す。


「たとえさみしくなってもテンザン様もアリスト様もよく城に通いますし、長期休暇に入るとボルベルク領へ戻ることもできますし、8年間全く会えないというわけではないですし、むしろよく会えるのではないですか?」


「いやいやビカリアさん僕はたとえさみしくなったとしても勝手に帰るほど馬鹿ではありませんし、そこまでさみしがり屋でもありませんよ」


 そう言うと母上とビカリアさんが同時に驚いたような顔をする。


「どうしたのですか?2人とも。まさか僕がそんなにさみしがり屋だとおもったのですか?もう10歳にもなっている僕に!」


「えr・・・違うの!私たまにあなたが‟会いたいよー、早く会いたいよ“って寝言を言っているのを何度か見たことがあったから、てっきり家族に離れ離れになった夢を見て、さみしくなったからだと思っていたけどもしかして違ったの?」


 そんな…


この完璧な男の子である僕に対して一体何を言っているのだと、疑問に思っていると――


「私も聞いたことがあります。それ以前によくメイドたちが話しているのを聞いたことがありますし、周知の事実かと思っていました」


「帝国学園に行く道中で、初めて知ることが多すぎるような気がするのですが、そろそろ母上たちも外壁が見えてきた頃ではないのですか?」


 いつの間にか時間がたってしまっていたのかだいぶ近くになっているようだった。


 そして門番の兵士たちもボルベルク家の馬車があるということに気が付いたのか、慌てて受け入れる準備をしているかのようだ。


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