第6話:魂の銃と裏切りの天使――神は本当に味方か?
「“魂を弾丸に換える銃”だと……?」
俺はその銃を手に、教会の地下で静かに問いかけた。
銃の銘は《リベルタ》。
イタリア語で「自由」――裏社会の人間にとって、最も皮肉な言葉。
「発射条件:魂の契約」
銃の側面に、そう刻まれていた。
魂と引き換えに撃つ一発。
それは“概念”を貫通する、理そのものを壊す力。
「混沌の銃……これが、俺の生き様ってわけか」
俺は契約に指をかけかけて――躊躇した。
代償が、あまりに重すぎる。
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「ドン、来てください!」
リゼリアが走ってきた。血に濡れ、震えていた。
「ヴィスコンティが……消えました!ルチアーナも!」
その言葉に、嫌な予感が走った。
俺たちは瓦礫を乗り越え、教会の裏へ回る。
そこには、折れた聖騎士の剣と、焼け焦げた床――
そして、“神紋”の儀式痕が残っていた。
「……連れ去られたか。いや――」
「自ら、行ったのかもな」
俺は呟いた。
確かにヴィスコンティは忠義の男だ。だが同時に、危険なまでに“力に忠実”でもある。
そして、リゼリアの表情が、どこか曇っていた。
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「リゼリア。お前、知ってたんじゃないか? 騎士団の作戦を」
「……どうしてそう思うの?」
「“最初から待ち構えてた”ような動きだった。お前の回復魔法は遅れたし、情報も断片的だった」
「……ドン、私はあなたを守るために動いた」
「嘘だ」
俺は静かに銃を向けた。
「俺たちの世界で、嘘をつく奴は“裏切り者”と呼ぶ。そして裏切り者に下す裁きは、一つだけだ」
リゼリアは沈黙する。
だが、微かに笑った。
「……さすが、マフィアのドンね。だけど、その銃――まだ契約してないでしょ?」
「……ああ」
「じゃあ、今は撃てない」
リゼリアは“神紋”を解放し、教会の上部から飛び去った。
その背には、かつて俺に仕えた“翼”が宿っていた。
「……天使?」
「いや、“堕天使”だな」
ルチアーナが戻ってきていた。
服は破れていたが、目に迷いはなかった。
「ヴィスコンティは、リゼリアについて行った。忠義ではなく、“真実”を求めて」
「……なるほど。なら、奪い返す。力づくで」
俺はそう呟き、《リベルタ》の契約に指をかけた。
「問う。魂の価値は何か?」
銃が俺に問いかける。
「家族を守るためなら、命など安い」
契約が成立する。
黒い炎が銃口からあふれ、《リベルタ》は世界の理に干渉し始めた。
――そして、俺の心に一つの影が差した。
(なぜ、俺はこの世界に転生した? 誰が、何のために?)
ヴァルトの言葉、“実験体”、そして“他の転生者”。
ルチアーナが呟いた。
「ドン……あなた、まさか“観測されてる”って思わない?」
「……観測?」
「この世界は、“神の舞台”じゃない。“誰かの実験場”なんじゃないの?」
世界の真相に、少しずつ近づいている。
そしてその先には、“神”さえも超える何かが――存在する。