第4話:聖騎士の粛清令!ファミリー壊滅の危機!?
聖都を照らす月が、不吉な光を放っていた。
「……“神聖騎士団”が動いた、だと?」
俺は報告を受け、思わず口元を歪める。
聖都の治安と秩序を司る、国家直属の戦闘組織。
いわば、“表の圧力”の象徴だ。
「ドン……奴らが嗅ぎつけるの、早すぎる」
「まぁな。だが――ここで終わるようなら、最初から裏に生きる資格なんざねぇ」
と、そこへ。
「……あの、ドン」
ヴィスコンティが、珍しく戸惑った様子で俺を呼んだ。
その後ろには、ボロ布をまとった小さな影。
「こいつ、スラムで拾いました。……妙に、危ない」
•
その子供は、少女だった。
だがただの少女じゃない。
片目を眼帯で隠し、背中には“爆薬”らしき筒。
服には焦げ跡、手には金属製の義指。――いかにも物騒だ。
「……なにか、用? ドン?」
声は無感情。まるで“人形”のようだが、目の奥にだけは鋭い光が宿っていた。
「名前は?」
「ない。人に呼ばれる資格、ないから」
「資格なら俺が与える。今日からお前は――“ルチアーナ・ヴィスコンティ”だ」
「……なぜ?」
「俺のファミリーになるからだ」
少女は沈黙する。そして――
「……なら、爆弾作る。何個でも」
こいつ、壊れてる。だが――だからこそ“使える”。
「よし、これでファミリーは三人。剣、頭、爆発――」
「あと“毒”も作れる。ネズミの死体あれば」
「最高だな」
リゼリアは絶句していたが、俺たちは真剣だった。
この国でのし上がるには、汚れ役が必要だ。
聖騎士団が迫るこの状況で、戦力の強化は必須。
だが、それだけでは足りない。
•
その夜。教会の屋根に現れた、黒いフードの影。
「……懐かしい匂いがすると思えば、やはり“日本人”だったか」
突然現れたその男は、俺を見て不敵に笑った。
「おい、誰だお前」
「俺か? ……そうだな、“元・東京湾の帝王”とでも言っておこうか。君と同じ、転生者だよ」
「……!」
「今はこの国で“情報ギルド”のトップをやってる。君の動きが面白すぎてね、ちょっと挨拶に来た」
転生者の……先客。
「一つ、忠告をしよう。神聖騎士団が本気になったら、君のファミリーなんて一夜で消し炭だ」
「それでも俺は、“家族”を守る。命を懸けてな」
「――ハッ、いい目をしてる。気に入った。困ったら声をかけろ、“ドン”」
男は煙のように姿を消した。
新たな戦力。
新たな敵。
そして――“同族”の登場。
異世界の裏社会は、ますます混沌へと傾いていく――!