表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/36

第3話:異世界の街でファミリー設立!裏取引から始めよう

「――拠点が必要だな」


俺はそう呟きながら、聖都の外れにある廃教会を見上げた。

石造りの壁はひび割れ、ステンドグラスは割れ、風が内部を吹き抜ける。だが――骨組みはしっかりしてる。


「……ここが、俺たちの“ファミリー”の本拠地になる」


ヴィスコンティ――例の白髪の少年は、無言で頷いた。

リゼリアはと言えば、「ここは聖なる場所です! 勝手に使っては……!」などと抜かしていたが――


「だったらお祈りでもしてろ。俺たちは現実を変える」


「ぐっ……!」


教会の巫女であるリゼリアにとって、教会は“象徴”らしい。

だが、象徴だけじゃ人は生きていけない。

俺は知ってる。金、血、交渉、そして――信頼。

それが“裏の掟”だ。


数日後。

ファミリーは廃教会を拠点に、裏取引の準備を始めていた。


「ドン、情報屋との接触は成功。盗品の買い手も見つけました」


「よし。代金は金じゃなく“魔導水”で受け取るようにしろ」


「魔導水、ですか?」


「この国じゃ水は教会の管轄だ。魔導水ってのは、一般人には出回らねぇ高純度の魔力資源――つまり“規制品”だ」


「……闇取引の通貨に?」


「そうだ。この国のルールに乗っかってても、いつか首を締められる。だから最初からルールの外で動くんだよ」


これはもう“異世界もの”じゃねぇ。

“異世界ビジネス”だ。


数時間後、最初の取引が完了した。


場所はスラムの裏道。

相手は商人ギルドを追放された情報屋と、腕利きの錬金術師。

リゼリアが震えながら監視する中、ヴィスコンティはしっかりと取引の警戒にあたっていた。


「お見事です、ドン。まさか……この世界で、そんな風に動けるとは……」


「この世界にねぇなら、作ればいい。ルールも市場も、ファミリーもな」


俺は“魔導水”の入った小瓶を手に取り、陽の光にかざした。

青く光る液体。1本で、王国兵の給料半年分。だが――


「……これはまだ“導火線”に過ぎねぇ」


この世界の“裏社会”は、まだ形すらない。

だが俺が来たからには、いずれは“法”すらもファミリーの都合で動くようになる。


裏取引、地下経済、情報網――


全部まとめて、支配してやる。


「……異端者の匂いがするな」


その夜、聖都にて。

銀の鎧に身を包んだ男が、空を見上げていた。


聖騎士団・団長、ヴァルト・エインズ。

かつて勇者が消えた日、現場にいた“最後の証人”の末裔。


「もう一度、我らが神の加護なき力を振るう者が現れたのなら……即刻、粛清対象だ」


その目は、明確な“殺意”を帯びていた。


異世界の裏社会。

第一歩は踏み出された。

だが、ドンを狙う“表の刃”もまた、動き始めていた――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ