エピローグ:終わりなき旅の果てに
夕暮れのアクリアは、かつての混沌を隠すかのように静寂に包まれていた。
街灯の柔らかな光が石畳を照らし、風が遠い記憶を運ぶ。
しかし、その静けさの奥には、まだ解けぬ影が潜んでいる。
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アルドは街のはずれ、かつて戦いの火種となった場所にひとり佇んでいた。
手にした銃は錆び付き、戦いの痕跡は風化しつつあるが、彼の心には消えぬ傷が残っていた。
「俺たちは何かを守ったはずだ。けれど、何かを失った」
彼の声は静かに、しかし確かな痛みを帯びていた。
過去の自分と向き合い、幾度も選択を迫られた日々。
そのたびに光を目指し、闇を拒み続けた。
だが、今振り返れば、その光は決して完全なものではなかった。
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ミレイアは研究室の窓辺で、日没の赤い空を見つめていた。
感情の深淵に潜り、理論と実感の狭間で揺れ続けた彼女の瞳は、どこか遠くを見ている。
「感情は美しく、残酷で…それでも私たちを生かすもの」
彼女は誰にも言えぬ孤独を胸に秘めながらも、確かな前進を信じていた。
しかし、彼女の研究は終わりなき問いの連続であり、答えなき世界の象徴でもあった。
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クロノは静かな異空間の裂け目に立ち、果てしない虚空を見つめていた。
創造主の存在を知りながらも、自らの意志で世界を選ぶことの難しさを痛感する。
「俺は、意味を作るつもりでここにいる。だが、その意味が揺らぎ続ける限り、安息は遠い」
彼の声は虚空に消え、返事はなかった。
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三人はそれぞれ別の場所で、同じ「答えなき現実」と共に生きている。
かつての敵も味方も、その境界は薄れ、やがて誰もが孤独な存在であることを知った。
理性と情動の均衡は、完全な調和ではなく、常に崩れ、また紡がれる不安定な糸。
それはまるで人間の心のように、複雑で、時に残酷だった。
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「勝利も敗北もない。ただ、続く選択の連鎖」
アルドは拳を握りしめ、未来を見据えた。
だがその瞳には、一抹の哀しみと疲労が隠せなかった。
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夕暮れはやがて夜に変わり、街は再び静寂に包まれる。
星の輝きは遠く、けれど確かに存在し続けている。
光と闇、その狭間で揺れる世界。
それは終わらない旅のように、また新たな一歩を促すのだった。
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