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第27話:新たなる均衡
裂け目がゆっくりと閉じていくなか、アクリアの空には静かな夕暮れが広がっていた。
街は戦いの傷跡を残しつつも、確かな再生の兆しを見せている。
「これで終わりじゃない。ここからが、本当の始まりだ」
アルドはそう呟きながら、未来を見据えた。
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ミレイアは実験室でデータをまとめながら、感情の理論に新たな仮説を立てていた。
「感情は単なる生理現象ではなく、社会の構造そのものを映し出す鏡なのかもしれない」
彼女の視線は深く、遠くを見つめている。
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クロノは異空間で見た“創造主”の痕跡をもとに、街の未来像を模索していた。
「この世界は誰かに創られた実験場だとしても、俺たちがそこに意味を与える」
彼の決意は固い。
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理性派と情動派は互いに歩み寄り、対話の場を設けた。
対立は残るが、共存の道を探る意志が生まれた瞬間だった。
「違いを認め合うこと。それこそが新たな均衡の鍵だ」
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しかし、闇は完全に消えたわけではない。
裂け目の残滓が、ひっそりと新たな亀裂を広げていた。
「終わりは、常に新たな始まりの影を伴う」──クロノの心に、静かな警鐘が鳴る。
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