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第18話:崩壊の序章、選ばれし者たち

アクリアの夜空が、確かに変わり始めていた。


《感情回復現象》の拡大とともに、都市の秩序は音もなく崩れ出す。



中央均衡都市の上層部、《上層評議会》の大広間。

光のスクリーンに映し出される膨大なデータを前に、クロノ=エイスが立っていた。


「事態は深刻だ。エラッタの活動は、単なる反乱を超えている。

彼らは“記憶の墓標”の起動を企て、我々の社会の根幹を揺るがそうとしている」


副議長の冷たい声が響いた。


「我々は、もはや制御不能か?」


クロノは言葉を濁した。


「まだ、希望はある。選ばれし者、つまり“純度の高いソフィオス”だけがこの崩壊を食い止められる」



アルドたちの前に、突如アクリアの秘密部隊が現れた。


「お前たちも選ばれた者の一人だ。

“感情の汚染”を受けずに、理性の盾となれ」


命令は冷たく、しかし彼らの目はどこか虚ろだった。



ルチアーナは決断した。


「私たちは“純度の高い者”じゃない。

でも、感情を取り戻した者として、この都市の未来を選ぶ権利があるはず」


ミレイアも同意した。


「選ばれし者たちの正義が間違っているなら、私たちがその歪みを正さなければならない」



一方、エラッタの拠点では、ミレイアが昔の友人たちに囲まれていた。


「記憶と感情は、人間の魂そのもの。

これを奪うことは、存在の否定に等しい」


彼らの目に浮かぶのは、決意と悲しみ。


「私たちは失敗作などではない。

“生きる”ことの意味を、この世界に示そう」



アルドは懐中時計を握り締めた。


「俺たちは選ばれた者かもしれない。

でも、その選択を押し付けることはできない」


空を見上げると、光の幕が再び揺らぎ、ほんの一瞬だが、満天の星空が見えた。


「この空の向こうに、俺たちの答えがあるはずだ」



都市は今、二つに分かれていた。


一つは理性に支配された安定の秩序。

もう一つは、感情に抗いながらも生きようとする混沌。


その間で揺れる世界。


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