表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/36

第17話:記憶の墓標と、狂い始めた空

アクリアの夜は静かに、しかし確実に変わり始めていた。


《思考中枢塔》で起きた異常反応は、単なる技術的な故障ではなかった。

むしろ、それは“心の揺らぎ”そのものを象徴していた。



クロノ=エイスは中枢塔の窓から、光の幕に覆われた空を見つめていた。


「理性の秩序を揺るがす感情の逆流……まさか“記憶”が再び蘇るとはな」


彼の瞳は冷たく光るが、その中には不安が滲んでいた。



ルチアーナはミレイアとともに、廃棄された《空白区画》で語り合った。


「私たちは、あの時何を失ったの?」


ミレイアは目を伏せた。


「記憶だ。

選択しなかった未来の記憶。

“痛み”を選んだことへの後悔。

それでも、それが私たちの《人間らしさ》だ」



一方、アルドはナジーム、ルチアーナと共に、“感情回復現象”の広がるアクリアの街を歩いていた。


人々が突然、笑い、涙し、怒りを露わにする。

その光景は、まるで封印されていた“魂の目覚め”のようだった。


「これが……人間の本質か」


アルドの手には、懐中時計が握られていた。

それはユリウスからの贈り物であり、“時間の象徴”であった。



クロノの元に、《上層評議会》から緊急報告が入る。


「反乱分子“エラッタ”の活動が活発化。

彼らは《記憶の墓標》を再現しようとしている」


“記憶の墓標”――それはかつて、感情と記憶を完全に封じるための禁忌装置。

それを動かせば、アクリア全体の記憶が再構成され、“理性の秩序”は再び強制されるだろう。



ルチアーナは思い詰めていた。


「もし、私たちがこのまま“感情”を取り戻してしまったら……

この都市は崩壊する。

でも、感情を殺した社会に未来はあるのか?」


ミレイアは静かに答えた。


「答えはまだ、誰にもわからない。

でも、“心”を選んだ者たちが、未来を作るんだ」



その時、空が裂けるように光の幕が揺らぎ、星のような点が見えた。


それは、アクリアの支配者たちが最も恐れていた――


“本当の空”の復活の兆し。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ