《預言者燃ルコトナカレ》第一話
冷やし中華は飲み物、今回から投稿始めます。よろしくお願いします。
日本の少子化は止まらず、ついに高齢者の割合は7割を超えた。
人口は五千万人を切り、日本のGDPは墜落する航空機めいた
右肩下がりのグラフを叩き出している。
全国各地で連日葬式が開かれ、霊柩車を見ない日はない。
街には喪服姿の失業者が溢れかえり、むせるような線香の匂いの中、
私は車でとある研究所へ向かっていた。
「唯一の協力者である君と、あの研究の成果を祝いたくてな。量は少ないが酒もある。」
そう話しながら車を運転するのは私の義父である谷中正蔵である。
「協力といっても、少しデータを提供しただけです。それに唯一とはどういうことですか?
あそこに居た助手たちはどうなったのですか。」
事実、私は確かにデータを渡したが、それは特段貴重なものでもなく
私は役所勤めであるためそれを容易に手に入れられたのだ。
「確かにデータの中身は研究とは関係なかったが、それでも君の協力がなければ
私の研究は進められなかったのだ。」
この翁は時々耄碌したかのように話すことがある。
頭脳は確かなのだが、認知機能の低下はそれとは関係していないのかもしれない。
「唯一とはそのままの意味だ。彼奴ら、共に科学の信徒でありながら
その信仰を仏陀なる邪神に僅かな金で売ってしまった。」
日頃温厚な義父が、珍しく感情を露わにしている。
どうやら博士が雇っていた助手たちは、政府の手先だったらしい。
日本政府の仏教との癒着は酷く、博士の研究は異端認定を受けていたと考えられる。
そのまま半時程して博士はとある山の麓で車を止めた。
ここからは万が一の追跡を避けるため
歩きで進むそうだ。
だが私達はブッディストらの異常な異端への執着を舐めていた。
私達の進む道に残る足跡を凝視しながら、静かに、そして素早い動きで
何者かが我々を追跡していた…。