運命の日①
座敷わらしの感じた妙な気配とはうらはらにその家は酷く"平凡"だった。今まで幾度となく住み着いてきた家と何ら変わりのない酷くつまらない家だったのである。
「おっかしーのぉ、わしの勘ではこの家から妙な匂いがプンプンしたんじゃが」
座敷わらしは自分の勘が外れたのを不思議に思うも、まぁそういう事もあるかと納得し、先程家捜ししている時に見つけた本棚に向かう事にした。今回の家はありふれたつまらない家だったが、家主が収集家なのか数え切れない程の本を所有しており、それだけは期待できそうだなと思っていたのだ。
「おっ!週間少年ニャンプーがある!まだわし今週号見てなかったんじゃ!」
「おぉ!こっちはわしがどうしても読みたかった幻の百合漫画!!」
「それにこっちは、わしが昔諦めた過激過ぎて禁書になった殺人実録書じゃないか!」
「ここの家主はなかなか趣味が良い奴らしいのぉ!」
宝の山に座敷わらしはにっこにこだ。
探せば探すだけ読みたい本が増えて行く。あの時感じた妙な気配はこれだったのかとこの家を選んだ自分を褒め讃えたい気分だ。でもまずは、この宝の山から本日の供を探さねばならない。あれもこれもと目移りをして、ふとある本に目が止まった。
「ん?この本は…」
背表紙も中身も真っ黒の本だ。
パラパラっ
中をめくると、【××××××】
「汝その身を捧げよ?なんじゃのこの本、ッッツ!?」
ゴゴゴゴゴッ
その言葉を呟いたと同時に本棚が動き出し、今まで隠されていた扉が出現した。
「ほぉ〜、こりゃ見つからんわけじゃ」
こんなギミックが隠されていては見つかるものもみつからない。ギミックの要となった本を戻し、
やはりわしの勘は間違ってなかったのだとその事実に自信を取り戻した座敷わらしはふと、
「そういえば、なんでわしあの文字が読めたんじゃ?」
そうだ。おかしい、何故読める?なぜ文字だと認識した?あきらかにおかしい、何百年と生きてきたがあんな文字は見たことも聞いた事もない。異常だ。まさか、たかが人間が妖怪に干渉する術を持っているとでもいうのか?いや、ありえない。同族が関わっているのか…?思えば、最初からおかしかった。わしの勘はハズレるはずがないのだ!"平凡"だと思った事こそ"非凡"だったのではないのか?ぐるぐると思考が巡り、ある可能性が浮かび上がる。まさか…、まさかこのわしをおびき寄せたのか?
ゾッ
なんという人間だ。わしはこんなにも可愛いが立派な"怪異"だぞ!?何百年も生き続けているのは伊達じゃない。そんな相手に喧嘩を売って無事でいられると思うのか!?しかし、しかし現にわしはここにおびき寄せられた。
ゾクゾクゾクッ///
面白い。面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い面白い!!!かつてこんなに面白いことがあっただろうか。この招待喜んで受けよう。
好奇心旺盛な座敷わらしは、
ガチャッ
「招待ごくろう。ちょうど退屈してたんじゃ♪」
扉をくぐった。