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異世界ニルヴァーナの物語

オークに捕まった転生女剣士の末路…

作者: HOT-T

 アスカは激怒した。

 かの悪辣卑猥な種族オークを打倒せねばと決意した。


 彼女は交通事故であっさり死んでしまい気づけば異世界に転生していた。

 各種身体能力などがアップしていたので彼女はそれを活用し冒険者となり旅をしていた。


 ある村で世話になった時、初老の男性が嘆いているのを目にした。

 どうしたのかと事情を聞くと彼はこう言った。


「1週間前に村に来たオークが娘を連れて行ってしまった」


 オーク。

 粗雑で乱暴、そして他種族のメスを捕まえ手当たり次第に欲望の限りを尽くすという種族……というのを転生前の本で読んだことがある。

 

 この村には定期的にオークがやって来て娘を連れて行ってしまう事があるという。

 アスカは激怒した。娘を救い出す約束して剣を片手にオークの集落へと向かったのだ。

 ただ、あまりにも頭に血が上っていた為に男性の言葉を最後まで聞いていなかった……



「くっ!まさかオークがこれほど強いとは」


 オークの集落に突入したアスカだが結果として割とあっさり捕まってしまった。

 腕に自信はあったがオークもなかなかに強かった。

 単に武器を振り回すだけかと思ったが『武術』も習得しているのだから恐ろしいものだ。

 こんな奴らに襲撃されたら村人たちも為すすべなく娘を連れて行かれてしまうのだろう。


 今、アスカはだだっ広い部屋で椅子に縛り付けられていた。

 何度か暴れて脱出を試みるがびくともしない。

 そうこうしているとオーク達が集まってくる。


 これから起こる事を想像すると思わず涙が溢れてきそうになる。

 まさか異世界でこんな目に遭うとは。


 オーク達は彼女を遠くから眺めながらニヤニヤしたり何やら話し合っている。

 どうやら何かの『順番』を決めているらしい。


(あれは、きっと誰から私を慰み者にするかって決めてるんだ!!)


 順番決めをしているオーク達は10人。

 中には鎧を脱ぎ始めている者もいる。

 もはや地獄しか想像つかない。


 だが弱音など吐いて溜まるか。アスカは決意を新たにする。

 するとどこからか太鼓をたたく音が鳴り響きさらに複数のオークが部屋に入ってくる。

 もはやこれは公開処刑だ。


「負けるものか!わたしは絶対負けないんだから!!」


 そして……


□□


「………………………………」


 目の前で起こっている出来事に、アスカは心を虚無にしていた。

 音楽に合わせて上半身裸のオーク達が順番にアスカの前で踊りを披露したりポーズを決めている。

 中にはバラを口に咥えているものまで居てしかも唇から少し出血していた。


「えっと…………何これ?」


 あまりの無反応っぷりにその様子を見ていたオーク達が動揺した様子を見せる。


「ちょっと、君。今のオーク達を見て何も思わなかったのかい?」


 年配と思われるオークが近づいて来て声をかける。

 随分と柔らかい物腰だとアスカは驚いた。


「え?」 


「こう、感情が揺さぶられるような、このオークがいいなぁとかそういうのは無いかな?」


 アスカは困惑した。


「えーと、確認だけどこれは、何?」


「何ってオークの婚活。求愛だよ」


「えぇぇぇ!?」


 アスカは更に困惑した。

 慰み者にされる流れだったはずだが何故か婚活が始まっている。

 どうも年配のオークによると剣を持って突撃してきたアスカを見て『婚活の申し込みに来た女性』と思ったらしい。オークの風習的にはそういうものらしい。

 そこで若い独身オークを集めてアピールをさせていたわけだが……


「いや、あんた達って村を襲って娘を連れて行くような連中だからそんなの必要ないでしょ!!」


「何だって!それは犯罪じゃないか!!それは放っておけない。どこの村が襲われたんだい?」


 何だか思っていたのと違う。

 アスカはまだまだ困惑していた。

 とりあえず先ほどの村の事を話してみると……


「えーと、それは僕の息子の嫁だよ!息子とは幼い頃からの仲でね。あっちのお父さんが『娘はやらん』とかいって結構もめてね。結構ドラマチックだったよ」


「えー……あっ、でも確か他にも連れて行かれた娘がいるって聞いたけど」


「ウチの集落とあの村は昔から交流があってね。だから集落間で恋に落ちて結婚することが多いのさ」


 アスカは凍り付いた。

 つまりは自分の早とちりだったわけだ。

 いや、もしかしたらそうやって油断させておいて気を許したところを襲ってくるのかもしれない。


「でもこうやって縄で縛っているじゃない!!」


「だって君があんまりにも暴れるからさ。もしかして『バーサーカー茸』でも間違って食べたのかもしれないと思ったのさ。だから拘束していたんだ。ごめんよ」


「えーと……」


「オークは気の強い女性が好きでね。だから君みたいな女性が申し込んでくるとこうやってアピール大会を始めるのさ」


「いや、わたし申し込んだわけじゃ……」


「よーし!第1次審査ではピンと来なかったらしいから第2次審査をはじめよう!!」


「いや、だから話を……」


「第2次審査は個人面談。アピールタイムは各自10分だよ。この気が強いヒューマンの女性のハートを射止めるのは誰か。若きオークの戦士達よ、奮戦せよ!!!!」


 歓声が沸き上がる。


「話をきけぇぇぇ!!!」


 結局、第2次、第3次審査を経てアスカは純朴そうなひとりのオークを選ぶことになるのだった。


「思ってたのと違うぅぅぅぅぅっっ!!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 吹いたW 予想斜め上でワロタ
[一言] 結局、選んだんだ(笑) 主人公が酷い目に遭わなくて、良かったです。
[良い点] 口にバラを咥えるオークは笑いました。 オーク界にも婚活はあるのですね(笑) 結局一人のオークを選んでしまったアスカ、幸せになれるといいですね。
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