知らない男
百物語三十話になります。
一一二九の怪談百物語↓
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学生時代に友達を誘って「コンパ」に行った時のことだ。
男5人、女性5人のよくあるタイプのコンパだよ。俺たちは約束の日にカラオケボックスへ集まると、みんなでワイワイしながら歌を歌ったり、食事をしたりした。
特に珍しくもない普通のコンパ。しかし、その日のコンパは変なことが度々あった。
店員がなぜか「11」人分の水とおしぼりを持ってきたり、時々女の子たちが変なこと言うようになったり…
「あのスーツ姿の男の人は誰?友達?」
俺たちは学生であり、メンバーにスーツを着た奴なんていなかった。
「ねぇねぇみんな!今日はビデオカメラ持ってきたんだ!」
コンパが盛り上がってくると、友達の1人が持参したビデオカメラで室内を撮影し始めた。面白いポーズをとったり、互いにふざけ合ったり…すごく楽しかったことを今でも覚えている。その日のコンパは、大満足で終了を迎えた。
翌日。
ビデオカメラでコンパを撮影していた友達から電話がかかってきた。
「今すぐ俺の家に来てくれ」
そいつは慌てた様子で、すぐに家へ来てくれと言ってきた。そいつの家へ向かうと、すぐに昨日のコンパで撮影した映像を見せられた。
「なぁ…これ、どう思う?」
映像の中には、コンパを楽しむ俺たちの姿がしっかりと録画されている。その映像を見た瞬間、俺は奇妙な「違和感」を感じた。
「誰だよ…このスーツの男…」
カラオケの室内を撮影した映像の中にスーツ姿の男が映っていた。男はドアの前に立ちながら、笑顔でカラオケを楽しむ俺たちを見つめている。
「こんな人、当日はいなかったよなぁ」
男は映像の中でチラチラと映り続けているが、誰もその男に気がつく様子もない。しばらくすると、男が口を動かしていることに気がついた。しかし、周りの音がうるさすぎて何を言っているのかわからない。
どうにかして男の喋っている内容を聞き取れないか考えていると、カラオケの音が急に止まった。友達の1人が間違えてカラオケの曲を停止させてしまった時のことだ。
俺たちはビデオカメラの音量を最大にしながら、男が喋っている内容に耳を傾けた。その男が喋っていた内容が…
「いや~俺昨日死んじゃってさぁ…まさかトラック出てくるとは思わなくて…!」