金運は東方より
ある日の早朝、ヤマトは見晴らしの良い丘で景色を眺めていた。
町のすぐ近くにあり、モンスターがいないため一般に開放されているスポットだ。
ヤマトが『トリニティスイーツ』の仲間となってから一週間が経った。
しかし、彼女たちの借金を肩代わりしたことも、資金管理を引き受けたことも一度だって後悔はしていない。
『――ヤマト、お金というのはね、誰かを救うために、幸せにするために使うものなんだよ』
ヤマトは幼い頃、一文無しで死にかけていたところを個人投資家に救われた。
その教えは今でも心に生きているのだ。
だから、ソウルヒートでどんなに酷い扱いをされても、しっかり資金管理をしていたのは、彼らの助けになるというその一心だった。
それが揺らいだとき、ヤマトはもう投資家ではいられなくなるのだから――
「クェッ!」
「ピー助? ……うん、にぎやかで楽しいよね」
ヤマトは肩にとまったピー助に微笑む。
楽しいというのは本心だ。
今は、トリニティスイーツの資金効率を上げるために、アイテムの調合だったり費用を削減できる強化の手順だったりを指南していた。
以前のパーティーでは、彼の言うことは誰も聞かなかったが、ラミィもハンナももちろんシルフィも、素直で従順だからアドバイスの通りにやってくれる。
それだけ信用してもらえているというのは、なんだかおもはゆい。
「クァッ?」
「本当にいい人たちなんだけどね。でもやっぱり、知識が足りていないんだと思う。それに特別な才能があるわけでもない」
パーティーの資金繰りをいくら改善したところで、個々の能力は並程度かそれ以下。
ソウルヒートも、マキシリオンが鬼人であること以外は似たようなものだったが、ラミィたちを彼らのような実力派パーティへ育てるには相当な時間がかかる。
「クェェェッ」
「うん、僕もそう思うよ。結局は金だ。パーティーの資金に余裕をもたせて、強い装備や効果的なアイテムをそろえさせれば、可能性はいっきに広がる」
どんなに強い魔物も、より強い装備により強力なアイテムを持っていたほうが、倒せる可能性は格段に上がるのだ。
個々の能力や経験の差など、大きくは影響しない。
とはいえ、その資金をどうやって得るかで頭を悩ませているのだが……
「はぁ、なんか大きな動きないかな」
「クェ……クァ? クワァァァッ!」
「ん? どうしたのピー助?」
突然右肩でピー助が首を立て鳴き出した。
すると、東の方角からピー助に似た、水色の小鳥が飛んできた。
「クワァァァァァッ!」
「ポ、ポゥ太!?」
飛んできたのは、『ポゥ太』という水色の小鳥で、ピー助と同じくヤマトの友達だ。
よく色んな地域を飛び回っては、ヤマトの元へ戻り、世界情勢を伝えてくれる。
ポゥ太はヤマトの左肩にとまると、「クワァッ!」と元気良く鳴いた。
「うん、久しぶりだね、ポゥ太。元気だったかい?」
「クァ、クゥゥゥ、クァッ!」
「え? 大変なことが起きてるって?」
ポゥ太から詳しく聞いてみると、他国ではまずいことになっているようだった。
なんでも、資源国であるエルフの国『ヴァルファーム』で、疫病が蔓延しているらしい。
感染力と致死率が高く、町での商売や入国が制限されたりして、経済が停滞し始めたようだ。
そこでヤマトは、顎に手を当て何事かを考えると、頬を緩ませポゥ太へ微笑んだ。
「ありがとうポゥ太。これでひと儲けできそうだ――」
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