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嫌な予感(ソウルヒート視点)

「――す、凄い……」


「ふんっ、この程度で驚いてもらっちゃ困るぜ、マヤ」


「そうだよ。忘れたのかい? 僕らは最強のハンターパーティ『ソウルヒート』なんだから」


 討伐し倒れたカトブレパスの前に立ち、誇らしげに言うマキシリオンとライダ。

 派手な立ち回りによって装備は摩耗し、回復薬や閃光玉、トラップアイテムなどの消費は激しいが、そのぶんかなりのスピード感で討伐できた。

 マヤの笛によるステータス強化や回復などが必要ないほどだ。

 さすがはソウルヒートだと、マヤは素直に感心する。


「あ~ぁ、特製の矢をほとんど使い切ってしまいましたわ」


「スノウ、お前はもう少し狙ってから放てよ」


「別にいいじゃありませんの。なくなってもまた補充すればいいだけですし。うちにはそれだけの資金があるんですから」


「まぁ、それもそうだな」


 今回スノウの使っていた矢は、先端に麻痺や毒、麻酔などの効果がある液体が塗り込まれていた。

 弓矢は近接武器に対して威力がないぶん、状態異常系の攻撃でサポートするのだ。

 とはいえ、スノウの弓の腕はお世辞にも良いとは言えず、高価で貴重な矢をかなり無駄にしていた。

 金欠にあえぐハンターなんかは、外しても再利用できそうな矢を回収していくが、スノウはそんな殊勝(しゅしょう)なことはしない。

 

「スノウ、矢だって高いんだから扱いには気を付けて」


「なに貧乏くさいことを言ってますの? マヤさん、あなたはパーティーの資金管理をしているんですから、ちゃんとした金銭感覚を身に着けてほしいですわ」


「……どういう意味?」


「ですから、うちの資金力であれば気にする必要もないということですよ。必要経費という言葉をちゃんと胸に刻んでくださいな」


「んなっ……」


 ため息混じりのあきれたような物言いに、マヤは絶句した。

 金銭感覚を身に着けていないのは、いったいどちらだと。


 実際のところ、スノウ程度の腕前の弓使いであれば、そこら中にいる。

 それでも彼女が遠距離支援としての存在感を保てているのは、その高級な弓の威力と毎回大量に消費する矢のおかげだ。

 そんなことにも彼女は気付いていない。


「お? レア素材ゲット~!」


 カトブレパスの死骸から素材を()ぎとっていたライダが上機嫌な声を上げる。

 その手には、血にまみれているものの磨けば輝きそうな、丸く赤い半透明の球体が乗っていた。


「お? カトブレパスのコアじゃねぇか」


「ああ。まさかこんなところで手に入るなんてね。そうだ! 欲しい剣の中に、カトブレパスのコアが必要なやつがあったんだ! これ、僕がもらっていいかな?」


「仕方ねぇな。今回の一番の功労者はお前だから、ゆずってやる」


「私も構いませんわ」


「ちょっ、ちょっと待って! ライダ、あなたこの間新しいのを作ったばかりじゃない。武器の製造には素材だけじゃなくて、お金も必要なのよ?」


「そう硬いこと言わないでくれよ。あれを作れば、もっと楽にクエストだって攻略できるようになるんだからさ」


 危機感を覚えたマヤが声を上げるが、ライダは聞く耳を持たず、マキシリオンとスノウは眉を寄せいらだちを見せていた。


 いくら強いパーティーだからといって、金が無限に湧いて出るわけではない。

 マヤはソウルヒートの大きな問題点に気付いていた。

 彼らが強力な魔物を難なく討伐できるのは、多くのクエストをこなして手に入れた、希少な素材と大金を用いて強力な装備を作り、さらに劣化や損傷の修復などの維持費に大金をつぎ込んでいるからである。


 さらに、敵の動きを止めるための閃光玉やトラップなどの消耗品から、大量の回復薬や体力増強剤などを毎回惜しげなく使い、クエストのたびに大量購入している。

 明らかに、クエストをクリアして得る稼ぎよりも出費のほうが多い。

 実際のところ、マキシリオンは鬼人族として凄まじい腕力を持っているし、ライダもかなり俊敏だが、それは高品質の装備による恩恵によって能力を底上げされているからだ。

 

「……あなたたち、金使いが荒すぎるわ。出費をもっと抑えないと、なにかあったとき手遅れになるわよ?」


 マヤの苦言に、マキシリオンは眉をつり上げ不機嫌そうな表情でにらみつけてきた。

 なんだか嫌な予感がする。


「はぁ? どこがだよ。いつもと変わんねぇだろ」


「そうですわ。あなたが来る前と方針はまったく変わっていません。もしかして、あなたの資金管理が下手なだけなんじゃないですか?」


「そ、そんなわけが……」


「まあまあ、ここは僕の顔にめんじて許してやってくれよ」

 

 マヤの肩を持つようにライダは言って、流し目を向けてくる。

 彼女はあきれて反論する気も起きない。

 今はただ、どうすることもできず様子を見るしかないのだと、無理やり納得するのだった。


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