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連行されるヤマト

「――ちょーっと待ったぁぁぁぁぁっ!」


「ぐぇっ!」


 路地を何事もなく去ろうとするヤマトだったが、突然背後から飛びつかれた。

 両腕を顔に回されて視界が暗転、足を絡められて危うく転ぶところだったが、足を踏ん張ってなんとかこらえる。

 背中に柔らかいなにかが押し付けられているが、気にしている余裕はない。


「ちょっと待ってよ、お兄さん!」


「ハンナ、ナイス! その人逃がさないで!」


「ちょっ、ちょっと!? 離して!」


 逃げようにも逃げられない。

 とりあえず顔に貼りついた腕をはがそうとするが、今度は右腕を柔らかい体に包まれた。


「え、えぃっ」


「ファインプレーよ、シルフィ。よし! ハンナ、もういいわよ」


「はいよ!」


 ようやく背中の重量から解放され視界が明けると、目の前にはリーダー格と思われる、青髪ポニーテールの凛々しい女の子が立っていた。

 背にはロングソードのような長剣を装備して、色あせた革製の防具(レザーアーマー)を身に着けている。


 そして素早く、ハンナと呼ばれていた栗色の髪に猫耳を生やした獣人の女の子が左腕に絡みつき、右腕は銀髪ツインハーフに褐色な肌のダークエルフの少女にぎゅぅっとしがみつかれていた。


「さっきは助けてくれてどうもありがとう!」

「ありがとねー」

「あ、ありがとうございました」


 三人がその体勢のままで礼を言ってくるが、ヤマトは困惑に頬を引きつらせてツッコミを入れる。


「あのぅ、言ってることと、やってることが違うんですが……」


「だってあなた、私たちの礼もないまま、さっさと立ち去ろうとしていたじゃない!?」


「いや別に、お礼がほしくて借金を肩代わりしたわけじゃないし」


「んなっ」

「な、なんて優しい人なの……」

「す、素敵ですぅ」


 ポニーテールの女の子が衝撃を受けたかのようにのけぞり、左右からはささやくような小さな声が聞こえた。

 それよりも、左右から柔らかい体に包まれているから、花のような甘い香りが漂ってきて、ヤマトは耳まで真っ赤になりのぼせそうだった。


「わ、分かったから、とりあえず離れてほしいんだけど」


 ヤマトが唇を震わせながらそう言うと、少女二人は名残惜しそうに眉尻(まゆじり)を下げて体を離し、正面に並ぶ。


「改めて自己紹介するわ。私はラミィ。このパーティーのリーダーなんだ」


「ハンナだよ」


「シ、シルフィです。よろしくお願いします」


 リーダーのラミィは堂々と胸を張って告げ、獣人のハンナは二パッと快活な笑みを見せ、エルフのシルフィは恥ずかしそうにはにかみながら、丁寧におじぎしてくる。


「ど、どうも……」


「ねぇ、あなたの名前を教えてよ。お仕事はなにしてるの? どこに住んでるの?」


 苦笑して頭をかくヤマトに詰め寄るラミィ。


「え、えっと……僕は――」


「――わ、私知ってます!」


「え?」

 

 声を上げたのは大人しそうなシルフィだった。

 なぜか頬をほんのりと赤らめ、目を輝かせて両手を胸の前で握っている。


「ソウルヒートのメンバーのヤマトさんですよね!?」


「えぇっ!? そうだったの!?」


「た、確かに、言われてみれば見覚えのあるような……」


 ヤマトは驚いた。

 確かにソウルヒートは有名だが、人気なのは豪胆で目立つマキシリオン、イケメンのライダ、美女のスノウの三人で、ヤマトなんて注目もされていない。

 しかしそれを聞いたハンナとラミィも、目を輝かせて詰め寄ってくる。


「ま、まさかあのソウルヒートのメンバーと出会えるだなんて!」


「これはぜひともお近づきに」


 喜びの絶頂にいる彼女らとは対称的に、ヤマトは暗い表情を浮かべ目をそらした。

 期待させてしまったことで、少し後ろめたい気持ちになっているのだ。 


「期待させてごめん。僕はもう、ソウルヒートのメンバーじゃないんだ」


 恐る恐る三人の反応を見てみると、意外にも落胆している様子はなかった。

 シルフィは「それがなんだ」というようにキョトンと首を傾げている。

 ラミィとハンナは顔を見合わせ――


「つまりそれは……」


「チャンスってことだね!」


「……は?」


 ヤマトは困惑から抜け出せないうちに、両手を引かれ、三人の宿へ連れて行かれるのだった。

 しかし久しぶりに握った人の手は、温かかった。


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