表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/58

決着

「なんだお前は!?」


「他にも奴隷がいたんじゃないの?」


「奴隷だと? なぜそれを!?」


「答えて」


「ふんっ、なにを期待しているのか知らないが、今いるのは後ろの子たちだけだ」


「……他の子たちはどうしたの?」


「僕の愛に耐え切れなくて、壊れてしまったよ」


 ドランは二ヤリと三日月のような歪んだ笑みを浮かべた。

 その言葉を聞いた途端、ハンナが立ち止まる。

 アヤも、ヤマトの横で絶句して固まっていた。


「……愛、ですって? あんたなんかにそんなものがあってたまるかぁぁぁっ!!」


 ついに感情を爆発させたハンナは、ローブを脱ぎ捨てると双剣を抜き駆け出した。

 彼女の蹴った地面は砕け、空を切り疾風が吹き荒れる。

 あまりのスピードと、初めて目の当たりにする彼女の激怒に、仲間の誰も声が出せなかった。


「おい、なにをしている!? 殺せ!」


「は、はいっ!」


 慌てて武器を構える六人の傭兵。

 ハンナへと一斉に襲い掛かるが、彼女のスピードには到底およばない。

 素早く振るわれる無数の剣閃は、すべての攻撃を弾く。

 

「な、なんだコイツ!? 早すぎるぞ!」


「左右から挟み込め!」


 焦り叫ぶ男たち。

 しかし俊敏に飛び跳ねるハンナに攻撃は当たらず、縦横無尽に振るわれる斬撃が強靭な肉体を切り刻んでいく。


「くっ、このおぉぉぉっ!」


 前方から同時に振り下ろされる刃。

 しかしそれが届くことはない。

 ハンナからすれば、遅すぎるのだ。


「かはっ」


 彼らが武器を振り下ろしたときには、横一文字の一閃が煌めき、ハンナはその背後、ドランの目の前に立っていた。

 すべての傭兵が膝から崩れ落ちると、ドランは恐怖に顔を引きつらせ後ずさった。

 ハンナは無表情で呟く。


「あんただけは許さない」


「ま、待て! 分かった、シルフィは返そう。だから――」


 ――ドゴンッ!


 最後まで言葉を言い切る間もなく、ドランのみぞおちに小さな拳が食い込んでいた。


「かはっ、くっそぉ……」


「みんなの苦しみを、少しでも味わえぇっ!」


「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!」


 ハンナに股間を蹴り上げられ、ドランは情けない悲鳴を上げて倒れると気絶した。


 あまりに一瞬の出来事で、ヤマトたちとその背後に構えていた傭兵たちは唖然としていた。

 

「……そんな、ドランお兄様……」


 スノウは脱力しその場へ座り込む。

 がっくりとうな垂れ、完全に戦意喪失していた。

 ラミィが残りの傭兵たちをにらみつけると、彼らは顔を見合わせ脱兎のごとく逃げ出した。


「ド、ドラン様!」

 

 白目を剥いて倒れたドランに駆け寄る使用人の男。

 ハンナはそれをつまらなそうに見下ろしながら、荒れる呼吸を整えると前を向いた。


「シルフィ!」


「ハンナちゃん!」


 二人は駆け出し抱き合うと、涙を浮かべた。


「シルフィ、大丈夫? あの変態になにかされてない?」


「うん、私は大丈夫だよ!」


「良かった……本当に良かったよぉ」


 先ほどまでの凛々しい姿はなく、泣きじゃくるハンナは年相応の女の子だった。

 シルフィもギュッと抱きしめ、安堵の笑みを浮かべる。

 ヤマトたちもシルフィの元へゆっくり歩み寄った。


「――シルフィ」


「ヤマトさん、ラミィさん、アヤさん」


「クェェェッ!」

「クァッ!」 


「ピー助さんに、ポゥ太さんまで!」


 二羽の小鳥は嬉しそうに鳴くと、シルフィとハンナの肩にそれぞれとまる。

 シルフィとハンナは体を離し、ヤマトに向き合った。


「シルフィが無事で本当に良かった」 


「ええ、本当に」


 皆、無事なシルフィと再会できたことに安堵する。

 すると彼女は、ヤマトを見て目を丸くしていた。


「ヤマトさん、そのコート」


「え? あっ、これは……」


 シルフィから贈ってもらったコートだ。

 彼女を助けるために気合を入れようと着てきたのだが、なんだか急に恥ずかしくなった。

 ヤマトが目をそらして赤くなった頬をかいていると、シルフィは嬉しそうにはにかむ。

 しかしすぐに真剣な表情になる。


「ヤマトさん……みなさん、本当にごめんなさい!」


 シルフィは意を決して謝ると、深く頭を下げた。

 誰にも相談せず、勝手にいなくなったことを気にしているのだろう。

 ヤマトは首を横へ振って微笑んだ。


「もういいんだ、シルフィ。全部終わったんだよ。帰ろう僕らの居場所へ」


 そう言って手を差し伸べると、シルフィはためらいがちのその手を握って満面の笑みを浮かべるのだった。


「はいっ!」


※ハイファンタジー日間27位になりました!(2/24)


1位を目指しますので、広告の下にある☆☆☆☆☆から作品の率直な評価をお願いしますm(__)m


また、『ブックマーク追加』と『レビュー』も一緒にして頂けると大変助かります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ