渾身の一手
「――バカな……父上がギルドの会長を解任だと!?」
衝撃の事実に放心するドラン。
彼の手にあるのは、情報屋が走り書きしたメモだった。
おそらく緊急総会が終わった後、出席者の誰かに内容を聞いてメモしたものだろう。
ヤマトはあらかじめ、ポゥ太に頼んでそれを情報屋の手から奪い取るよう待機してもらっていたのだ。
被害にあった情報屋にはさすがに悪いので、後で謝罪と報酬をかねて対応するつもりだ。
放心するドランへ使用人の男が耳打ちする。
「ドラン様、これはただのメモ書きです。本当の情報かはまだ分かりません」
「そ、そうだな……ヤマト・スプライド、なかなか卑劣な手を使う。こんな偽りの情報でだまそうとは神経を疑うな」
「それが本当かどうかはすぐに分かることです。覚悟しておいてください」
「くっ……」
ヤマトの自信満々な言葉に、ドランはわずかに顔を歪ませた。
メモを持つ手は震え、怒りを抑えているのが分かる。
もしこの情報が本当なら、ドグマン家にとっては貴族としての信用を失うかなりの痛手だ。
ヤマトは状況の好転を逃さないため、たたみかけるように話を続ける。
「これでトリニティスイーツの活動休止は解除されるでしょう。そうなれば、シルフィはまたハンターとして活動できるようになります。つまり、あなたの援助なんて何一つ必要ない!」
それを聞いて、シルフィがハッと顔を上げる。その顔にはわずかだが活気が戻り、瞳が希望に輝いた。
そんなシルフィへ、ヤマトは優しく微笑み、彼女の目に涙が浮かぶ。
しかしドランは、メモを破り捨てるとドスのきいた低い声で呟いた。
「貴様ぁ……」
「さあ、シルフィを解放してください」
「この女は渡さない。俺のものだ!」
ドランが顔を醜く歪ませ叫ぶ。
とうとう化けの皮が剥がれたのだ。
「いいのですか?」
「なに?」
「あなたのお父上が、偽りの罪でトリニティスイーツを陥れたと明らかになったんです。そのパーティメンバーを息子のあなたが縛っていると公になれば、あなたの関与も疑われ、ドグマン家の信用は地に落ちることになりますよ」
これがヤマトの渾身の一手だった。
たとえギガスの会長解任の件を信じていなくとも、シルフィを抱えているリスクは大きすぎるのだ。
分の悪い賭けを避けるならば、彼女を手放すのが正しい判断というもの。
「……ふんっ、そうはならないさ」
しかしドランは、薄い笑いを浮かべて告げた。
彼ならば断わると、ヤマトも薄々は感じていたので驚きはない。
「なぜそう言えるんですか?」
「真実を知っているお前たちには、消えてもらうからだ!」
ドランが叫び、背後で使用人の男がパチンと指を鳴らすと、庭のしげみから武装した男たちが出て来た。
おそらく彼の雇った傭兵だ。
彼らは明確な殺意をもって武器をヤマトたち四人へ向ける。
交渉決裂。
ヤマトたちの背後からも傭兵が四人現れ、シルフィが思わず叫んだ。
「ヤマトさん!」
しかしヤマトは動じず、勝ち誇ったように酷薄の笑みを浮かべるドランを見据えた。
「これはどういうことですか?」
「決まっているだろう? 君たちがいなくなれば、シルフィは僕のものになる」
「最初からそれだけが狙いか」
「安心しなよ、彼女は壊れないように、じっくりと可愛がってあげるから」
「ひっ……」
狂気すら感じるドランの目を向けられたシルフィは、恐怖に顔を引きつらせる。
ヤマトの怒りは今にも爆発しそうだった。
「彼女には手を出させない! ドラン・ドグマン!」
しかし状況は最悪。
ヤマトたち四人に対し、敵は前方に六人、背後に四人。
今は互いに硬直しているが、戦闘が始まればヤマトたちが明らかに不利だ。
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