逆転の糸口
「実は当商会では、投資先にギルド『ブレイヴドグマ』を選定するべきか迷っているところなんです」
グランチェスは目を丸くしたものの、おもしろそうだと頬を緩ませた。
自分がギルドの出資者であると言わなかったのは、こちらがそれを知った上だと悟ったからだろう。
「ほぅ? なぜそこを選んだのか、理由を聞こうか」
「僕も以前はハンターとしてブレイヴドグマに所属していました。そのとき感じたのは、ハンターのサポートが厚く、依頼も豊富なので、これからも不動の人気を獲得し続けるのではないかということです」
「うん、納得の判断だね」
「しかし、一つだけ判断に迷うことがあるのです」
「……どういうことだい?」
グランチェスは、それまで気を良くして頬を緩めていたが、すぐに表情を引き締めた。
ここが正念場だ。
ヤマトも緊張感に気を引き締め告げる。
「会長のギガス男爵です」
「……なにが言いたいんだ?」
「彼がギルド運営のトップに座しているのでは、業績低迷のリスクが低くないと考えます」
「つまり、彼が経営者として無能だと?」
グランチェスは真剣な表情でヤマトの目を見つめる。
すべてを見透かすような眼差しに、目をそらしたくなるが、ヤマトはなんとか頷いた。
「彼は最近、稼ぎ頭だったハンターパーティを活動休止にまで追い詰めました。それも確かな証拠もなしに。そんなことをしても、ギルドにとってマイナスでしかありません。経営者としてそれすら分からないのだとしたら、彼は無能以外の何者でもありません」
熱の入ったまっすぐな言葉に、グランチェスは目を丸くする。
そして最後まで聞き終えると苦笑した。
「ずいぶんと容赦がないな。確かに君の言う通りだ。ギガスは権力を振りかざすだけの無能に違いない」
「オーナーのみなさんは、なぜ彼を会長に選んだのですか?」
「まぁそこは色々あってね。あのギルドがここまで成長したのは、ギガス男爵の権力を利用させてもらったからだ。裏の繋がりってやつさ。そういう裏事情くらい、君も投資家ならよく知っているだろう? だから彼が会長の座を寄越せと言ってきたとき、当時就任したばかりだったギルド会長は、自ら退くしかなかったというわけさ。候補が一人しかいないのなら、オーナーの私たちも選びようがない」
「そういうことだったんですか。もしその方が会長のままでありさえすれば……」
「今さら気にしても仕方ないさ」
グランチェスは困ったように笑うと、肩をすくめた。
だがヤマトはそこを突く。
ようやく見出した活路を見逃しはしない。
「僕はそうは思いません」
「ん?」
「今からでも遅くないということです。当時の会長はどなたでしたか?」
「それは――」
その名を聞いたとき、ヤマトはわずかに頬を緩ませた。
グランチェスに礼を言って屋敷を出ると、肩の上でピー助が鳴く。
「クェッ!」
「ああ、あと少しだ。あと少しで奴らに手が届く」
ギガスたちは気付きもしていないだろう。
自分のたちののど元には既に、鋭い刃が突きつけられているということに。
ヤマトは町へ戻ると、すぐに金庫番の融資担当の元へ向かうのだった。
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