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実はオーナーでした

 そこは都心から少し離れた郊外。

 ヤマトはパーティを追放されてショックを受け、沈痛の面持ちで歩いていた。

 パーティ全員の生活費もソウルヒートの口座で一括管理していたため、現金の持ち合わせはほとんどない。


「はぁ……」

 

「クエェッ!」


「ピー(すけ)、僕をはげましてくれるのかい?」


 ヤマトの肩に乗っている白い小鳥『ピー助』が羽をジタバタさせながら鳴いた。

 やんちゃな性格のオスで、今も「元気だせよ!」とはげましてくれる。

 

 ピー助のエールに癒されながらしばらく歩いていると、木造の大きく立派な屋敷についた。


「――いらっしゃいませ!」


 中に入ると、いたる所で様々な種類のアクセサリーが並べられており、女性客でにぎわっていた。

 アクセサリーの販売をなりわいとしている、『ウルティマ商会』の本店だ。 


 華やかな雰囲気に、少し居心地の悪さを感じながらも、ヤマトは受付の若い女の子に声をかける。


「すみません」


「はい、本日はどうされましたか?」


「ヤマトという者ですけど、アーク商会長はいらっしゃいますか? お会いしたいのですが」


「……はい?」


「あれ? もしかして、どこかに出かけてらっしゃる?」


「い、いえ、そういうわけではなく……」


 受付嬢は眉尻を下げ、困ったような表情を浮かべていた。 


「失礼ですが、当商会のことはご存知でしょうか?」


「はい。アクセサリーの専門店を広く展開しているウルティマ商会です」


 ヤマトはニコニコしながら答え、受付嬢は頬を引きつらせて苦笑する。

 彼女があきれたような顔で「あのですねぇ」と言った次の瞬間――


「――ヤマト様っ!?」


 突然、受付嬢の後ろから可憐な声が響き、ヤマトがそちらを向くと、


「シーアさん?」


 このウルティマ商会の会長であるアークの娘、『シーア』が歩み寄って来た。

 レースをあしらった白く上品なドレスを着て、輝くようなプラチナブロンドの髪はツインの縦ロール。

 おっとりとした雰囲気の通り、穏やかな性格をしている。

 彼女の登場に、受付嬢も「シーアお嬢様!?」と驚愕していた。


「ヤマト様がここへいらっしゃるなんて、珍しいですね」


「アーク会長にちょっと用事があったので。シーアさんはどうしてここに?」


「実は、私がデザインしたアクセサリーを新しく販売することになったんです。それで、お客様の反応はどうかなって、見に来たんですよ~」


「へぇ、それは凄いね」


「ぜひともヤマト様に見つけて欲しいです」


 シーアは「えへへ」とはにかむ。

 心なしか頬が赤い。

 すると、ピー助が突然羽ばたき、ヤマトの肩からシーアの胸元へと飛び込んだ。

 彼女の豊満な胸で跳ねた後、優しく抱きしめられる。


「あらあら、ピー助さんも興味を持ってくださるの?」


「クゥゥゥン」


 頭を優しくなでられ、ピー助は幸せそうに目を細めた。

 それを見たヤマトは、あきれたようにため息を吐く。


「……このスケベ鳥が」


「はい? ヤマト様、今なにかおっしゃいませんでした?」


「ううん、なんでもないよ」


「ふふふっ、変なヤマト様」

 

 そんな二人の様子を見て固まっていた受付嬢の元へ、ガタイの良いベテラン風の男がやって来た。


「おい、どうした?」


「あ、えっと……こちらの方がアーク会長にお会いしたいとおっしゃっているのですが……」


「会長に? ……って、ヤマトさんじゃないですか!?」


「どうも」


 見知った顔の商会員に、ヤマトはにっこりと笑みを浮かべ会釈する。

 すると、男は慌てて頭を下げた。


「も、申し訳ありません! この()、まだ新人なもので!」


「へ?」


 今だに状況が理解できていない受付嬢へ彼は言った。


「こちらのお方は、うちの出資者(オーナー)様だ! 早くアーク会長の元へご案内して差し上げろ!」


「えっ!? は、はい! ヤマト様、先ほどの非礼、誠に申し訳ありませんでした!」


 顔面蒼白にした受付嬢が必死に謝ってくるが、ヤマトは「気にしないでください」と苦笑する。

 誰だってこんな若い男が大商会の出資者だなんて思わない。

 商会員たちがいちいち大げさなのだ。


 周囲の女性客たちも何事かとこちらに注目し始めていたので、ヤマトは受付嬢に案内をお願いしアークの執務室へ向かう。


「ヤマト様っ」


「うん?」


「この後、もしお時間ありましたら、お食事でもご一緒にいかがでしょう? 私、ヤマト様に聞いてほしい話がたくさんあるんです」


 シーアが耳まで真っ赤にして、指の先をつんつんさせながら上目遣いに聞いてきた。

 

「うん、分かった。じゃあ、また後で」


「本当ですか!? ありがとうございます! それでは、お待ちしておりますね!」


 シーアは目を輝かせ、溢れんばかりの笑みを浮かべた。

 ヤマトはそれを背に、受付嬢の後ろについてアークの執務室へ向かう。


※ハイファンタジー日間27位になりました!(2/24)


1位を目指しますので、広告の下にある☆☆☆☆☆から作品の率直な評価をお願いしますm(__)m


また、『ブックマーク追加』と『レビュー』も一緒にして頂けると大変助かります!

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