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マヤ脱退(ソウルヒート視点)

「そうですか……それでは残念ですが、フレイムワイバーンのクエスト失敗手続きに入らせて頂きます」


 ギルドの受付嬢は眉尻を下げて告げると、手続きを始めた。

 ソウルヒートはその日、緊急討伐依頼の出ていたフレイムワイバーンに挑んだ。

 しかし結果は、大したダメージを与えることもできず逃がしてしまう。

 それどころか、フレイムワイバーンはギルド管轄外のエリアへと飛び去り、討伐失敗となったのだ。


「それでは、クエスト失敗による契約未遂行ということで、違約金を頂きます。お一人5000ウォルですので、4人分で2万ウォルとなります」


「ちっ……」


 金額を聞いて一瞬顔をしかめたマキシリオンは、舌打ちしつつ乱暴にウォル通貨をカウンターテーブルへと叩きつけた。

 受付嬢が驚いてビクッと体を震わせる。


「行くぞ」


 マキシリオンが怒りを抑えた低い声で告げ、クエスト仲介所の出口へ向かって歩き出すと、ライダたちも無言で後ろへ続く。

 すると、一連のやりとりを見ていた周囲のハンターたちがざわめき出した。


「おいマジかよ、あのソウルヒートがクエストに失敗するなんて」

「驚いたな……今まで、フレイムワイバーンよりも強いモンスターだって倒してきたはずなのに……」

「それよりも、あの装備を見ろよ。あいつらなんでいつもの上級ランクの装備にしてないんだ?」

「それもそうだな。あれじゃあ、失敗しても仕方ないか」

「おおかた、自分たちの実力を過信でもしたんだろうさ」

「違いねぇ」 


 すべて本人たちにも聞こえている。

 しかしマキシリオンもライダもスノウも反応しなかった。

 彼らはじきに、最強パーティーとしての威光を失うと理解していたのだ。


 マキシリオン、ライダ、スノウ、マヤの四人は、仲介所の近くにある路地裏へ移動していた。

 ライダがため息をついて壁へ寄りかかり、マキシリオンは壁を怒りに任せて殴る。


「くそがっ! 腹の虫がおさまんねぇ!」


「なんでこんなことに……」


「たまたま受けたクエストが悪かっただけですわ」


「あぁん? 元はと言えばスノウ、お前が攻撃を外しすぎるからいけねぇんだろうが!」


「そ、それは仕方のないことですわ! 維持費が高いからって、今まで使っていたものよりも狙いが安定しない弓に変えたんですから」


 彼らは今、資金不足を解消するために高級装備を売り払い、昔使っていたランクの低い装備に替えていた。

 今までの彼らなら、モンスターの弱点に合わせて万全の装備で挑むところだが、それを準備していたヤマトはもういない。

 せめてもの対策として、フレイムワイバーンの弱点である氷属性の付与された矢をスノウに持たせていたのだが、そもそも弓の精度を武器の性能まかせにしていた彼女ではまったく当たらなかった。


「しかしこのままじゃマズいな……」


「ああ。緊急クエストで大量の報酬がもらえると思ってたのに、むしろ減っちゃったからね」


 頭を抱えるライダ。

 ついでに言うと、クエストのために準備したアイテムの購入費も損してしまっている。

 マヤはなにも言わずに無表情でたたずむだけだが、パーティーの危機はひしひしと感じている。


「てか、なんでこんなことになってるんだよ」


「そんなの決まってますわ」


「ああ、すべての元凶は一人しかいない」


 三人が口をそろえると、マヤは身構えた。

 どうせまた、自分の資金管理ができていないのが悪いのだとか言ってくると予想したからだ。

 しかし、彼らの口から出た言葉は予想の範疇(はんちゅう)を超えていた。


「……あの無能だな」


「ええ、間違いありませんわ」


 マヤは目を見開く。

 彼らはようやくヤマトの有用性に気付いたのかと。


「あの野郎、俺らに秘密で別の仕事で稼いでやがったんだ」


「そうだろうね。それでソウルヒートの資金を補填してたんだ。だから、資金が尽きることなんてなかった」


「……え?」


 マヤはあきれてものも言えない。

 これまでソウルヒートの資金管理をしてきた彼女なら分かる。

 たった一人の収入ごときで、このパーティーの出費はカバーできないと。

 それにも気付かず、スノウが真顔でたずねる。


「しかしどうしますか? 今さら彼を連れ戻したところで、すぐには状況が改善しそうにありませんが」


「おいおい忘れたのか? あいつはまた、他のパーティで活動してるじゃねぇか。しかもそこは、急成長してるんだぜ」


「なるほどね。ヤマトの稼いだ金に任せて成り上がってるってわけだ」


「おうよ。だから、ヤマトをぶっ潰してその金をすべて奪い取る」


 マキシリオンが邪悪な笑みを浮かべると、ライダとスノウも得心したように頷いた。

 あまりにも救えない者たちだとマヤは思う。


「ちょ、ちょっと――」


 彼らを止めるべく、割り込もうとするマヤだったが、上空にあるものを見つけ目を見開いた。


「あれはっ……どうやら心配は不要だったようね」


 マヤは、ふっと笑みを浮かべる。

 そして、今日をもってソウルヒートから脱退することを告げるのだった。


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