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逆転する立場(ソウルヒート視点)

 一方、とある武器屋では――


「よぉ~マキシリオン。久しぶりじゃないか」


「あぁ」


 武器屋の店主であるスキンヘッドの大男が朗らかな笑みを向けると、マキシリオンはばつが悪そうに目をそらした。

 彼の事情を知ってか知らずか、店主は頬を緩ませながら語りかける。


「お前、最近あんまり来ないし、来たとしても羽振りが悪いぞ?」


「色々あんだよ」


「最近のソウルヒートはあまり戦績が良くないって聞くが、本当なのか?」


「ちっ、あぁん?」


 マキシリオンは核心を突く問いにいらだち、殺気を込めて店主をにらみつける。


「おぉ、怖い怖い」


「喧嘩売ってんのか?」


「違うって。上手くいってないなら、最新の武器を紹介しようと思ってな」


 そう言って彼が持ってきたのは、武骨なフォルムの大剣と長剣だった。

 見た目こそシンプルで飾り気がないものの、刀身は荒々しさを象徴するようにぎらつき、武器全体から覇気を放っているかのような迫力があった。


「これすげぇんだぜ。見た目の割に軽いんだが、切れ味が段違いで、しかも全然劣化しない」


「へぇ、いくらだ?」


「200万ウォルってとこだな」


 店主がニタァと笑みを浮かべて告げる。

 いくら素材の必要ない完成品で、劣化頻度も少ないとはいえ、かなりの額だ。

 マキシリオンは考えるまでもなく値段交渉に出た。


「は? ぼったくりすぎだろ。まけてくれや」


「う~ん……今までのあんたなら、よく武器を買ってくれてたから良かったんだが、今のあんたを見るとなぁ……」


「なんだとっ!?」


「お、落ち着けって!」


 マキシリオンが店主へつかみかかろうとしたそのとき、新たな客が入って来た。


「こんにちは」


「お? いらっしゃい!」


「ちっ」


 マキシリオンが舌打ちして振り向くと、そこにいたのはラミィだった。

 彼女がヤマトの仲間だとすぐに思い出したマキシリオンは、彼女を忌々しげににらみつけると、ラミィは一瞥しただけでカウンターのほうへ歩き出した。


「ふんっ、調子乗りやがって」


 マキシリオンはそう吐き捨て、外へ向かって歩き出す。

 その背後で、店主がラミィへまた新商品の紹介を始めた。


「――高いですね。もう少し安くはなりませんか?」


 自分と同じことを言う彼女に、マキシリオンが「バカが」と毒づくが、


「もちろんだよ。あんたらはお得意様だから、努力させてもらうぜ」


「ありがとうございます!」


「……ちょっと待て」


 店の扉へ手をかけていたところで、マキシリオンが背後を振り返った。

 店主は「聞いてたのか……」と苦笑し、ラミィは険しい表情を浮かべて彼を見据える。


「どういうことだ!? 俺にはダメで、こいつらみたいなザコは値引くってのか!?」


「しかし、彼女たちは最近すごく頑張ってるようだし、うちの店も頻繁に利用してくれるからなぁ」


「ざけんな!」


「待って」


 憤怒の表情を浮かべながら足を踏み鳴らし歩く彼の前へ、ラミィが立ちふさがった。

 彼女は気丈ににらみ返している。


「あなた何様のつもり? 武器を買うだけのハンターなんだから、店に迷惑をかけるなよ」


「なんだと、てめぇっ!」


 マキシリオンは迷わず拳を突き出し、ラミィの顔面へ打ち込む。

 しかし彼女は、両腕をクロスして顔をかばい、白銀の籠手で受け止めた。

 その瞬間、マキシリオンの顔が驚愕に変わる。


「バ、バカなっ!? てめぇなんかが、なんで……」


 ラミィの装備していた防具が、自分のものよりも明らかにランクが上だったのだ。

 彼女もそれに気付き、彼の目を見据えて言い放つ。


「仲間を軽く見てきた、あなたたちの自業自得だよ」


「……クソがっ!」


 なにも言い返せなくなったマキシリオンは、血がにじむほど拳を握りしめ、店を出て行くのだった。


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