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二人だけの秘密

「――あぁっ! ヤマトくんとシルフィだ!」


 ヤマトとシルフィが服屋を出て、目的地も決めずに話しながら歩いていると、ハンナとばったり会った。

 

「ハンナじゃないか。今日はなにしてるの?」


「ヒマだから散歩してたの。そういう二人はどうしたの? てか、ヤマトくんの手に持ってる高そうな袋はなに?」


「ああ、これ? これはね、シルフィが――」


「――ダ、ダメ!」


「むぐっ!?」


 ヤマトがコートをプレゼントしてもらったことを言おうとすると、シルフィが慌てて後ろに回って口を押えてきた。

 身長差があるため彼女は背伸びして密着する形になり、ヤマトの背中には控えめながら柔らかい丸みが押し当てられる。

 それを意識したヤマトの耳は真っ赤だ。

 それを見てハンナは猫耳をピンッと立て、ビシッとヤマトたちを指さした。


「ちょっとなにしてるの!? シルフィったら、ヤマトくんから離れなさいよぉ」


 ヤマトもそうしてくれと内心で叫んでいると、シルフィが耳元でささやいてくる。


「今日のことは内緒にしてください。お願いです」


「んっ! んっ!」


 ヤマトが耳を真っ赤にしながら首を縦に振ると、シルフィはゆっくり体を離した。


「ぷはっ! はぁはぁ……」


「二人してなんかあやしいなぁ……まさかシルフィ、抜け駆け――」


「――そ、そんなことないですよ! 私たちだって散歩してただけですもの。ね? ヤマトさん」


「え? そ、そうだよ」


 ヤマトは話を合わせようと無理やり笑みを作って頷くが、ハンナは「絶対にあやしいぃ」と言いながらジトーっとした目で見つめてくる。

 シルフィとヤマトが気まずそうに目をそらしていると、彼女はふぅと諦観(ていかん)のため息を吐いた。

 

「……ま、いっか。こうしてヤマトくんと会えたわけだし。ねぇ、二人はこれからどうするの?」


「えっと、そうだねぇ……アクセサリーショップでも見に行こうかなって話してたところなんだ」


「アクセサリーショップぅ? それってまるで……」


 ハンナが再び不機嫌そうに眉をヒクつかせ、シルフィへ目を向けると、彼女は「あっちゃぁ」と手で頭を押さえていた。

 しかし能天気にニコニコしているヤマトは、自分の失態に気付いていない。


「じゃあ、私も一緒に行く~」


「えぇっ?」


「なにシルフィ? なにか都合が悪いことでもあるのぉ?」


「べ、別に……」


「ヤマトくんはいいよねぇ?」


「う、うん」


 頷くヤマトだが、本当のところはシルフィへのプレゼントのお礼としてアクセサリーを買ってあげたいと思っていたころだ。

 だが、この際仕方ないと割り切り、ハンナにも買うことにした。

 後でまたもめないために、今ここにいないラミィの分も。


「――いらっしゃいませ」


「わぁ、凄い! 素敵!」


「可愛いお店ですね~」


 ヤマトが入ったのは、アークの経営するウルティマ商会のアクセサリー専門店だ。

 女の子には縁がないからと気にしたこともなかったが、今に限って言えば、ウルティマ商会に出資したことがあって良かったとしみじみ思う。


「――あら? ヤマトさんではありませんの」


 だがそこで、今もっとも会いたくなかった先客と鉢合わせしてしまった。


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