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魔王の行進!  作者: くるぶしソックス
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ラハムの森 その2

要の前に広がっていたのは、見渡す限りの大草原だった。視界を遮るものは一切無く、天と地がはっきりと分かれた様子が見られる。短く生えそろった草を揺らす風は要の頬を優しく撫で、燦々と降り注ぐ陽光は、眩しかったが太陽のもつエネルギーを分け与えられるかのように思えた。

パラソルとラウンジベッドがあったなら、共の悪魔達と昼寝を準備を始めたことだろう。しかしながら、そういうわけにはいかなかった。心地よい昼寝を始めるには相応しくない怒声が聞こえるからだ。

怒声を発するものは、牛とも馬とも呼べそうな二足歩行の魔物だった。

みれば数十体のその魔物の集団が簡素な石斧を持ち、戦っているようだった。

相対すのは、2メートルはあるだろう巨大な怪鳥。鶏に酷似した頭を持ち、トカゲやワニを思わせる爬虫類特有の鱗が生えた体をしており、同様の質感の翼と長いしっぽが生えていた。

鳥と呼ぶには少々語弊があるかもしれないその魔物の正体は、"コカトリス"である。

種族としては竜種に含まれる魔物だが、頭がどう見ても鶏にしか見えないので怪鳥と呼んでも良いだろう。

そんな2種の魔物は大草原の森に接した場所にある、唯一の建造物らしきものの近くで争っていた。建造物らしきと表現したのは、とても自然に出来たようには見えないが、かといって草をテントのように整えたそれを、家と呼ぶにはあまりにお粗末だったからだ。


「ミノタロスとコカトリスのようですね。」


要の斜め後ろに立つ執事服を着た男のが心地の良い声で話しかける。


「そのようだな。見たところ数こそミノタロスが多いが、コカトリス達に押されているようだな。」


コカトリスの吐いた炎がテントらしき草に燃え移り、小火ぼやが起きている。


「要様、いかがされますか?」


「そうだな。このまま眺めていても良いが、火が燃え移らんとも限らん、止めに入るとしよう。そうだな、マモンとアスモデウスは樹海で多少働いて貰ったし、リヴィアとベルフェゴールは能力的に不向きか、ベルゼブブお前に任せよ

う。私たちはここで見学させて貰う。」


「御意で御座います。では、少々お待ち下さい。」


微笑を浮かべ、優雅に一礼すると、その場から消えるようにして居なくなった。

気づけば、小火が起こるその場所にベルゼブブは立っていた。

瞳の色とよく似た深紫のオーラを纏った

その男に、ミノタロスとコカトリスには恐怖の色が見えた。

まず先に反応を見せたのはコカトリスだ。甲高い奇声を上げると、狂ったように翼をはためかせ飛び立とうとした様子を見せた。

しかし、飛び立つよりも早くベルゼブブが4体のコカトリスの羽を引きちぎる。


「ふむ、野生の勘というやつですかね?

逃げる選択をする分、あのオークより優秀かも知れませんね。」


翼をもがれたコカトリスは痛みからかその場に倒れ込んだ。

一方、自分達を苦しめたその魔物を瞬く間に屠った目の前の強者に、ミノタロスは怯えていた。


「さて、ミノタロスの諸君。言葉は理解出来ますか?」


発するオーラの禍々しさと裏腹に、丁寧な口調と優しげな声だったが、それが余計不気味さを感じさせた。

しかし、この集団の族長なのか一体のミノタロスが口を開いた。


「わ、分かるぞ。お前、いやあなたは何者なんだ?おれ達を助けてくれたのか?」


「通じて何より。私の名は"ベルゼブブ"。偉大なる王である要様に使える者です。そして、貴方達が助かるかどうかは私が決めることではありません。我が主人がお決めになることです。ですが・・・助かりたいのなら、まずは平伏しなさい。」


突如ベルゼブブから発されたオーラのプレッシャーが増した。そして、オーラの重さに潰されるようにミノタロス達は平伏した。

その様子を確認したからなのか、見物していた要達が現れた。ベルゼブブは、主人の二歩ほど後ろに一列に並ぶ同僚達の横に同じように加わった。

眼前に突如現れた異形を見て、瞬時にミノタロス達は悟った。これがあの悪魔の主人だと。自分達の命がいかようにも転がることに。


「ミノタロスよ、私の名は"安門 要"。

私はラハムの森を支配下に置こうとしている。そこで、お前達には2つの選択を提示しよう、まず1つ大人しく私に恭順すること。その場合、危害は加えない。

2つ目は、私と敵対しこの場で争うことだ。好きな方を選ぶといい。」


「あなた様に、服従いたします。」


生きる為の選択だった。悪魔に従って幸せになれるとは到底思えなかったが、戦うことは即ち死を意味していた。そのことを本能的に理解したミノタロスは、絞り出したような声でそう言った。


「そうか、賢明な判断と言っておこうか。私たちはあと数カ所、向かうところがある。後日使いのものを送ろう、それまで大人しくしておけ。」


「ははっー!」


一斉に頭を下げたミノタロス達を一瞥もせず要は去った。


「少し、退屈だな・・・。」


そうボソリと呟いて。こうして静かに草原での争いは静かに幕を下ろした。


* * * *


「これは、一体どういうことだ?」


ラハムの森西部に位置する、約7キロにもおよぶ湖に要達はやって来ていた。ラハムの森最大の水源であり、多くの水性生物が生息しているであろうこの湖は、森に囲まれ、楕円形をしており、辺りには美しい花の群生も見られた。

水は澄み、太陽の光を反射した水面がキラキラと輝いている。

これまで通りなら、大自然の美しさに一息つくところだったが、今回はこれまでと勝手が違っていた。

湖の主な魔物であろう者たちが、要を迎えるように一同平伏していたからだ。

その中心にはナマズのような顔をした巨大な魔物が、湖から体を半分だし頭ー首が無いので分かりにくいがーを下げていた。水面から出ているだけでも、6メートルはあるのではないだろうか。

ナマズの顔には似つかわしくない、強靭な鱗と立派な背びれを持つその魔物は、老々とした声で話し出した。


「お待ちしておりました。偉大なる悪魔の王よ。私は陸に上がると場所を取ってしまうので、こうして水中から話す無礼をお許しください。」


確かな知性を感じさせる魔物は、改めて頭を下げた。


「良い。それよりも私がここに来ることが分かっていた口ぶりだな?」


「はい。私は"予知夢"というスキルを持っております。見たいものが見れる訳ではないのですが、時折夢にこれから起こることが出てくるのです。今回はその能力で王の来訪を予期した次第で御座います。」


「それは興味深い・・。それで、私の目的も知っていてこのような態度を示しているのか?」


「はい。夢で愚かにも、王に逆らう者たちが居りましたので・・無駄な犠牲を出さぬよう、王の目的とお力を伝えておきました。私たちこの湖に住む者一同、王に従いたく思います。」


「そうか、理解した。少々拍子抜けだが、従うというなら文句はない。これより私の為に尽くせ。」


「有り難く。御用の際は何なりとお命じください。」


「お前は色々と詳しそうだ。この森の支配が終えたときには、改めてまた訪れる。」


「畏まりました。」


一滴の血も流さず湖の制圧が終わった。


要達がその場から居なくなったのを確認すると、平伏していた魔物の一体が口を開いた。

グレンデルと呼ばれるその魔物は、魚人のようで魚の面影を強く残した顔に、巨大なナマズと同様に強靭な鱗が生えた体をもち、立派な背びれと水かきを持っていた。


「長よ!本当に良かったのですか!あのような者達に服従をして!悪魔ですぞ!?」


「仕方なかろう。お前も分かっていると思うが、あれには決して勝てぬぞ。

こうする他はない。それに、竜王無きこの森には新たな王が必要じゃ。

人間たちに牽制の意味も込めての。」


「それは分かりますが・・。偉大な竜種の上位者である、あなたが竜王様以外に従うなど!」


「先程も言ったが、我ではあの者達には勝てぬ。それに、存外話ができる者ではあった。思いのほか良いようなるかもしれぬ。」


「ですが・・!」


「これは決定じゃ。我らはこれよりアモン様を王として従う。」


湖には重く暗い空気が流れる。

華やかな花達がそれを眺めるばかり。


* * * *

一方、オーガ達の住む平地に向かった要達も想定外の事態に遭遇していた。

これより、要が制圧する予定のその場所はすでに襲われている最中だった。

所々で火の手が上がり、逃げるゴブリンと追う兵士の悲鳴と雄叫びがこだましていた。

ラハムの森東に位置するこの平地は、

人間領に最も近い場所にあり、冒険者や森を偵察にくる兵士との戦いも珍しいことでは無かった。

そのため、力は無いが食料や衣服などの生活面に特化したゴブリンと、戦闘能力の高い上位者であるオーガが共存していた。特に、人間達に鬼人と恐れられるオーガはラハムの森でも上位の力を持っており、並大抵の敵ならば問題は無かった。

それに合わせて、竜王の存在もあり今まで大規模な侵略は無かった。

しかし、今回の敵は今までとは異なっていた。約400人にもなる兵士達は全身をフルプレートで固めており、その中にはオーガを圧倒する力をもつ者の姿も見られ、集落は未曾有の危機に瀕していた。

その様子を小高い丘のような所から要達は見ていた。


「人間の兵士のようだな。お前達はあれらをどう思う?」


「要様の道を汚すゴミかと。」


「全て切り捨てるべきです。」


「遊べそうです!!」


「皆ごろ死で、良いかと。」


「わたしも・・やる気まんまん。」


要の問いに側近達が答えた。

どうやら、皆ようやく来た力を見せる機会に興奮しているようだ。


「そうか、皆の考えはわかった。

森を支配するといい回っておいて、人間に先を越されては示しがつかないところだ。あの人間共を殲滅せよ。

ただし、オーガと交戦している男が恐らく指揮官だろう。あの男は生かして連れてこい。リヴィアは済まないが私とここで待機だ。私のことを守ってくれるか?」


「御意のままに!」


「あるじさま・・守る!」


悪魔達は返事をすると、戦場に降り立った。

巨大なブレードを振るい、オーガ達と交戦していた男が悪魔達の異様さにいち早く気がついた。


「あれは、悪魔か?なぜこんなところに・・・お前達そいつらは恐らく上位悪魔だ!おれが相手をする!」


突如現れた悪魔達に向かっていく兵士達に男は叫んだが、すでに遅かった。

邪魔な蜘蛛の巣を払うように、兵士達はあっけなく肉塊となった。


「お前達は下がっていろ、儂がやろう。」


「ガ、ガデオン様!」


兵士達の前に現れたのは、ガデオンと呼ばれる老人だった。白のローブを纏い、手には水晶を先端に付けた杖を持っていた。


「ご老体、無理はしないほうが良いかと思うのですが?」


「そうだよ!おじいちゃん!大人しくしてたら痛くしないよ?」


そう言って、ベルゼブブとアモンが小首をかしげる。

その言葉に反応したのか、ガデオンが杖を2人に向けると、先端の水晶に魔法陣が現れた。


「悪魔共め!聖なる炎に焼かれよ!

 "ホーリーファイア"!」


そうガデオンが叫ぶと、ベルゼブブ達を光のように輝く白炎が包んだ。


「さすが、上位魔導師のガデオン様だ!

 詠唱も無く聖魔法を使うとは!」


ガデオンの勝利を確信したのか、兵士たちは騒ぎ立てた。しかし、幸福の時間は長くはなかった。


「なかなかに美しい炎でした。演出に使うなら良いかもしれませんね。」


白炎の中から何事も無かったかのように、悪魔達は現れた。

身体には火傷一つ付いていない。


「ば、馬鹿な!悪属性に効果を発揮する光属性の魔法じゃぞ!?何をした!」


「何もしてませんよ。確かに私たちにその属性の魔法は有効のようです。肌が多少ヒリつきましたよ。」


微笑を浮かべてベルゼブブは続ける。


「お返しといってはなんですが、私も1つ魔法をお見せしましょう。

 "地獄の黒炎"《ヘルフレイム》」


伸ばした右手に黒の魔法陣が浮かぶと、ガデオンの足元に同じように大きな魔法陣が現れた。そしてその魔法陣に入った兵士達も含め皆、漆黒の炎に包まれた。


「ぐぁぁぁー!」


焼かれる者たちの叫び声は、瞬く間に聞こえ無くなった。


「そんな、ガデオン様が一瞬で・・ば、化け物だ・・!」


「勝てるわけがない!」


魔法陣の外側に居た兵士達は、その光景を恐れ今にも逃げ出しそうであった。

その時、レイピアと呼ばれる細長い剣を持った騎士風の男が叫んだ。


「恐れるな!我らは誉高きキャメロットの騎士!悪魔風情に背中を見せるなどあってはな

らぬ!

 奴らは恐らく魔法に特化した悪魔だ。その分、本体の戦闘能力は高くないはずだ!

剣での分は我らにある!私に続け!」


「ぉお!ノーレス様!」


「そうだ、おれ達にはノーレス様がいる!

 皆!ノーレス様に続くぞ!」


ノーレスと呼ばれた騎士が鼓舞すると、逃げ出そうとしていた兵士達の目に力が戻った。しかしーー


「悪魔共よ!お前達は私が直々に相手をしてやろう!いざしょう・・ぶっ。」


いい終える前にノーレスの頭は巨大な灰色の手に潰された。


「ベルフェゴール・・あの人間、まだ話してたよ?」


「これが、先手必勝というやつだ。」


「なんか、微妙に違う気もするけど。」


気持ちドヤっとした口調で話すベルフェゴールにマモンが苦笑した。


「まぁ良いではないですか。

さて、指揮官らしき男は剣士のようですね。アスモデウスに譲りましょうか?」


「いいのか!ベルゼブブ!」


「良いですよ。はりきりすぎて、殺してはい

 けませんよ?」


「もちろんだ!いい具合にして連れてく

る!」


そういい終えると、アスモデウスは大剣を持つ男に向かっていった。


「それでは私たちは残りの虫達の駆除をするとしましょうか。マモン、ベルフェゴール1匹も逃さぬように。」


「承った。」

「おっけー!」


3人の悪魔はそれぞれ兵士の命を刈り取るべく動き出した。


「あるじさま、あいつら・・弱い。わたし出番こない。」


ふてくされるリヴィアをなだめる為、要は小さな身体を持ち上げ肩に乗せた。


「リヴィアよそういじけるな。

ほら、アスモデウスがあの男と闘うようだぞ?応援してやろうではないか。」


要の肩に乗せられ気分を良くしたのか、

打って変わってリヴィアは嬉しそうな顔をしていた。


「うん。応援する!」


悪魔と対峙する男は、一瞬その美しさに目を奪われた。

透き通る白い肌に桃色の髪がなびき、人では出せない怪しげな美しさがあった。

しかし、瞬時に意識を切り替えた。

この美しい悪魔は強い。今までの経験から男はそのことを分かっていた。自分と同等か、もしくはそれ以上の存在。

滅多に出会わぬ強敵との遭遇に心を躍らせた。

今回の任務に志願したのも、鬼人と名高いオーガと戦うためだった。しかし、オーガは強敵では無かった、そのことに落胆したがそれを帳消しにするほどの強者が現れたのだ。


「男、お前は要様の剣であるこのアスモデウスが相手をしてやる。光栄に思え。」


(名持ちか・・おれは悪魔にあまり詳しくないが国に戻ったら至急調べてもらうか。)


「おれはキャメロット王国、"円卓の騎士"の1人"剛剣"のガルム=アガレスだ!楽しい闘いにしよう!!」


「お前の名など興味はない。いいから、かかって来い、遊んでやる。」


優雅に抜刀するアスモデウスに、苛立ちを覚えたガルムの額に血管が浮かんだ。


「舐められたものだな・・!いくぞ!」


ガルムは身の丈ほどある、巨大なブレードをアスモデウスに振り下ろした。

身長197センチ、筋骨隆々の恵まれた身体をもつガルフのブレードは特殊な鉱石で作られている。

その性質は硬く、重い。他のどんな鉱石よりも頑丈な鉱石で作られたこのブレードは、長さ180センチ、厚さ約20センチ、重さ250キロ。剣というにはあまりに異様なものだった。

斬るというよりは叩き潰すことに特化したこのブレードは、ガルム専用に造られたもので、並大抵の剣士では振ることも不可能だった。

それを可能にするのが、ガルフの持つ祝福ー"天使の羽"の能力である。その効果はガルフが手に持つ1つの物質の質量を0にでき、ガルフに重さは伝わらない。

しかし、質量を感じないのはガルフのみで、他の者には重さが伝わる。なので、厳密に言うと"ガルフに掛かる質量を0にする"のが正しいだろう。

よって、250キロの重さを感じないガルフはその恵まれた身体でブレードを恐るべき速度で振るうことができる。

ブレードの衝撃は1トンを超えるだろうか、そんなガルフの必殺の一撃をアスモデウスはー


「ふん。やはりこの程度か、遊びにもならん。」


ー片手で止めた。


「ば、ばかな!!お前にこの一撃が止められる訳がない!おれとお前の実力は同程度のばす!!」


「何を言っているのだ?お前ごときと私の力が同等な訳があるまい。

お前が計れる限界がその程度なだけだ、余りにも力が離れた者同士では、見通しすらできんよ。」


「うぉぉぉー!!」

雄叫びと共にガルムはブレードを振り回した。力の限り。

しかし、アスモデウスは片手のみで全て防ぎ切る。


「こんなバカな事があるか!その剣はなんだ!なぜ砕けない!!」


「この刀は私と一心同体。刀の硬さは私の意思の固さ、要様への忠義の固さだ。そんな鈍に砕けるわけがないだろう。」

「もう、隠した力もないようだな。

それでは仕舞いにしようスキル発動ー戦闘姫せんとうきー桜花一閃ー」


瞬間ー桜の花びらが散るようにブレードが砕け、ガルムの丸太のような両の腕が落ちた。


「ぐぁぁぁー!!おれの腕が!!」


「本来ならばお前の身体ごと細切れにするのだが、生かさねばならぬからな・・この程度にしておこう。」


「アスモデウス・・楽勝。せっかく、男の方応援したのに。」


「ふふ、あの程度ではな。他の者もあらかた終わったようだ。私たちも降りるとしよう。」


要の前には役目をやり終えた悪魔達が満足気に跪いていた。アスモデウスの横には両腕を失ったガルムが転がっていた。

その後ろには生き残ったオーガとゴブリンも同様に跪いている。


「皆、ご苦労。良くやってくれた。」


「はっ!」


「アスモデウスその人間は、生きているか?」


「はい!ベルゼブブに止血をしてもらいましたので大丈夫です!今は意識を失っておりますが・・叩き起こしましょうか?」


「いや今はオーガとゴブリン達を優先しよう。この者は城に連れて行き情報を聞き出す。」


「承知しました!」


要は後ろのオーガとゴブリンに視線を飛ばした。生き残った者も傷だらけで、ひどく弱っているようだった。


「オーガとゴブリン達よ、私は安門 要という者だ。ここにはお前達を支配下に置く為に来たのだが・・私の支配下に入るか?ならばこのようなことは二度と起こさせないと約束しよう。しかし、断るのならば殲滅させて貰う。」


「発言する許可をいただきたい。悪魔の王よ。」


そう言ったのは武士のような格好をしたオーガだった。


「良いぞ。言ってみよ。」


「はっ!まずは我らをお救いいただき誠に感謝します!そして、我々一同は王の為に尽くし、恩を返したいと思っております!」


「助けたつもりは無かったのだが・・・従うならば安全を約束しよう。この後傷ついた者たちも癒やしてやろう。」


「あ、有難うございます!この恩に見合う働きをお約束します!」


「では、リヴィア癒やしてやってくれるか?」


「やっと出番が・・わたしにお任せ・・!」


小さくガッツポーズをしてから、リヴィアはオーガ達の前に立った。


「皆んなの傷を"治して"」


そうリヴィアが呟くと、傷ついた者たちの身体がみるみる治って行った。ざわざわと驚くオーガ達を見て、リヴィアはドヤっとした顔を要に見せた。


「ありがとう。リヴィア。これでラハムの森の制圧は完了したな。では皆城に戻るぞ、オーガ達はとりあえず集落の復活に勤しめ。では。」


要達は空間転移で城へ戻った。

しかし、オーガ達には突然消えたように見えた。夢でも見ていたのではないかとも思ったが、兵士の死体の山が現実であると物語っていた。


「あの強大な御力、あの方こそ我らが使えるべき闘神様だ・・。」


要が立っていたその場所を沈み始めた太陽が照らした。

なんてことのない風景だが、それがオーガ達には神々しく見え、皆が拝むように頭を下げていた。

こうして、ラハムの森の支配が終わった。


要はラハムの森を支配する際、密かにあるスキルを発動していた。

それは、"悪のカリスマ"である。このスキルは要の配下になった者に作用するもので、要への尊敬や信頼などの感情を著しく高め一種の催眠状態に落ちいる。


それは信仰に近いもので、個体差はあるが、いずれ要を神のような存在と認識するようになる。解除の法法は、より強力な精神攻撃を受けるか、要が死ぬことしかない。

しかし、このスキルには発動条件がある。要の支配下に入る旨を伝え、それを相手が了承しなければ効果が発動しない。逆に拒否されると嫌悪感や敵対心が同じように高まってしまい、殲滅という選択しか無くなる。

諸刃の剣とも言えるこのスキルを発動したのは、検証と歯向かわれても問題無しと判断した要の自信の現れだった。

このスキルを各種族の長達に要は使用した。

それからの細かな森の支配は、よりスムーズに行えるだろう。


そのことを知らない森の魔物達は少しずつ要の為に尽くしていくのだった。









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