1ー7 赤豚
今日三本目です。冬休みの間にかけるだけかいておきたいので、あげちゃいます。
ーー大英帝国戦争決定三ヶ月前 霧の間
「で、なにしに来たんですか?」
カーブは部屋に一人と一匹を押し込み正座させ、目一杯睨んでいる。
「さっきも言ったんだけどぉ、この空間からさつまいもの匂いがしたのできたんだぁ。それに森の中で不自然に隠蔽された空間があったらきになるで、ぐひゃーーー」
「ふざけているのですか?真面目な理由をいいなさい。」
豚が答えた理由に納得できなかったのか豚を尻尾で殴り飛ばし、追撃を加えようとした。
「本当なんだよ。カーブさん。この豚さつまいもに目がないのあなたも知ってるでしょ?こいつ最近食べてなかったみたいで、そこに匂いがする空間を見つけて無理矢理こじ開けたんだ。結局残り香だったけど…」
兄さんの顔をみる限り嘘をついているように見えないのだが、なんと間抜けな理由なのだろう。さっきの亀甲縛りされたカズサールを思いだし、そんな彼と一緒にいた豚ならそんな間抜けもやらかすかもしれないと思い至りいまも豚を殴り続けるカーブをなんとか止める。
「まあ、この赤豚ならやりかねないですし、それで納得するとしましょうか。」
やっと解放されるのかと安堵の息をはく1セット(カズサールと赤豚)。しかし、カーブさんは止まらない。
「で、なぜ赤豚は主と離れていたのだ?私はお前を城で一回も見たことがないぞ。」
「カーブ様?何の話をしてるの?」
また話に置いていかれそうになったコドは必死に問うが、カーブは淡々と答えた。
「なに、簡単なことだよコド。この豚は十二使が一体、火を現界の主に灯すもの、亥のピッグだよ。それで恐らくだが王子が主だな。」
「「え~~~??」」
2つの驚きの声が重なった。コドは兄が自分と同じ十二氏だったことに。同様にピッグから事情を聞いたカズサールはコドが十二氏であることもそうであるが、何気なく一緒にいたカーブが十二使だったことにも驚いていた。
「何で教えてくれなかったの?」
「いや、コドもいかに親しくても他言できないこと知ってるだろ?だから俺にも言わなかったんだし」
「まぁ、そうだけどさ…」
少し不貞腐れてるコドに僅かに溜飲を下げたカーブはコドの隣に腰を下ろした。
「それで?まだ質問は終わってないわよ。」
「あぁ、それはカズが言い出したことなんだ。俺は代々この国の王族に遣えることに決まってるんだ。それで、カズが生まれたときから子守りとしてずっといたんだが、7年前に俺の主に相応しいなぁって思ったからそれからはカズの十二使として動いてるんだぁ。」
王族に使えているような雰囲気は微塵も感じさせないピッグの様子にやはり侮れないなと少し間違った感想を抱きながらコドはカズサールの顔を見た。カズサールはコドの視線に柔らかい笑みを返すと
「それでな7年前に王都で果物屋の両親が亡くなった事件があっただろ?その事件の犯人全く人物像が見えなくて、また同じような事件を起こされたらまずいと思ったわけね。だから、俺が国外に出ることはできなかったから仕方なくピッグを調査に送り出したんだ。」
「ん?待って。それじゃあ、僕のこと孤児院にいたときから既に?」
「あぁ、黙っていてすまなかった。これを言うとどこかに流出したとき怖いからな。ずっと言えてなかったんだ。騙すような形になってごめんな。」
「ううん。いいの。教えてくれてありがとう。カズ兄が一人になった僕をずっと見守っててくれたんだって知れて嬉しいよ。」
「コドは本当に優しい子だな。」
カズサールは本当に嬉しそうな顔をするコドに兄と慕われていることをとても誇らしく思えた。
「なるほど…思いがけないところで繋がっているものだな。それで、分かったのかい?」
カーブが聞くと、コドは少し苦しそうな顔をした。そんなコドをみて申し訳なさそうな顔をしながらカズサールは頭を撫でた。
「それが、ずっと探し回ったんだがなにもなかった。いや、、一つだけあるなぁ。」
ピッグはカーブに確かめるような視線を向けた。それを不思議そうに見るコドにカーブは難しそうな顔をしながら
「そうか、やはり私の毒が使われていたのか…」
「そうだったんだ。この隣の部屋にあった毒物の中に全く同じ匂いのものがあったんだぁ。」
コドもその話を今までたててた予想と照らし合わせてるのか頷きながら聞いている。その様子に少し安心したカーブはピッグに顔を向け険しい顔をした。
「やはり我らの中に危険因子がいるな…」
「そうなってしまうな。被害者であるコドが信頼している姉貴がやったようには見えないし、他のやつらが関わっているのは確実だなぁ。」
「あんたしっかり私を容疑者にいれるのね。まぁ、証拠はあるからなんとも言えないけれども、後者には賛成だな。この霧の間に来るには十二使の認証が必要だからね。ただ、全く心当たりがないんだよね。」
「まあ、ここで話してもなにも出てこないでしょう。またなにかわかったら一番に伝えますんで。」
「ん?これから城に住むのではないのか?」
「そうですよ。でもこれからはカズが外に行く番なんでぇ」
「カズ兄、国を出ていくの?」
これから戦争もあるし、もっとも親切に接してくれるカズサールがいなくなるのことに不安を隠せないコド。
「急にすまんな。本当はなにも言わずに出ていく予定だったのだが、知られたもんはしょうがない。明後日出発予定だ。それに国のことは父上がいればなんとかなる。あの人は凄いからな。」
意外とあっさりと答えるカズサール。その様子に自分は邪魔なのかもしれないと感じたこどであったが、カズサールは出発するその日までコドに今まで話せていなかった自分のことを全て伝える勢いで話続けた。コドは安心させようとしてくれるカズサールに心のなかで何回もありがとう、大好き、と繰り返しながら兄の話を聞いていた。
そして、カズサールはハワイ王国を出立した。ただ、少々問題があってピッグとともに行くことになった。理由はやはり王子が一人で国外に出るのは危険であるからであろう。見送りを受けずいつの間にか旅立っていった兄にせっかちだなと呆れつつも兄が帰る場所は自分が守るんだと決意を新たにするコドであった。そんな彼をたっぷり愛情を込めた目でカーブが見つめていた。
「そろそろ頃合いですね。今なら十分乗り越えられるでしょう。」
カーブの独り言を聞いたものは一人もいなかった。
コド視点がこれからしばらく続きますが、ご了承ください。一応主人公はカズサールとコーシの予定です。
最近話しばかりでしたが、いよいよ戦闘が本格化してきます。話長いわ!と思ってたかたは是非楽しみにしていただけると嬉しいです。