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1ー4 一週間

主人公はだれだったっけ…

 体が冷たく感じる。真っ暗な世界だった。僕は死んでしまったのか。親の仇に自分も殺されて…。両親が死んでから親が死んで泣いた自分がまた悲しいことで泣いたとしたら、その事が親の死と同等になってしまうと考え、どんな悲しいことがあっても泣かないと誓っていた彼も、敵を打てなかった悔しさと自分の情けなさ、そしていざ敵を前にして自分が親が死んでからなにも前に進んでいなかったと気づいて生かされていた自分がどうしようもない人間に思えてしまい流れるものはとめられなかった。

 涙が流れる度にからだに熱が戻っていく。視界に光が戻っていく。体が動くことを確認し、涙を拭うと目の前に蛇がいた。ピンク色のかわいらしい蛇が僕の意識が回復したことに安心したのか穏やかな顔をしていた。

 「私がわかるかな。」

 無機質な声が頭に響いた。

 「君はなぜ私にあんなにも明確な殺意を持ったんだい。」

 直接響く声に動揺しながら、いまこのヘビに掴みかかっても勝てる状態でなく、自分を害する気がないのがわかると、

 「あなたは僕の両親を殺したんでしょう?あの毒とあの槍を使って。」

 黄色い目を見開いて一拍

 「………そういうことか。はっきりいっておくが私はご両親を殺めてなどいない。というより、不可能だ。私はここ50年生まれてからここを出ていない。いや、出られないんだ。」

 一瞬苦虫を潰したような顔をしたが、いつもの蛇顔で答えた。

 「どういうことですか?」

 「ちょうどその件について話をしようと思ってたんだ。私たちについてだ。君は十二使について知っているかい?」

 「十二使」という言葉をこの世界で知らないものはいないであろう。この世界を統べる帝王達が現界に派遣した十二体の使い魔だと言われている。コドも小さいとき両親に絵本を読んでもらったことがある。

 「知っていますが…」

 「そうか、なら話が早いな。私達は使命を刻まれ派遣された。その使命を果たすためには相応しい主を見つける必要があった。だから私は陽射しの森に入り込んだ毒に適正のあるものをこの霧の空間に招き私と戦わせ主となりうるか見極めようと考えたのだ。」

 続く蛇の話によると、その使命は口外できないということ。主を見極めるのは十二使であり、帝王達の認可はいらないということ。そして、

 「君の名前を教えてくれないか。」

 「コド。コド·クリスティンです。」

 「コドか。いい名前だな。私は十二使が一人。毒を現界の主に享受する者、(ヘビ)のカーブ。コドよ、我が主になってくれないか?」

 カーブは真っ直ぐ目を見て問う。十二使の話を聞いてからなんとなくそうなることは予想できていたが、やはり驚かざるを得ない。なにせ、この世界の支配者の使い魔の主になれるというのだ。国王なんかよりずっと偉大な存在のだ。正直自分にできるきなどしない。そしてなにより、

 「なぜ、僕を?僕は毒によって両親を失いました。そして僕は毒の力を持っている。それだけでも呪われていると言えるのに毒を使う十二使の主になれと言うのですか?」

 「強制ではない。ただ、コドは一度浴びた毒を自分の力に変えて使うことができる。また、その毒の効果を二度目以降はほぼ無効化することができる。そしてなにより、自分の体内にあるあらゆる物、勿論体内で作られ得る毒(今までくらったことのある毒)をも使い自分だけの毒を作ることができる。私が知らない毒を使ったのはこの能力だろう。これらの能力はたとえ相手が毒使いだとしても有効な手段になる。我が主に相応しい力だ。」

 先の戦いで僕の能力を分析したのであろう。言われてみれば毒使いとしてなかなか有能な人間だと自分でも思う。毒を知っているものにも知らないものにも有効な手段を持っているのだ。カーブからしたら離しがたいちからであろう。

 「確かに僕の力はあなたに魅力的なのかも知れない。でも、僕は毒にこれ以上左右されたくないんです…」

 呪われた毒の力を持っていることだけでも許しがたいのに、これ以上毒に狂わされてたまるか。コドは嬉しさとは真逆の感情を沸き上がらせていた。そんなコドを見て

 「…………君の両親の仇を知っているとしたら?」

 場の空気が一気に冷え込んだ。コドの周りの空気が紫色に変わっていく。

 「君が両親を殺したものを憎んでいることはよくわかっている。その復讐を私も手伝っても構わないぞ。そのついでで、私の協力をしてくれればな。」

 魅力的なことこの上ない提案だった。ただ、

 「少し考えさせてください。」

 コドは再び布団をかぶりこれ以上今は話せないと目を閉じた。





 

 カーブは、寝息をたて始めたコドをみて冷たい体を頭に擦り付けていた。

 「君の大切なものを奪った力と同じ毒の力を使うことを強制するようなことを提案した私は非情なのでしょう。ごめんなさい。コドよ…」

 自分に向けられた殺意は本物だった。あれはこの年の子供がもつような大きさのものではない。カーブには両親などいないから失っ悲しさなど理解できないが、自分を遣わせた帝王が死んだら私も悲しいであろう。大切に育てられてもいないが生み出してもらっただけでそうなのだから、理解などしてはいけないのだろう。でもせめて、なにか前向きな目標をもってほしい。仇をうつという私と対峙して生まれたマイナスなものでなく、達成したとき自分を温かいもので満たしてくれるようなものを。カーブはコドを昔から知っているようなそんな気持ちを感じながら親が息子に向ける愛情を感じさせるような目で彼の顔を観ながら全身でコドの頭をなで続けた。少しでも自分が解毒出来ればとそう願いながら。









 半日ほど寝たのだろうか。疲れも吹き飛び、体を起こすとピンクの蛇が頭の上にいた。

 「おはようコドよ。なにか食べるだろう?少し待っててくれ。」

 その日からカーブはコドを病み上がりの息子に接するように森でとってきた動物や拾ってきたきのみや野草を上手く使った料理を作り、体をふいたり、世間話をしたりした。カーブは人間体と蛇を自由に変えられるらしく人間体は美白のスレンダー美女であった。戦ったときの男の姿にもなれるらしいが、あの姿はそれっぽさを出すための姿でありきにいっていないらしい。

 コドもそんないたれりつくせりの生活に少しずつかつての温もりを思い出していた。両親本人ではないにしても、とっても大切に接してくれるカーブの姿におやを連想させるのは自然なことであった。自分を主にしようとして尽くしているのかもしれないと思ったが、注いでくれる愛情を偽物だとするのは無理があった。もしこれが演技だとするのなら自分の見る目がなかったと納得できるだろう。







 一週間後、完治したコドはカズも心配であるし、ここを出ていくことを決めた。その事をカーブに伝えると少し寂しそうな表情をしながらも、

 「そうか、気をつけていくんだぞ。」

と、意外とあっさりした対応で見送ってくれた。餞別としてなのか、出ていくときに持っていた短剣より上質な短剣を渡してくれた。

 霧を抜けると、見慣れた赤毛の少年が手を振っていた。

 「意外とタフなんだな。無事でよかった。」

頬に水滴を流しながら抱きついてきた王子を受け止めながら、この一週間与えてもらった温かさを思いだし、そこに友人とも言える王子の温かさも重なり

 「ただいま。」

 コドは笑顔で目元に滴を光らせながら言った。


これからも、一週間に一回のペースであげていきたいと思います。応援よろしくお願いします。

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