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1ー3 巳

 「私の強い神経毒に触れたのにあまり効いているように見えない。君は不思議だな。肩に触れようとしたということは私が人間に見えているということだろ?幻覚は作用してると……」

 男は僕の体をじろじろ見てくる。とても居心地が悪い。ただ、それよりも男の言う「神経毒」の痺れた感覚があの日に触れた毒に犯されたときに似ていた。いや、全く同じだった……

 「あなたは何者ですか?ここはどこですか?どうしたら出れるんですか?」

 「その疑問はもっともだな。うーん………人間ではないな。クリーチャでもない。ここは私が作った空間だ。私を倒すか、説得するかすれば出れる。」

 僕はさらに混乱した。人間でもクリーチャでもないのならなんのか。さしてなぜ、自分で招くようなことをしながらご丁寧に脱出方法を教えたのか。その困惑を読み取ったのか男は微笑を浮かべながら

 「私の存在は訳があって()()言えない。そして、ここからは私を倒さないと出れない。これが私の説得条件でもあるからだ。」

 「毒……」

 コドは苦しそうに静かに呟いた。そして、現時点でさっきの毒の感触は確実に事件のときのものと同じだと言える。いま、自分の体内で作られている同じ毒になんの違和感もなく合流したからだ。

 「あなたは私の両親を殺しましたか?」

 それを聞き、一瞬浮かべていた笑みを消したあと、また笑って

 「それは君が試験を乗り越えたら教えようか。」

 その言葉が言い切られるや否や背後に寒気を感じ咄嗟に真横に跳ぶ。着地と同時に金属音がなった。先程まで立っていた場所には忘れもしないであろうあの槍が硬い地面に刺さっていた。それを見た瞬間、コドは全身が冷たくなった気がした。体は小刻みに震え、腰から短剣を取り出そうとした右手は止まり、視界は槍だけを捉えていた。直後体の底から得たいの知れない熱いものが込み上げてきて、それが手の指の先に流れていき、紫色の長い鋭利な爪が形成された。脳は思考を放棄し、ただ目の前の男を殺そうと駆け出す。脳の制限が外れたのか残像を残すような速度で接近し右上から爪を振り下ろす。男は反応しきれなかったのか、体をえぐられてしまう。が、コドは手応えを感じず、ノールックで先程槍のあった方向に左手の爪を飛ばした。硬質なものがぶつかる音が三回と呻き声が二回響いた。そして、爪を飛ばしたのと同時に槍に向かって駆け出していたコドの右手の振り上げを辛うじて男は後方に下がることでかわす。

 「先程と様子が違う。どうやら相当な殺意を持たれたようだ。これはこれで面白い。それにこの毒は私の知らないものだ。オリジナルのものかな。ますます興味深い。」

 男が笑うとコドは腹部に衝撃を受け後方に飛ばされた。重い一撃に血が口から出てしまう。もともと、戦闘などとは縁のなかったコドは殺意にとらわれて攻撃していたものの衝撃で頭を冷やされてしまった。それは、自分が殺し合いに身を投じてしまっていることを自覚させ、途端に恐怖を感じさせる。それでも、親の仇である男になんとしても復讐をしたいと思うコドはその気持ちだけでなんとか立ち上がり、顔をあげ男を睨もうとしたが、

 「えっ?」

 そこには、男の姿はなく、体長二メートルほどの蛇がふとい尻尾を振りながらこちらを見ていた。

 「驚いたか。人間の姿に見せかけると全く戦えないのでな。幻覚の類いはもう効かないらしいし、本来の姿でいかせてもらう。さぁ、私を倒してみよ。」

 「あなたの正体が何であれ、僕はあなたを殺らなければならない。僕のために。」

 蛇の姿に臆することなく再度紫の爪を構成し直進する。尻尾を打ち込もうとしてくるが、それを爪を使い上手くいなしていく。これは、カズサールがクリーチャと戦うときにゴリラの硬い拳を剣でいなす動きを真似たものである。見ただけでそれを再現し、且つ成功させ、蛇に肉薄する。今度は両手で爪を振り下ろした。まさか、蛇は、尻尾をいなされると思わなかったのかぎょっとし、顔だけはなんとか後ろにのけぞるようにし致命傷は避けたものの腹に深い傷を負った。それを見もせず、すぐに爪を全て蛇の傷に向けて放出する。鋭い悲鳴が上がる。

 「君の毒はなんなのだ。私にこんなにも効果があるなんて。もしや……」

 蛇はぶつぶつ話しながらもこれ以上は受けてたまるかと、再び爪を生成し攻撃しようとするコド向かい口から毒霧を吐き出した。反撃を想定してなかったコドは無防備にそれを受けてしまい、全身に倦怠感を感じ、受けた場所の衣服は溶け素肌は爛れてしまった。

 「なぜ、君の使う毒よりも弱いものを使ったのにこれが効くんだ?まさか、君は…」

 蛇は何か驚いたような表情をして、その後苦しむコドの様子と今までの戦いから何かを導きだしたのか、

 「もういいだろう。君は僕の試練をクリアした。少し話をしようか。」

 そういいながら、蛇の体は小さくなっていき30センチほどになった。体の色も毒々しい紫と白の斑模様からかわいらしいピンク色になった。

 いきなりの蛇の変化と言葉を理解するのにコドは少し時間を使い、そしてすぐに蛇を睨み付ける。

 「あなたは僕の家族を殺したんだ。僕の復讐が成功するか、失敗するか、それまで勝手にやめることなど許さない。」

 再び蛇に殴りかかろうとするが、慣れない動きとほぼ初使用である毒の力の使用、そして毒のダメージが一気に現れコドは顔を地面に落ち着けた。

なんとか書き終えました。あと1話すぐに編集します!

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