1ー19 神火の戦い
若干名前に変更があります。
カズサール・ドート・ヒートリル
→カズサール・ムヴァ・シルバー
雷の十二氏
イカズチ・ライ
→シルエット・フォール
ロベリスタ王国の刀使い
ユグ・ソウ
→アルバート・ソウ
その奥さん
ユナ・ソウ
→ユナ
に変更しました。
直っていない箇所がありましたらご指摘お願いします。
ーーハワイ王国 近海 帝国船上 カズサール王子
「お前は誰だ!」
カズサール突如現れたコーシから感じる底知れない力に警戒を最大限にして一歩前に出る。
「俺からしたら初めましてではないのだが、お前は覚えていないのか。やはり抜けているな。」
会った記憶のない男から呆れたような失望したようなことを言われたカズサールは怒りよりも困惑が勝った。
が、周りのハワイ兵は自国の王子を馬鹿にされたのだ。黙ってはいられず。言い返している。コドなんかは先程の戦いで力をほとんど使いきっているのに、今にも飛びかからん勢いだ。
「待て。質問に答えろ!お前は誰だ!!」
カズサールは怒る部下達を制し、先程からよくわからない男の素性を知ろうとする。そんなカズサールを見てやはり見下した様子で
「お前たちの国を襲っている大英帝国の主コーシ・ドート・レクトルだ!!」
その名を聞き、皆がそれぞれの反応をし、コドとカズサールなどは、すぐさま元凶を仕留めようと飛び出そうとするが、それは敵わなかった。コーシから大きなエネルギーが発せられ、コドとカズサールはなんとかその衝撃に耐えられたが、他の部下達は皆隣の船まで吹き飛ばされてしまったのだ。
「なんて、威圧感だ…。」
背中に冷や汗を流しながら、カズサールは思わず呟いてしまう。豚さえいればまだなんとかなっただろうが、自分達、とくに先程の衝撃に耐えたせいで立つのも辛いであろうコドと戦うなど無謀だと何者にも明らかだ。普段抜けまくりな王子であるが、戦場で活性化されている脳を総動員して、生き残れる可能性は極めて低いが、まだ可能性がある1つの策を思いつく。
「コド、すまない。」
振り替えってコドに謝罪の言葉を述べると共にコドを蹴り飛ばし、隣の船に乗っけたのだ。突然蹴られて甲板に叩きつけられたコドは状況が理解できずもう立ち上がることはできないためうつ伏せで兄のいる船に向かって大声で意図を問う。
「なぜ、僕を蹴り飛ばしたのですか!数が多い方がまだなんとかなるでしょう?なぜですか!」
「俺が引き受けた!お前らはその船だけを命懸けで守れ!」
普段かわいがっている弟分のコドの質問にも答えず1つの国の王子として命じる。
「ただし、死ぬことだけは許さない!!!」
一方的に宣言し終えると、帝国の王に向けて《竜武斬》を構える。
「さて、王様よ!侵略によって失われた命に対して詫びとしてここに首を置いていけ!」
全身に火を纏い、波鎧も展開し諸悪の根元を睨み付ける。ただ、そんな要求に頷くはずもなく、
「俺に勝てる想像ができてて幸せだな。まずは、お前からだ。」
あくまで見下しながら、コーシも力を解放する。大量の白いオーラがコーシの背中に周り、ついには2対の羽となる。その優れた容貌も合わさって本物の天使のようだ。その変貌に流石に驚き、そして緊張を露にする。なぜなら、白の力といのは12系統の神に当たるからだ。神と反する魔は稀少な属性でかつ、他の10系統よりも強力だと言われているからだ。その上、一目見ただけでその力を自分が火を操るよりも上手に使いこなしているのがわかる。これで緊張するなと言う方が無理だろう。
「くそっ!神の力か!相手にふさわしい。」
仲間を安心させるため。そして、自分を奮い立たせるため。強気の言葉を発して火を腕に収束させる。
「さぁ、来い!火の十二氏よ!」
コーシの言葉が開始のゴングとなった。
「落とせ! 『火拳』」
迫る火の飛んでくる拳を羽を使って上空に飛びかわす。かわされた火拳はそのまま直進し船尾を吹き飛ばした。
「今度はこっちからだ!天空波!」
空を飛ぶコーシのつきだした右手から白透明の波動がカズサールのいる船に広がり、重力の10倍の力が船とカズサールに襲いかかる。船の甲板の木は激しく軋み、避けようとしたカズサールも隣の船には移動することができず、船上で両手両足を地面につけ押し潰そうとする力に耐える。
「カズ兄!」
「隊長!」
「カズサール王子!!」
皆がカズサールに心配の声をあげる。それに対して、カズサールは維持で右手の親指をサムズアップさせてにっこりと笑った。
「俺は大丈夫だ!お前らは離れとけ!巻き込まれたらただではすまないぞ!」
どう見ても無事ではないカズサールだが、自分達が邪魔になってさらに状況が悪くなっては本末転倒だと苦渋の決断をし、大きくカズサールの船から離れようと動き出す。
「船は任せてください!兄さんも絶対に戻ってきてくださいね!」
コドの言葉に頷きを返し、『天空波』になんとか耐えながら船が無事後退できたのを見送った。船に攻撃しようと思えばできたものの、コーシはただそれをみていた。
「見逃してくれなのかなんだか知らないが、これで気を使う必要もない。全力でお前を落とす!」
カズサールは胸に手を当てて本気にいたる扉の鍵をあける。
「豚がいなくて本調子ではないが、こんな退屈な重圧を吹き飛ばすことはできる!さぁ、俺の中の火を燃え上がらせろ!シンボル・レギウスフレイム!!」
瞬間、カズサールの周りの重圧は吹き飛び、赤色の装甲が体の各部を包み込む。波鎧もやや赤透明になり、可視化出来るほど濃密な物になっている。
「火の十二氏の力!ここらが本番だ!」
カズサールの乗っていた船は『天空波』とレギウスフレイムのエネルギーに耐えられずボロボロに崩れ、破片がやや海に浮いてるだけの状態になっている。
「やはり、凄まじいな。だが、届かなければ意味はない!」
コーシはカズサールの紋章の出力に感心しながらも空を飛んでいる自分に当てなければ意味がないと言う。
「届かないなど誰が決めた!王だからって何でも決められると思うな!!」
空から見下してくるコーシを睨み付け、カズサールは腰辺りから火を一気に噴射し、その推進力で1秒程でコーシの目の前に着く。流石にそれは予想できなかったのか、なんとか腕をクロスして防御しようとするが、そんなもので止められるほど火の十二氏は甘くない!
「跳べば届くんだぜ!食らえ神様! 『炎拳』!!」
カズサールの炎に包まれた両腕が肘から火を噴出させることによりさらに威力を増して、コーシに襲いかかった。たまらず、コーシは吹き飛ばされ、海には落ちなかったがそこらじゅうの海面に浮いている船の残骸に叩きつけられた。
「どうよ!神様!効いただろ?だが、まだまだこれからだぜ!」
「すごい…!カズ兄!」
遠く離れたとこから見ていたコドも兄の始めて見る本気の戦いにあっとうされていた。
再び火を腰から噴出し突っ込んでくるカズサールに対し、コーシは沸き上がってきた血を口からはきだし左胸に手を当てる。
「それでこそ、希望を与える十二氏だ!俺も久々に使おうか!シンボル・レギウスゴッド。」
コーシの宣言と共に眩い光と威圧がコーシを中心に広がった。追撃を与えようとしていたカズサールもたまらず逆噴射し、もといた船の残骸の上に戻る。
「さて、第2ラウンド開始だ!」
「くそ、十二氏だったのか。めんどくさいことになったが、やることは変わらない。また背中を叩きつけてやる。」
紋章の力を解放したコーシは段違いに強かった。一撃一撃の重みも、飛翔速度も前の比ではない。それに対しカズサールは長期戦になったら確実に勝てないことをふみ、体の中の全エネルギーを出しきるつもりでそれに対抗した。相手が空中に対してカズサールは沈没船の残骸をうまく足場にし、翻弄しながら火を噴出させ接近して戦った。なんとか絞り出せた力でコーシと打ち合うことができている。
「本当に強いな、お前。バカじゃなかったら本当に最高な奴だ。」
「バカバカうるさい。余裕ぶってんじゃねぇ!」
この言い合いの中でもコーシはカズサールに5発の拳を放ち、それをカズサールは剣と体の各所から火を噴出した立体的な動きでさばいている。
「しかし、もうそろそろ出力切れだろう。残念だが、ここで終わりだ。」
「うるさい!終わるのはおまえだ!」
カズサールも自分のエネルギーが尽きかけているのが分かるのか、せめて重症を追わせて撤退させるため、体を覆う波鎧を全て解除し、両腕に何層も展開した大技を放とうとする。
対するコーシもそれを全て叩き潰そうと右腕を前に出し、先程放った『天空波』をより貯めた状態で放とうとする。
「「吹き飛べ!!!!!」」
二人がそれぞれの技を繰り出そうとしたとき、二人の中央に大きな海水の竜巻が起きた。
二人ともそれに飲まれそうになり慌てて避ける。
その竜巻がはれると、両手に弓矢を構えコーシとカズサールそれぞれに向けた青い装甲を全身に身につけた少女が水球にのって浮いていた。
「私の海を荒らすのはお前たちか!!」
突然の登場にすぐ返答できないでいると、
「おい!よくアタイの船をやってくれたね!」
「損害賠償よこしなさい!」
いつからいたのか、商船と思われる船から女性2人が文句をいいながら、カズサールとコーシにむけて、その船の大きさと全く釣り合わないほど大きな魔導砲台を構えていた。
一旦ハワイでの戦いは区切ります。
次回からは帝国の開戦からここまでにあったことにたいする他者視点の話になります。
だんだんと一章も終わりに近づいてきました。
これからもどうか応援よろしくお願いいたします。