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1ー18 乱入者

 突っ込んでくるカズサールにグレーを囲んでいた側近達が前に出て応戦する。グレーの側近4人は皆がAランク衛民に匹敵する力を持っており、通常手練れでも2人を相手するのがやっとだ。

 だが、カズサールは怒りに燃えながらも敵の力を対峙したときに把握しており、常に船の限られた広さを利用し、裏をとろうとすると、すぐ海に落ちるように手すりギリギリを動き、2対1になるよう立ち回っていく。

 「お前被ってて動けねーよ!」

 「裏に回れよ!」

 「うるせー!裏回ったら海に一直線だわ!!」

 思うように数の利を取れない側近達はイライラを募らせていく。

 「4人で俺を倒せないなんて、帝国も大したものじゃないなぁ!」

 一方カズサールは挑発をしつつ、相手に決定的な隙を作ろうとするが、腐っても側近に選ばれる程であるそんな致命的な隙など作られはしない。それに、ここまで暴れまわりかつ、強者4人を相手にしているカズサールにも体力の底が見えてきて本人は焦っているのだ。なんとかならないかと考えていると、天はカズサールに味方したのか、耐えられなくなった側近2人が、他を置いて突出してきたのだ。これを見逃すカズサールではない。罵詈雑言を吐き、殺意に満たした目線で剣で刺し殺してやろうとする2人にタイミングを合わせ、一瞬だけ攻撃に全ての固有波をのせる。波鎧を着た愛剣《竜武斬》は透明であるはずの波鎧を可視化するほどに纏っていた。その剣を2人の上から下ろした剣に合わせて横一文字に振るう。

 「王子の首を俺が!」

 「さっさと死ねぇ!!!」

 「うるせぇ口だな!俺が閉ざしてやるよ! 「波鎧流·奥義·武装龍(ぶそうりゅう)」!!」

 奥義の名が冠された一撃が2人を襲う。剣は真っ二つに切られ、体も胸部の上下で分かれていた。2人は切られたことすら分からず絶命させられたのだった。

 ふぅと息を吐き、再び全身に鎧を纏い残り3人に向けて歩き出した。

 

 



 Aランクがあんなに簡単にやられるのか?側近達は高圧的な性格で素行も問題であったが、実力だけは兵士の中に入っても上位に入る者達だった。そんな2人が目の前であっさりと真っ二つになったのだ。自分では敵わないであろう男に恐怖で足がすくむが、防衛反応なのか無意識に後ろに足が動いていた。

 「このば、化け物が!お前達私を守るのだ!!」

 指示を出された残りの2人だが、やはりと言うべきか守るという指示にすぐに反応できないぐらい仲間の死に衝撃を受けていた。数秒後言われたことを理解すると、もう敵わないと考えたのだろう。もしくは近づいてくる恐怖に耐えられなくなったのか、喚きながら1人ずつ特攻していった。

 そんな牙の折れた攻撃など怖いものではなく剣で軽く捌き、1人は顔面に火拳(フレイムパンチャー)を叩き込み、もう1人は剣で胸を指し、息の根を止めた。カズサールは残りのグレーを倒そうとグレーに視線を向けると、もはや戦う気もないのか土下座をしていた。

 「カズサール王子!どうかお慈悲を!私の力は見たでしょう。生かしてくだされば必ずあなたの役に立ちます。どうか、どうか命だけは。」

 会ったときの堂々とした態度が嘘だったかのように命乞いをしていた。カズサールは無言で近づいていく。大声でみっともなく叫んでいるためか、戦っていた兵隊も戦いをやめ平伏すグレーと、剣を片手に近づくカズサールを見て情勢を悟ったのか、剣を手放し膝をつく帝国兵もいた。一方で自分達の長がみっともなく頭をついているのを見て、怒声を上げ、グレーを罵る者達も少なくなかった。グレーは敵だけでなく味方のヘイトも買ってしまったようだ。

 「お前達は身勝手かつ自己中心的な理由で俺達の国に攻めてきた。許すことなどあり得ず、あまつさえお前を使うことなどあるわけがない!!俺の剣の糧となれ。」

 いつになく怒りに満ちたカズサールは失望の言葉と共にグレーの首を切り落とした。

 「抵抗するものには容赦しない。この船はハワイ王国が頂いた!来るなら来い!叩きのめしてやる!」

 大半の帝国兵は武器を捨て膝をついたが、忠誠心が高いもの達はカズサールに立ち向かい、命を散らせていった。その様子に抵抗するのは無意味と帝国兵は心をさらに折られたのだった。








 最後の足掻きを一蹴したカズサールのもとにハワイの兵隊が集まった。

 「なんとか船を手にいれることが出来たが、まだ終わったわけではない。コドの方に大将がいるはずだ。俺だけで向こうに乗り込む。そのために船を近づけて欲しい。」

 現在カズサールの乗っている船は敵の大将とコド達がいる船はやや離れており、乗り込むことが難しい。カズサールは船を動かすことができないので、部下に頼んでいるのだ。

 「分かりました!必ずコド副隊長を連れ帰ってきて下さい!」

 普通ならば王子が1人で乗り込むといったら反対するだろうが、先程見せられた力と普段から見せているカリスマ性も後押しして、彼なら1人で帰ってこられると完全に信じている彼らは逆に邪魔になると思い、自分達のやるべき仕事をすることにしたのだ。言葉を発した1人で敵の中に突っ込んでいったとき無事を祈った彼はカズサールならまたやってくれると信じて、普段は暗秘(シャドウズ)として動いている半分の兵もなにも疑っていないようだ。

 「ありがとなぁ。」

 戦場という場を忘れたような心からの感謝をカズサールは信頼してくれた部下達に返した。















ーー 大英帝国 大将船 コド·クリスティン

 「これで止めです。 『刺十突(サステンツ)』」

 コドがレギウスポイズンの力を使い、10の連擊で急所を差し、大将マーシャル·ルーザーを倒した。

 「お疲れ様です。副隊長。」

 普段から側付きで世話を焼いている女が労いの言葉をかけた。

 「みんなもお疲れ様。敵を縛って抵抗を押さえてくれたお陰で集中して戦うことが出来たよ。」

 コド達は乗り込むとき、敵の力を無効化するコドの毒でできた特殊な網や縄を用いて粗方敵を無力化したため、一般兵にとまどることはなかった。

 大将との戦いも最初は苦戦したが、レギウスポイズンを使い、時間ギリギリで倒すことが出来たのだ。

 「おっ、無事なようだな!」

 丁度近づいた船からカズサールがコド達のいる船に乗ってきた。

 「大将を倒すとはお前も大物だな!コド。」

 「カズ兄も、無事で何よりだよ!」

 お互いにいくらかの切り傷があるが、本物の兄弟のような絆がつないでいる2人はとにかく無事を喜びあった。






 ひとしきり喜びあった2人は遅れて乗り込んできたカズサール達の兵とも合流し、とにかくハワイに戻り、捕虜の対応を国王達と話し合うことにした。そのため、一旦戻ろうと船を動かしたとき、突如船の甲板の上の一角が光り、1人光を纏った男が現れたのだ。

 「随分とやられたものだ。さすがは十二氏だな。ただ、この船はうちのだ。返してもらおうか。」

 大英帝国 王 コーシ·ドード·レクトルが突如現れたのだ。

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