1ー11 白赤黒
お久しぶりです。更新できていませんでしたが、なんとか続けていきたいです。
「さて、本題に入ろうか、赤豚よ」
白い毛に覆われたサルがピッグをにやけながら見た。
「相変わらず神の名に恥じるしゃべり方だなぁ、サル。こっちは何も知らず拉致されたも同然なのながなぁ。」
カズサールは気絶したまま別の部屋につれていかれ、反抗しても勝てる相手ではないため何も言わずサルについてきたが、あまりの急な問いかけに戸惑い、そして少しの怒りがにじんだ言葉を返した。
「そう焦らず。ひさしぶりにゆっくりはなしましょうお二方。」
その言葉遣いのやわらかさとは違った厳かで重みのある声が響く。ピッグがつれてこられた部屋にいた最後の一人が口を開いたのだ。
「ひさしぶりですなぁ。リュザーク先輩。お元気そうで何よりです。」
ピッグが敬語を使う数少ない相手の一人であり、何を隠そうピッグに戦い方を教えた師匠でもある。リュザーク。魔の力を司る龍の十二使であり、十二使の中でも一目置かれる存在である。
「ピッグは少し鼻が鈍りましたかな。また修行でも一緒にしませんか?」
「先輩、それは勘弁してください!」
例にも漏れず厳しいという単語の意味を辞書で引き直したくなるような、或いは自分の修行経験をそのまま辞書にのせて欲しいと思ってしまうような過酷な修行を経験してきたピッグはもうこりごりだと即答した。
「それは残念ですね。あまりにも怠惰にしていたら強制施行ですがね。」
冗談とも本気ともとれる言葉に冷や汗をかきながらも無言でうなずくピックであった。
「旧交を深めたところで今度こそ本題だ。」
サルが取り仕切るように二人に目配せした。
「薄々気づいてるかもしれないが、十二使ならびにその使い手である十二氏を集めなければならなくなった。」
その言葉にピッグはまるで想定してなかったかのように驚いた。
「少し待て、サル。なぜ急にそんなことになっているのだぁ。それにお前の国は今宣戦布告してるではないかぁ。」
「名目上帝国は領土と資源目当てに侵攻することになっている。しかし、俺とイヤの二人だけしかしらないところだが、真の目的は十二氏たちを見つけ、集めることだ。」
「何故わざわざ市民に危険が及ぶことをしようとする?それさえ教えてくれれば捜索は手伝うというのになぁ。」
ピッグにはサルの思考が理解できなかった。なぜ、そんな個人的なことのために関係のない人たちに危害が加わるような手段をとるのか。しかし、次の師匠の言葉で口をつぐむことになった。
「今のままでは十二人集まったところで襲い来る敵に対処できないのです。相応の危機にたいして真っ向から抗う力と心をもたねば、世界そのものが危険なのです。あなたも知っているでしょう?テラー・ユウトのことを。」
そこにサルは重ねる。
「それに、俺たちは無駄に人殺しをするつもりはない。各地に潜伏していた密偵たちが誘導して関係のない人達は避難させる予定だ。流石に軍人や歯向かってくるものには保証できないがな。身勝手だが不干渉でもいい。それが終わったら招集に応じてくれないか。」
ピッグは自分の今の主を思い浮かべる。そして、多大なる意思を持って二人を見つめて応えた。
「じゃあ、俺らは敵になるといえるなぁ。」
本日深夜、ロベリスタ王国深草原奥地にて眩い赤が白と黒に飲まれて消えた。
そこにあったであろう館はドアノブを残してほか全てが消えていた。