プロローグ
初めてのオリジナルです。
もしかしたら誤字あるかもしれません。
夏が終りそろそろ受験生が追い込みをかけ始める9月。散る紅葉が窓み映る無駄なものは何もない病院の個室。そこに少年が二人いる。一人は備え付けられたベッドの上に上半身を起こして本を読んでいた。肌の色は雪のように白く、黒いパジャマからのぞく手足は細く、とても健康的とは言えない。
彼の名は南明人15歳。1年ほど前まではどこにでもいる普通の少年だった。
1年前に倒れ運ばれた病院で末期のがんであると診断された。
余命1年の宣告は当時の明人とっては絶望の二文字頭に浮かばず、塞ぎこんでしまっていた。
普通のサラリーマンと専業主婦の家に生まれた明人の家の財力では治療費を賄いきることはできないし、そもそも助かる見込みもないので明人は治療一切しないという選択して残りの時間を好きなことに使うと決めたのが半年前。
明人は1年ほど前は活発に活動していて、、今ここにお見舞いきている少年、晴樹と、徹夜でネトゲしたり、お互いに好きなアニメやラノベについて殴り合うレベルの論争を繰り広げたりしていた。どこにでもいる普通のオタク友達だった。付き合いの長さを考えれば親友と呼んでいいかもしれない。
しかし、今は少しだけぎこちない雰囲気が流れている。
お見舞いに行ったことのある人間ならわかるかもしれないが、知り合いの弱っていく姿を見て明るく振る舞うのはとても難しいことである。明るく振る舞いすぎると嫌みに取られるかもしれないし、かといって沈んだ顔を見せるのも違う気がすると晴樹は答えの出ない振る舞い方を模索している。
「なぁ明人。ほんとに治るんだよな?」
「ああ、たぶんな」
本を読んでいた顔を上げ、明人はさらりとそう告げた。友人を心配させまいと明人は本当の事をまだいってなかったのでこういう回答になってしまう。もちろん近いうちに本当の事を話すつもりでいる。
明人の答えを聞いて少年は声を荒げた。
「おまえほんとは相当悪いんだろ? 正直に言えよ!!」
長年友達をやっていれば嘘をついているかどうかはすぐ晴樹にはわかってしまった。
その問いに明人が答えることはなかった。自分勝手かもしれないが打ち明ける時は自分のタイミングで話したいと明人は考えている。
明人が答えないことを察するとそのまま病室を飛び出すように去って行ってしまった。
「あっ……。本忘れていったぞ」
弱りきった小さすぎる声は晴樹の耳に届くことはなく明人の手元に残ったファンタジーもののライトノベルが孤独を表すように一冊だけ取り残された。
「明日取りに来るだろう」
明人はそう考えて、返す時のに感想でも言って仲直りしようと、それを読み始めた。
本の内容は、所謂異世界ファンタジーで、明人と年の変わらない少年が、チートを与えられて、モンスターと戦い稼いだ金で奴隷を買ったりする。年頃の少年のロマンが詰まった作品だ。ラブコメ大好きな明人でもつい夢中で読み進めてしまう。
読み進める間、明人の頭の中では想像が膨らんでいく。明人のやりたいととは小説をたくさん読むことだ。半年間も塞ぎこんでいなければ書こうって気になったかもしれないが、明人は今本の世界に入り込むことで、溢れだしそうな色々を必死に蓋をしている。
本当は走り回って、高校行って彼女作って……。ぱっと思いつくだけでもやりたいことはたくさんある。それこそラブコメのようなことから、よくある日常のくだらないことまで。
彼だって本当ならまだまだ未来にあるはずの若者なのだから。
一人でいるとついこうしたネガティブな思考になってしまう。誰だって一人でいること少なからず不安になるものだ。それらを振り払うように読書に集中する明人だったが、やはり病気の影響なのか下がってしまった体力では1冊を一気に読むことはできず眠ってしまった。
その日の夜明人の体はゆっくりと終わりを向かる用意をし始めていた。下がっていく血圧、だんだんと吸っても吸っても楽にならに呼吸。明人は悟った。これが死ぬってことなのかと。
明人は死ぬ間際に願った。次生まれ変わることがあった強い身体に生まれるようにと。
『その願い賜ました』
意識を失う直前そんな声が聞こえた気がした。
晴樹への後悔が残る中明人の意識がゆっくりと遠くなっていく。
そして朝を迎える頃に息をしていない状態になりその12時間後に死亡が確認された。ドラマのように派手に発作を起こすこともなく静か最期だった。