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幻界のクロスオーバー  作者: KAYA
第二章 災禍のクロスオーバー
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覚悟

「自宅待機の土屋は、ゲームを取り上げられてなければ、幻界ヴェルト・ラーイで遊び倒しているだろうな。まあ、取り上げられてたとしても、自宅に親がいなかったら発掘しそうだ」


 ログインすれば、土屋グランドに会う可能性が高まる。その危険性と対処について、皓星と二人で考えていた。今、シリウスはアシュアたちとユヌヤのクエスト中で、ユヌヤから離れにくいという。そもそも、ユーナはシリウスをあてにする気はなかった。


「わたしは、予定通り最初の町(アンファング)へ行くつもり」

PK未遂PT(あいつら)がどんな青色ブルークエストをしたのかは知らないが、どれだけかかっていても、もうクリアしているはずだ。装備も金もないなら、転送門ポータルも使えない。鉢合わせるぞ」


 そこで、皓星は気づいた。そんなこと、結名は重々承知しているのだ。その上で。

 結名は強く頷く。


「もし、そうなっても構わないって思ってる。幻界ヴェルト・ラーイで怯えて暮らすなんてイヤじゃない」


 ユーナが最初の町(アンファング)に向かうことは、土屋にとっては予測外のはずだ。エネロまで行って、転送門開放クエストを済ませておきながらアンテステリオンに向かわず戻るなど、本来あり得ない。要するに、あちらには心構えがない状態となる。覚悟を決めている結名とは大きな差だ。


「あ、探しに行きたいわけじゃないからね! 一応、避ける方向でいくし、危なくなったら根性で逃げるから」


 現実リアルの結名の能力が幻界ヴェルト・ラーイでも反映されるのであれば、森狼から逃げ切った足を信じたい。あの頃に比べ、相当レベルが上昇して身体能力も上がっているから、逃走成功率も高いはずだ。

 最初の町(アンファング)なら、恐らく、今も多くの旅行者プレイヤーが闊歩しているだろう。ユヌヤにまで攻略最前線が移っていても、アンファングには神殿がある。誰もが成功しているわけではなく、死に戻る者もいる。新規旅行者(プレイヤー)が一時的に減少している今でも露店が多いと聞くし、その分、多くの武器を確認できる。


「まだ、どれにするか悩んでるんだろう? 情報系サイトはチェックしたのか?」

「文字で見ても、イマイチ感覚が掴めなくて……」


 幻界ヴェルト・ラーイの武器の種類については、以前皓星と羅列していた。だが、実際に情報系サイトで確認してみると、どの武器も鋳造品や鍛造品、個別に性能が異なり、どの武器が一番ユーナに合うのか、未だに判断がつかない状況だった。


「やっぱり、実際に触ってみるしかないな。そうなると、アンファングはちょうどいいか」


 スペック的には攻略最前線では物足りないが、NPCが販売するものよりは質の良い鍛冶製品が、露店に出回っていると皓星は語った。初心者向けに安価で購入できるそうだ。鍛冶師が熟練度上げのために、手に入りやすい鉱石で作っているという。

 当面の方向性を確認していると、階下から伯母の声が聞こえた。


「皓星ー、そろそろ帰るわよー」


 時間切れである。


 皓星と伯母を見送ったあと、家事を手伝ったり、部屋に戻ってから翌日の小テスト対策や授業準備を済ませたりしていると、SSシューティング・スターに詩織からの流れ星(メッセージ)が届いた。内容は、結名の容態を気遣っているものと、合わせて本日の授業のデータが添付されている。そして、明日は登校できるといいねと書かれていた。念のためと明日の英単語のテスト範囲も追記されている。既に昨日の授業で授業担当から教わっていたが、忘れているかもという配慮だろう。待っているという気持ちが伝わってくる。

 怪我は全く問題ない旨と心からの感謝を書き連ね、明日の登校を約束して、返信しておいた。

 そして、VRユニットを装着し、ベッドに横たわる。


 壁掛け時計に視線を走らせると、夕食まで二時間ほどある。

 母には幻界ヴェルト・ラーイでのアドレスも伝えてあるから、きっと用事があれば連絡してくれるだろう。


 電源を入れ、キーワードを口にする。

 慣れた感覚が意識を包んでいく。心が幻界ヴェルト・ラーイへ舞い降りる――。

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