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アルテナの箱庭が満ちるまで  作者: 赤野用介@転生陰陽師8巻4/15発売
第二部 第六巻 神(エリ)杯(クシール) (12話+2) 闇の章

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第12話 彼女の結末

 都市アクスの端の端。

 何百年も前の廃墟と化した古い建物の2階テラスに椅子を並べ、本来は少し肌寒いはずの外気に触れながら、私はのんびりと待っていた。

 時間という束縛から解き放たれたこの身は、かつて持ち合わせていた焦燥という観念を失っている。

 別に、二人が来なくても良いと思う。

 そもそもこれは、人生が終わった私の、かつての生に触れて見たいと言うほんの些細な戯れでしかない。

 来なければ来ないで、他の終わり方をすれば良い。

 例えば発見されるまで闇に紛れて血を啜り続けるのも、この身に則した過ごし方だと思う。

 ちなみに、自暴自棄になってアクス侯城を襲おうと言う考え方は持ち合わせていない。そもそもアクス家には恨みが無い。これはドリー・オードランが考え、歩み、至った結論だ。


 今は吸血鬼と化しているバランド家メイドであるイファーネが、同調する意識で私に注意を喚起した。

 彼女は私の体内にあった竜核を注ぎ、魂の共有によって私の意思に同調している。意思はあるけど身体が言う事を聞かない操り人形のようなものだ。その彼女の警告が、私の終わりを告げていた。

 私の見知った顔が二つある。

 一人は、私をずっと探し回っていた凄腕冒険者ロラン・エグバード。彼には研究のために大量の竜核集めを依頼した。

 もう一人は、錬金術学校で殆ど唯一まともな会話をしていたレナエル・バランド。彼女はロラン・エグバードとのやり取りを仲介し、その関係で定期的に会っていた。


「お姉ちゃん!」

「リディっ」


 イファーネが縛った娘3人の傍に剣を持って佇んでいるため、レナエルはそれ以上近寄っては来なかった。


「……手紙、届いた?」

「ああ」


 どうやら目的は果たされたらしい。

 私の研究成果は残り、それが多くの人に影響を与えていくだろう。私の命は消えても、その命が描いた結果は残り続ける。


「それなら終わりにしましょうか。無駄な足掻きをするつもりはないわ」


 私がそう言うと、紫の髪の女に促されたロラン・エグバードが私の前に進み出て来た。彼には結論が出ているようで、表情に迷いは無かった。


「あのさ」

「何かしら」

「1年ほど前に10歳の子供が言っていたんだけど、『錬金術は物を掛け合わせる掛学。理論と方程式があり、それを正しく用いることで物体は錬金術師の望む形に姿を変える』これって合ってる?」

「私は転姿停滞の指輪を望む形に変えたわ。失敗したのは理論と方程式しか考えなかったからよ。その子供には、そう教えておいて」

「分かった。でも、もう伝わった」


 ロランは懐から剣を取り出しながら私に囁いた。


「同じく1年ほど前に14歳の女の子が言っていたんだけど『私は、加護が沢山入った竜核の成れの果てを飲みました。しばらくは身体から加護が溢れて、瘴気を弾きます』これってどう思う?」


 私はレナエル・バランドを見つめた。






 Ep06-12






「技術を発展させて行けば、今回の件もいつか必ずどこかで発生していた問題だ。最初に被害を抑え、次に対処法を確立する。それと、今回の失敗を教訓に研究の倫理指針を策定して教え込む……」

「そうだね。それで、くだんのドリー・オードランは僕の方で片を付けさせてもらうよ」


 ようやく時間を作れたイルクナー宰相代理が心境を整理するために発した言葉に、アクス侯爵は端的に要求を述べた。


「不作為……とも言えないか。ドリー・オードランは、少なくとも吸収に関しては人から血を吸う行為を想定していた。功績と相殺もさせられないな。研究者に技術発展と引き換えに犠牲を容認する訳にもいかないし」

「君が常識的な判断をしてくれて嬉しいよ。今回の事件は、創設したばかりの錬金術学校に対する不信感を招き、王国の発展を多少なりとも阻害するだろうね。そんな彼女の功績と言うのは手紙の事かい?」


 ドリー・オードランの手紙には、吸血鬼の思考や行使できる能力がオードラン自身の実体験という実例付きで記されていた。

 それだけではない。

 ジャポーンには転生竜が存在せず吸血鬼も実在しなかったため、ハインツにとって転姿停滞の指輪や吸血鬼は未知の領域だ。

 ハインツ自身が装着している転姿停止の指輪の原理についても、オードランの実証付きの仮説は現段階で最有力候補だった。


「いつか技術を正しく使いこなせるようになるとしても、まだ性急だったかな」

「ハインツ、人は経験しなければ成長しないんだよ。祝福だって経験値を上げなければ上がらないよね。どうして技術に触れずに技術を使いこなせるようになると思うんだい。君の言う倫理指針も、今回の経験を基に作るのだろう。ベイル王国は失敗しながら経験を積んで成長しているじゃないか」

「はぁ……。反論が思いつかない」


 既にドリー・オードランの退路も断たれている。

 メルネスと彼女の祖父であるミネース男爵との間で合意が取れており、今回の事件の犯人であるドリーはミネース男爵の血族とは無関係の別人であると言う事になっている。

 ミネース男爵ノルベルトの孫娘ドリー・オードランは、15歳の誕生日を迎えた後にディボー王国へと嫁いだ事になっている。彼女は記録上、錬金術学校の生徒である同姓同名のドリー・オードランとは別人である。

 ハインツが助命した所で、もはやドリーには帰る場所は無いのだ。


「アクス領で発生した事件で彼女は爵位貴族家では無いから、最終裁判権は領主の僕が持つよ」

「分かった。それと、発生したあらゆる被害は兵士装備品売却で得た予備費で補償する。アンジェの慈善事業費は無償給食制でもう残っていない」

「そう言えば、次期女王陛下のご懐妊おめでとう。実務的な話ばかりしてしまったね」


 バダンテール歴1261年2月、ベイル王国ではアンジェリカ次期女王が懐妊したと公式発表された。

 出産予定日は10月頃であり、無事出産の暁には全都市への振る舞い酒、過失犯への恩赦、期限を迎える減税制度の1年延長などが計画されている。

 メルネスは非公開裁判で、ドリーがその恩赦に掛からないように故意犯として処理するだろう。


「アクス侯爵としては、次期国王陛下のご誕生が望ましいね。もちろん王女殿下であっても、アンジェリカ王女のように君の様な配偶者を得るという手があるから構わないけれど」

「多分女の子だと思うぞ」

「おや、分かるのかい」

「分かる。多分な」

「なるほど。ああ、次は王子殿下だと嬉しいな」


 メルネスは、産み分けの方法については聞かなかった。

 二人が実務から離れたのはその瞬間だけで、すぐに次の話題へと移る。


「まあ良いさ。それよりも、リーランド帝国と北部連合との戦争の方が遥かに重要だ。匙加減を間違えるとそれこそ人類が滅ぶよ」

「分かっている。10月に戻って来てから、人類同士の全面戦争にならないように介入している。欠乏するであろう物資や武器・医薬品の輸出調整の下準備、傭兵たちの先行潜入、リーランド騎士の買収工作、民心の操作……」

「民心の操作って?」

「基本的には獣人帝国が居るという揺るぎない事実を触れ回らせて全面戦争を避ける。後は細々と、攻撃目標や防御目標の誘導」


 ハインツはドリーの情報を得ても王都ベレオンから動く事が出来なかった。

 ちょうどその頃、リーランド帝国と北部連合との戦争が勃発しており、ジュデオン王国で最新の情報を得ていたハインツは戦争勃発前からずっと対応に追われていたからだ。

 尤もドリーの件を放置していた訳ではなく、4格の転生竜退治の時に都市アクスを訪れてアクスへの転移が可能になっていたオリビアに頼み、メルネスから最新情報を何度も得ていた。

 だが、メルネスが現地で対処していたので完全に任せていた形だ。いかに大祝福3の冒険者とはいえ、一人で出来ることには限界がある。


「君が開戦時にインサフ帝国に居たら、インサフ帝国は滅亡していなかったかもしれないね」

「無理だろう。それに嫁たちに会えないから却下」

「インサフ帝国のリディアーヌ第三皇女は、絶世の美女なんて言葉が凡庸過ぎて失礼にあたるくらいの艶やかさだったよ。しかも、身分を最大限に活用して各国に支援を求める賢さ」

「…………却下」


 アンジェリカが妊娠中であるハインツは理性によって想像を遮断した。

 4人と結婚してしまえば浮気が出来ないので、ハインツならば貴族家の娘を政略結婚の為に何度も押しつけられて断ったりしなくて済む。と言うのがこれまでの常識だった。

 だがレナエル・バランドの研究は、将来はハゲの治療薬になり得るかもしれない。だが、そんな浮気を容認し倫理を失するような研究をさせる訳にはいかない。やはり倫理指針は大切なのだ。

 ハインツは自身の後ろに控える妻オリビア・リシエの視線と、大祝福3の魔導師の掲げる杖の圧力とを同時に感じながら却下と唱えた。






 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 ドリーがレナエルに視線を向けた瞬間だった。

 まるで底知れない竜が、矮小な生き物を高みから卑下するかのようにドリーを見下ろしてきた。それと同時に、竜核のエネルギーで満たされたドリーの身体に、別種の異質な力がマナを介して直接注ぎ込まれてきた。

 それは炎。

 視界のあらゆるものを容赦なく飲み込み、認知し得る全ての世界を焼き尽くすかのような怒涛の炎海が天地を喰らいながらドリーに襲いかかって来た。

 身体の中の竜核がその絶大な力に震える。まるで炎のように激しいマナに込められた呪詛の叫び声に、それを耳にした誰しもが影響を受けずにはいられない。竜核を覆い尽し、循環エネルギーを飲み込み、体中を震え上がらせて麻痺させる強烈な歌が響き渡った。


 『全体麻痺』


 その強い意志に揺らめく炎と、単に永遠を望んだだけの非冒険者のドリーとは住んでいる世界が完全に違った。

 ドリーが背負う命は6人で、確かにドリーは並の人生では無いだろう。

 だが全方位から向かってくるその叫び声は、十数万人の怨恨と、呪詛と、嘆きと、絶望とを受け止めた少女のマナを介した世界を埋め尽くす魂の踊り狂う歌声だった。

 ドリーは抵抗しようとし、一瞬でその波に全身を飲み込まれて倒れ伏した。

 強烈なマナが波打ちながらその都度ドリーの全身を痙攣させる。


 まるで「踏み潰すまでも無い」と言っているかのように、発せられるマナの力だけでドリーは地に這い蹲らせられた。

 それは獣人帝国の皇女ベリンダが、マナを介して広範囲へ力任せに解き放つ咆哮の『威圧』を、狭い範囲で繊細に色付けして放ったかのようなスキルだった。

 計り知れない力がドリーの全身を束縛する。

 全身を鎖で縛られるどころではない。全身に針金を入れられ、同時にしびれ薬や睡眠剤を大量に投与されたたかのように、ドリーはまるで身動きが取れなかった。

 ドリーが辛うじて視線を向けると、操っていたバランド家メイドのイファーネも、馬車の御者も、積荷の集配員も、全員が揃って崩れ落ちていた。


 圧倒的な力に押しつぶされる中、ドリーの身体をロラン・エグバードの手にする剣が貫いた。











 私の視界に映る全ての世界が白く染まる中、正面からぼんやりと金色の光が見えて来た。

 金髪碧眼で若干垂れ目の娘、レナエル・バランド。いつも明るい彼女は、私がそっけなくしても気にせず話しかけてくる。

 相変わらず私に話しかけて来た。


「ドリー、いつもの喫茶店に行きましょう」

「なぜかしら。店長のお勧めセットなら、先週指輪を受け取る時に一緒に食べたでしょう」

「違いますよ。みんなでお祝いするんです。ドリーは輝石の研究室に受かったでしょう。実は交流会を兼ねて、研究室生みんなでお祝いしようっていう企画があるんですよ」

「私はいいわ」


 白い世界が金の光で埋め尽くされていく。


「そんな事言わないで行きましょう。きっとドリーの目指すものの助けにもなりますよ」


 断られたら押さないはずのレナエル・バランドが、今日はなぜか一歩踏み込んで来た。


「そうかしら」

「そうですよ。竜核を用いるなら世界のエネルギーの利用ですよね。輝石研究なら溜まっている力の取り出し方。それなら参加すべきです」

「どういう事かしら」

「アニー。あ、輝石の研究室に総合成績1位で合格したアニトラ・ベルンハルトですけど、彼女は輝石からのエネルギー抽出に関しては一流ですよ。副作用の強い竜核を、過たずに使えるようになると思います」

「……詳しく聞きたいのだけれど」

「それなら参加して下さい。実はドリーの研究が気になっていました。使い方を間違えると危ないんです」


 私は、合格祝いに参加する事にした。






「「「乾杯!」」」

「いや、貸し切りなんて贅沢だね」

「人数も増えたし、いっそ大規模にしようと思って。それはともかく、聞こえているかどうか分からないけど二人ともありがとう。おかげで合格出来たわ」

「えっ、このお店のシャンパン美味しいですよね。えへへへ」

「タニアもどうぞ。これは何を調合しているんでしょう。本当に美味しいですよ」

「聞こえてないみたいね」


 私はため息をついた。これでは話を聞くどころでは無い。参加者が多いのはむしろ私が紛れられて良いのだけれど。


「ユティサ、お前は未成年だったか」

「ランスケープ先輩、私は先月が誕生日でした。もう成人です」

「おお、そうか。それなら今度髪留めでも買ってやろうか。リボンよりも似合うと思うぞ」

「先輩、そういうのは最初から私の誕生日を覚えていて、突然くれる方が嬉しいです」

「いや、そもそも俺はユティサの誕生日を知らないし」

「先輩は知っています。10歳の時に教えています!」

「……お前の記憶力を基準にするな」


 知らない人ばかりが居て、もちろん相手も私を知らない。

 いいえ、例外が居た。


「ドリー・オードランか」

「誰?」

「ウィズ、お前は記憶力が偏り過ぎだ。彼女は、ドリー・オードランだ。以前お前に依頼を持ち込んだだろう。しかも、俺たちと同じ輝石研究室に合格している」

「…………ああ、凄いね。僕たちも結構苦労したんだけど」

「単科で3位と4位だから悪くないだろう。総合で狙えば確実に落ちていたな。輝石研究室は一番人気だった。特に主席のアニトラ・ベルンハルトの成績は異常だ」

「うん。錬金術4教科の平均が97点とか酷過ぎるよね。いくら初級の錬金術の問題とは言ってもさ。多分彼女は、もっと上のレベルを学んでいるね」

「…………もっと上って何?」


 私が二人の会話に口を挟むと、ウィズ・ハルトナーは青色の瞳を好奇心で輝かせながら嬉しそうに答えた。


「僕たちの研究室の輝石分野なら、彼女は輝石から任意のエネルギー量を用途に合わせて複数の形で抽出出来るだろうね。服装で分かるでしょ」

「どういう事かしら」

「…………分からないの?」

「分からないわ」

「オレンジのスカートに魔力凝縮が編み込まれているでしょ。それと上着には魔力放出。上下一体で上半身から解き放てる形になっているけど、発動の元になるはずのエネルギーはどこだろうね。僕ならスキルで済むけど、彼女は冒険者じゃないし」

「……答えは?」

「二重に着ている上着の色。輝石の力を溶かして染み込ませているんじゃないかな。多分、力を解き放つとあの服の色が薄くなるよ。でも逆に輝石の力を注ぎ足すと色が濃くなるんだ。本当に凄いよね。ちょっとあの服を脱がせて見てみたいな」


 エキサイトしたウィズ・ハルトナーが、一緒にいた男に無言で殴られた。

 ただ、その言葉を聞いて私もアニトラ・ベルンハルトの事が気になった。元々レナエル・バランドから彼女の事を聞いての参加でもあったし。

 私はそう思い、陽気に笑っている彼女に近づいた。彼女はかなり酔っていて、同じくらい酔っているレナエル・バランドと一緒に夢を語っていた。


「えへへ、レナエル~、レナエルは、ベルガー校長先生の話を覚えていますか~?」

「ええと『錬金術とは万物を創り出す術である。錬金術において、この世に存在する物で創り出せない物は無い。なぜならば、そこに在る時点で創る術が世界には在るからだ。だが錬金術の神髄は、この世に無い新たなる物を創り出す事にこそある』でしたっけ」

「そうです、『新たな物を創る』です。レナエルは、何を創りますか~」

「そうですね。私はずっと創りたかった品を、もう創ってしまいました。今は何を創るかを改めて考えています。暫くはお父さんの研究の手伝いですね」

「レナエルは、何を創りましたか?」

「…………アニーは、賢者の石と言えば分かりますか」

「…………レナエルは、金を創り出す真の錬金術師ですね。でも、研究が生み出す危険も理解しなければいけません。きっと、思っている以上に危ない事が出来ますよ。レナエルなら大丈夫だと思いますけど」

「そうですね。錬銀術師にならないように気を付けます」

「何の話かしら」


 賢者と言う言葉に、私はふと有名な言葉を思い出した。

「アルテナとは何なのか」という問いに対して、賢者は「未だ解き明かされていない、世界の法則である」と答え、酔っ払いは「んなこと言ったってお前、そこにあるでねぇか」と説教したと。

 両者の結論に違いはなく、酒場に行けば野生の賢者に出逢える所以であり、賢者が酔っ払いの就職先と言われる由縁でもある。

 果たして酔っ払いである彼女らは酒気を友に私に対して、説明し教えると書いての説教を行った。


「アニー、彼女が話していたドリーです」

「あなたがドリーさんですか」

「ええ」

「賢者は真理を探し、愚者は真実を見るそうです。貴女に良い答えが見つかりますように」

「……どういう事かしら」

「考えて下さい。今のままでは研究は失敗しますよ。ところで失敗とは、『物事をやりそこなうこと。方法や目的を誤って良い結果が得られないこと。しくじること』だそうです。心当たりはありませんか」

「……………………」

「同じ研究室ですし、あたしが手伝っても良いですよ。今日はドリーがあたしの所に来ると言う事で、レナエルから事前に心配を聞いていました。実は、あたしも考えていた事があります」

「…………顧客情報を漏らさないで欲しいのだけれど」

「私が依頼や報酬を受けた訳ではありませんから。それに、心配する理由があるんです。少し時間を貰ってもいいですか」


 その後、私はレナエル・バランドから昔話といくつかの手順の危険性を説明され、アニトラ・ベルンハルトからその回避方法を教わった。






 私の右目と左目に、違う未来が見えて来た。

 右目に映る光景では私がアニトラ・ベルンハルトを噛み、彼女が泣きながら生命の輝石のペンダントを齧って耐えている。

 左目に映る光景では、アニトラ・ベルンハルトが私の肩に寄りかかりながら、竜核からエネルギーを抽出して溜める実験を行っている。


 (……分かったわ。もう良いでしょう、本当に意地悪な神ね。早く眠らせなさい)


 私がそう言うと、金髪碧眼の美しい騎士が、哀愁の瞳と泰然自若とした表情とで僅かに頷いた。

 それから私の全身は、まるで太陽に照らされるかのように白く染まっていった。


 (……悪かったわね)


 最後に呟くと、その騎士は優しく頷いた。

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