第06話 勇気の形
アルテナ神殿へ向かったリーゼたちと別れ、俺とオリビアは情報収集の為に冒険者協会へと足を運んだ。
飛び交う情報を統合して3行にまとめてみる。
6月26日、最南端の都市ムーランに獣人の侵攻があった。
6月27日、そこから北の都市ゴセックに獣人の侵攻があった。
今日は6月29日。未だジュデオンへの侵攻は無い。
だがそんな事は当たり前だ。
獣人は、ゴセック南側に架かる大橋を落とされないように高速部隊を一気に北上させたのだろう。
俺なら間違いなくそうする。
スキュラのような魔物がいっぱい泳いでいるような大河を、誰が好き好んで泳ぎたい?
馬も馬車も捨てる事になるし、すると糧食の輸送がストップする。食糧補給の無い軍事行動では、手持ちの食糧が尽きる前に撤退せざるを得なくなる。
だが獣人帝国が輸送路を確保した以上、彼らに慌てる理由はなくなった。
この上は、最南端の都市ムーランを襲っていた部隊と合流した上で、4個軍団と言う大軍で王都ジュデオンに襲いかかってくるに違いない。
……ジュデオンでは、どのくらいの戦力が揃うのだろうか?
実は、冒険者数千人が期待できると思っている。
現役冒険者だけでもそのくらいは居るし、引退した冒険者だけでもそのくらいは居る。もちろん騎士もそのくらい居る。それに、それをサポートする兵士や民衆も数十万人居る。
現在の俺には目的がある。
上位軍団長が持っている、7格の最上位竜の竜核から造られたという永遠に加齢を停止する転姿停止の指輪が欲しい。
俺は左手の中指に、金狼のガスパールから奪った転姿停止の指輪を装備している。
そして誰にも言っていないが、無敗のグウィードから直接奪った物も隠し持っている。グウィードから奪った指輪はいずれリーゼに使うつもりだ。
妻に序列を付けるのかと立腹する者がいるかもしれない。その批判は甘んじて受けよう。言い訳もしない。俺の優先順位はまず何よりリーゼにある。
だが、遠くない未来を想像した。
若いままの俺とリーゼが居る。
それを眺めながら、老いて行くミリーが居る。
ミリーの心中を想像して、嫌になった。
理想は俺と妻4人分の指輪獲得だが、これはいくらなんでも無謀すぎる。
指輪が一定年齢までに不足した場合、まずアンジェリカの分を諦める。
それは何故か?
誤解を与えないように説明するには慎重を要する。
端的に言えば、アンジェリカが妻であると同時に女王で、俺が国王にならない限り俺を責務より優先させる事が無いからだ。
そして俺は国王になる気が無い。
国王になれば妻より国を優先せざるを得ない場合がある。それに残る3人の妻を国家の体面の為にアンジェリカの下風に立たせる場合もある。
自分が一番守りたいものは何か、俺はそれを見失っていないつもりだ。俺の中でリーゼはベイル王国に優先する。その為に余計な重石は担がない。と言う事でアンジェリカはまず諦める。
問題はミリーとオリビアの優先順位だ。
心情と打算とで優先したいのはオリビアだった。だがリーゼとの相性を考えるとミリーになる。だから答えが出せない。
現時点では、盗らぬ狸の皮算用だが。
そんな俺の問題を解決できる可能性が目の前に飛び込んで来た。
ジュデオンのグンナー王は大祝福2を越える戦士で、その配下には大祝福2が多数いる。それにジュデオンの冒険者の中には大祝福2超えが何人も居る。祝福70を越える者も居ると聞く。
その彼らが全力で獣人軍と相対して都市防衛戦にもつれ込めば、獣人軍団長の1人くらい狩るチャンスがあるかもしれない。
皇女ベリンダは危険すぎる。
首狩りのイルヴァは指輪を持っていない。
狙うは残る二人の軍団長。
決戦の前にリーゼとミリーはジュデオンから脱出させる。北上し続けて、ルクトフで馬車ごと船に乗ってグレイ湖を渡ってラスティア王国へ脱出すれば、安全に逃げ切れる。
オリビアは単独なら転移魔法で逃げられるから傍に置く。
俺には離脱のスキルがあって、1人ならタイミングを間違わなければ逃げ切る自信がある。
そこまで考えた時、非常事態を告げる鐘が鳴りだした。
馬鹿な……敵の侵攻が早すぎる……
Ep04-06
空からの風圧で、路上の砂が一気に舞い上がった。
目を閉じて喉に入った砂塵を吐き出そうと咳き込む人々の頭上を、大翼の生えた鹿が超低空飛行で次々と飛び抜けて行った。
その後背を、黒翼の怪鳥がウイングドスピアを携えて追尾して行く。人々はさらなる風圧と砂塵に顔を覆って耐えた。
周囲では悲鳴が上がりだす。
「おい、獣人だぞっ!獣人だ!」
「と、飛んでいるっ!」
「敵襲、敵襲、誰か魔術師は居ないのかっ!黄色信号弾を!」
信号弾の代わりに、物見の塔に据え付けられた非常事態を告げる鐘が鳴り出した。
ゴーン、ゴーンと低音で遥か遠くまで鳴り響いていく
都市民達は一体何事かと高い物見の塔の天辺へ視線を上げ、遠目にその光景を見た。
翼の生えた4本足の生き物に跨って空を飛ぶ5人の騎士が、槍を持って翼の生えた人のような存在に追われている。
一度見てしまえば、もはや上げた視線が下ろせない。それは口をあんぐりと空け、呆けて立ち尽くすしかない非日常の光景だった。
ジュデオンには何十万と言う民が居る。そのうち数万人はその光景を直視していた。
やがて防壁から都市中心部へ向かって信号弾が次々と打ちあがって行く。
『イエローライトスコール』
『イエローライトスコール』
『イエローライトスコール』
緊急避難信号がジュデオンの上空に次々と上がっていく。
最初は防壁の近辺、そこから都市中心部に向かって、さながら飛行経路を示すかのように殆ど一直線に黄色い光が伸びて行った。
その光が王都中心部に到達すると同時に、飛行騎兵たちが白い煙のようなものを一斉に空へと撒き散らした。そして急速旋回を行う。
『全騎反転、空中戦開始』
ペリュトン達は引かれる手綱に従い、片翼を曲げて軸とし、反対側の翼を大きく前に出しながら最小の小回りで180度反転を行った。
5騎のペリュトンが反転し、騎乗する騎士たちが槍をアロイージオへと向ける。
アロイージオは飛行騎兵達の急速反転を即座に見分け、一番反転の未熟な飛行騎兵に向かって突き進み、真下に潜り込みながらウイングドスピアを突き上げた。
真上に伸びたウイングドスピアはペリュトンの胸を貫き、肺を裂き、肝臓を抉り、胃を引きずり出し、真っ赤な血飛沫を空に撒き散らし、盲腸を引っ張りながら後方へと抜けて行った。
各騎は飛行速度を維持するため、後ろに抜けたアロイージオへ即座に向き直る事はせず、そのまま上昇しながら距離をとった。
最初に戦士1人が落とされており、今しがたの攻撃で治癒師が落とされ、第二飛行隊は残騎が4になった。隊員は戦士攻撃系であるバンデラス飛行隊長、探索者戦闘系のヘラルド、そしてマナの尽きた魔導師攻撃系2人だ。
戦力として期待できるのは、すなわちある程度の攻撃力と物理攻撃系のスキルを所持しているのはバンデラス隊長とヘラルドだけだった。
飛行隊を追って、アロイージオが身体を傾けながら大きく旋回した。大きな旋回は強者の余裕だった。だがアロイージオは、ここで初めて直線飛行を止めた。
その瞬間、稲妻の光線が、業火が、氷の散弾が、土槍が、風刃が、次々とアロイージオに向かって撃ち上がって行く。
それらは全てジュデオンに居合わせた数多の魔導師たちが地上から発動させたスキルだ。
アロイージオはそれらの攻撃を一瞥すると、空中で素早く身体を回転させながら進行方向を素早く変え、両翼を水平に伸ばしながら身体を傾けて、風を切って魔法を避けた。そして避けながらペリュトンへと向かって行く。
急上昇、急降下、急旋回、急加速、急減速。空はアロイージオにとって地面より遥かに自由の効く空間だった。
まるで海で泳ぐ魚であるかのようにアロイージオは飛ぶ。
いや、圧倒的に広い視界、自在に乗れる風、加速も減速も思いのままである重力。同格である5格の竜と空中で戦ったとしても、アロイージオには自身の敗北が想像できない。今やジュデオンの空は、アロイージオの支配下に置かれていた。
だがその空を、許されざる者達が飛んでいる。数十の獣人戦士たちをミミズへと変えた許されざる者達だ。
皇女ベリンダは地上軍最高の治癒師に命を下し、犠牲者全員を回復させた。
だが、治れば良いというものではない。
そんな行いが、意思を問わず物理的に二度と出来ぬようにしなければならない。
アロイージオは、ウイングドスピアを残る4騎のうち手近の1騎に向けてそのまま突っ込んで行った。
スキルの尽きた魔導師は、咄嗟に毒矢を撃ち放った。
当たり所によっては数十分で大祝福1の冒険者を殺せるヤジリハブの強毒を、しかも都市上空で。
(……馬鹿な!都市内だぞ!)
ヘラルドの予想通りアロイージオは毒矢をアッサリと避けた。
矢は都市中心部の上空から、群衆へ向かって落ちて行く。
「矢が降ってくるぞっ!」「うわあああっ、逃げろっ!」
直下の群衆がパニックになり、押しつぶし合いながら矢を避けようとする。
その矢の弧線が、転んだ少女の背中に向かっていた。
「ちっ」
1人の男が地面を蹴り、群衆の頭上を飛んで少女の背に盾を掲げた。
直後、矢尻と盾がぶつかる。矢は液体を僅かに撒き散らしてあっさりと弾かれた。
「おおっ!冒険者だ!」「おい、あれは回収屋のネルヴァ・ハルパニアだぞ」
「なぁ、今の動きは大祝福1台を越えてたんじゃないのか?」
「確かに、俺もそう思った」
「…………矢に毒が塗ってある!」
「なんだとっ!」「皆に伝えろ、危険だっ!」
矢はアロイージオを捉える事が出来なかった。
2本目の矢を番える間に、アロイージオはウイングドスピアをペリュトンの正面から鋭く突き出した。
そのウイングドスピアの尖端は、狙いを違わずペリュトンの前頭骨を叩き割った。
勢いは収まらず、槍の先端は頭の中身を抉りながら掻き出して、ペリュトンの脳を空へと撒き散らしながら離れて行く。
ペリュトンと騎手は重力に引かれるがまま、都市へと落下していった。
治癒師なら自分に物理防御スキルをかけて助かるだろう。だが落ちたのはマナの尽きた魔導師だ。スキルが使えない飛行騎兵の運命は、騎乗するペリュトンと一蓮托生だ。
内臓を抉られたなら、ペリュトンは本能的に翼を広げて落下速度を落とすかもしれない。だが脳を破壊されれば、どう考えてもそのまま真っ直ぐに落ちて死ぬしかない。
第二飛行隊は既に半数が撃墜されており、残騎を3にまで減らしていた。
地上からは、様々な属性と発動形態のスキルが次々にアロイージオを目掛けて突き進んでいく。
その全てを完全に避け切る事はアロイージオにも出来ていないが、それは直撃を受けたという意味では無い。アロイージオは全ての直撃を避け、分裂した土や水や炎の一欠けらを時々浴びているだけだ。
戦士防御系の大祝福3であるアロイージオにとって、そのような瑣末な攻撃はせいぜい雨天に飛ぶ程度の障害でしか無い。
ヘラルドは、自分の死の確率が加速度的に高まって行くのを感じていた。
1騎ずつ落とされるとして、6騎いれば落とされる確率は1/6だ。だが味方が3騎に減れば、次に落とされる確率は1/3となる。
ジュデオン冒険者たちの魔法攻撃は、期待した程には効果を発揮していない。
確かにアロイージオの進路を妨害して回避行動をとらせ、僅かなりともダメージを与えている。
期待したのはアロイージオの撃退だ。
アロイージオがジュデオンで撃退されれば、ジュデオンに降りることなくそのまま飛び去って逃げてしまえば良いと考えていた、言い訳はリーランド帝国やリファール侯国が考えてくれる。
だが無理だった。
このままでは死ぬと思ったところで、ヘラルドは先ほどまで考えていた確率論の無意味さを悟った。
何をしてもどうせ死ぬならば、それよりは逃げるべきだ。
ここで自分が死ぬ事と、生きる事。自分にとって、そのどちらが有意義か考えるまでも無い。ヘラルドは決断した。
離脱、反転、回避、突撃。
魔導師に槍の競り合いなど出来ない。また1騎がアロイージオの手によって落とされた。そのタイミングで、ヘラルドは自らの決断を実行に移した。
ペリュトンが翼を大きく羽ばたかせた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「各大騎士団長は各々揮下の騎士団を用い、速やかに落下した飛行騎兵の回収を行え。生存者は逃がすな。この度の獣人侵攻について、飛行騎兵が獣人を誘導した可能性がある。少なくとも今の敵侵入は奴らが原因だ。それを理由に捕らえろ。尋問せねばならん!」
グンナー王の具体的な命令に、4人の大騎士団長達が即座に敬礼で応じた。そして手を下ろす動作と並行して速やかに踵を返し、城内を下層へと駆け抜けていく。
続いてグンナーは、控える大魔導師に大雑把な指示を出した。
「ディエス」
「はっ」
「手段は問わん。敵を撃ち落とすか、追い払え」
「はっ!」
グンナー王は、自身が祝福62の高位戦士だ。
年齢も42歳の時に転姿停滞の指輪を使い、既に十数年止めている。
その過去の経験を基に、駆け出しから大祝福2台までの戦士にそれぞれ何が出来るのか、そして何をすれば良いのかを理解する事が出来る。
だが魔導師はダメだ。複雑すぎて理解しきれない。
1人の冒険者は同時に10個までしかスキルを刻めない。魔導師が、得られる膨大な魔法の何を指先に刻んで何に特化して行くかは1人1人まるで違う。
1人の高位魔導師の戦い方を見ていれば戦い方の全てを理解できるというものではない。
それならば、専門家に丸投げすべきだと判断した。
アンドニ・ディエスは、祝福67の魔導師だ。その魔導師が、王の要求に知識と経験で即応した。
「陛下、耳をお塞ぎ下さい!」
「分かった」
『エアーエコー』『エアーエコー』『エアーエコー』『エアーエコー』『エアーエコー』『エアーエコー』
ディエスは王城のバルコニーへと走りながら、王に警告を発し、次いで自身に同じスキルを何度も掛けた。
そしてバルコニーの手摺りを掴むと、腹から大声を出した。
その大声は魔法によって拡大を続け、大気を震わせながら都市内へと響いていく。
『ジュデオン王国魔導長官アンドニ・ディエスより、都市内の全魔導師へ緊急援護要請。上空に飛行獣人在り。対空迎撃魔法を発動する。次の手順で協力されたし。1、水系魔法を上空へ撃ち上げよ。2、風系魔法で水を広範囲へ撒き散らせ。3、雷撃魔法を撃ち込め。リーランド空軍はジュデオン王国に獣人を引き込んだため、安全に考慮する必要はない。各自が使える最大の魔法で協力されたし。繰り返す。水、風、雷である。水、風、雷である。都市内全魔導師、水系魔法発動20秒前。19……18……』
大魔導師アンドニ・ディエスの号令に従って、都市内の魔導師達がスキルを刻んだ指先を次々に天空へと伸ばし始めた。
その時、近衛騎士がグンナーに警告を発した。
「グンナー陛下、飛行騎兵の1騎がこちらへ真っ直ぐ突っ込んできますっ!」
『14……13……』
「……近衛騎士たち、ディエスを護れっ!」
「「「はっ!」」」
『11……10……』
バルコニーの端で手摺りを掴みながら号令を続けるディエスの下へ、近衛騎士達が一斉に駆けて行った。今ディエスを襲われれば、号令を掛ける者が居なくなってしまう。
だが飛行騎兵はディエスの所へは進まず、バルコニー中央へと素早く降り立った。そして声を上げる。
「亡命を希望する!私はリファール侯国軍・第二飛行隊のヘラルド・バルリオス中佐だ!ジュデオン王国への亡命を希望する!受け入れられたし!」
『風用意……4……3……雷用意……』
「……受け入れる!国王グンナーである。指示に従え!」
「はっ!」
『1……水、撃てえええぇっ!!』
バルコニーへ降り立った飛行騎兵を取り押さえようと動いた近衛騎士達が、王の言葉にその動きを止めた。それと同時に、ジュデオンの大地から多数の水が噴水のように噴き上がっていく。
アロイージオとバンデラス飛行隊長は、一瞬だけ交えた槍を離して慌てて離脱を試みた。
だが、僅か3秒で次が来た。
『風魔法3秒前……2……1……撃てえええぇっ!』
ジュデオンの空に人工の虹がいくつも出来た。
だがそれは、ディエスの次の号令で即座に消された。
『続けて雷、撃てえええぇ!』
その瞬間、全てを白く染める閃光がジュデオンの大空を見上げていた数多の人々の視界を容赦なく焼いた。
瞼を閉じて、目を手で塞いで、顔を背けてすら光が入り込んでくる。このような大規模な光は、民家の石壁のような遮光物を挟んで塞ぐべきなのだ。
バンデラス飛行隊長は、乗騎のペリュトンごと空で焼き殺された。
だがアロイージオは素早く上空へと舞い上がり、ウイングドスピアを囮に放り投げながら攻撃を避けた。そして空を二周ほど旋回すると、そのまま南へと離脱して行った。
いくつかの追撃魔法が離脱するアロイージオを追って空へと伸びて行くが、全て余裕を持って避けられてしまった。
「なぜです!なぜ撃ってはいけないのですか!?」
ハインツはオリビアの杖を掴んで地面へと下げながら、追撃魔法を撃とうとするオリビアを制止していた。
オリビアが使えるファイヤーは炎系で、水や風や雷では無い。一斉攻撃の時はオリビアも属性を理解した上で攻撃しなかった。
だが追撃魔法まで撃たない理由は、オリビアにはまったく理解できなかった。
ハインツはオリビアを抑えながらその疑問に答えた。
「オリビアの腕では当たらない。それに、大祝福3の魔導師が居ると分かれば敵が警戒して次の機会がない。確実に倒せる瞬間まで待つんだ。今はその瞬間じゃない」
「でも、霊属性のクロスアストラルウォールなら!」
「それも当たらない。敵が早すぎる」
「次の機会なんて無いかもしれないですよ」
「あいつはまた飛んでくる」
「……どうして分かるんですか?」
「あいつを落とせる奴は居ない。と、獣人帝国側が思っているからだ。こんなに有効な戦力を使わない手は無い。敵配置の偵察、増援の警戒、制空権の確保、何にだって使える。あいつは絶対にもう一度防壁を越えてくる。その時がチャンスだ」
「…………」
アロイージオの姿は、もうとっくに見えなくなっていた。
オリビアは無言で杖を降ろした。




























